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サイボーグメロスの伝説

作者: ベネ・水代

 およそ3年前、学生を対象に「数学研究コンクール」なるものが行われました。栄えある最優秀賞は中学生による「メロスの全力を検証してみた」。その結論を簡単にご紹介しましょう。



「メロスはセリヌンティウスを助けるために走ったとされているが、速度を計算してみたら全く走っていない。せいぜい早歩きだった。『走れよメロス』の方がタイトルとして正しいと思う」



 たいていの日本人の思い込みを覆す研究として、ネット上で話題になったのは2014年2月頃のことです。




 ところで中学生の頃、私もメロスの走った速さを計算したことがあるのですが、上記の結論とは正反対の答えを算出しました。



 その時の結論は「メロスは驚異的な速さで走った、むしろ飛んだ」。



 なぜこんな結論になったのでしょうか。答えは小説終盤のあるフレーズに準拠したためです。



「~メロスは走った。沈む夕日の十倍も速く走った。~」



 沈む夕日の10倍ってどのくらいの速さだろう、と疑問に思った中学時代の私は、国語の時間にも関わらずノートを数式で埋め尽くしました。



(1)沈む夕日のスピードを求める



 地球の最大円周(赤道の長さ)は4万キロメートルぴったりですので、24時間で4万キロを一周するスピードが夕日の沈む最大速度ということになります。



 →4万km/24時間=1,666.67km/hr (時速1,667km)




(2)沈む夕日のスピードを10倍する



 →時速16,667km



 これがメロスの最大速度ということになりますが、分かりにくいので音速に換算します。



(3)音速に換算する



 →音速(マッハ1)は秒速340メートル(0.34km)。


 →時速に直すと0.34km × 60秒 × 60分 = 1,224km/hr です。



 →すなわち「沈む夕日の十倍の速さ」は 16,666.67km / 1,224km = マッハ13.62




 かくして驚異の結論、「メロスは最大速度マッハ13.62で駆けた」が求められました。



 ああ、なんということか! メロスは進路上のあらゆる物体を衝撃波で吹き飛ばしつつ、親友と彼を捕らえた王に向かって突進したのです。



 地表付近を高速移動する物体は、自ら発した衝撃波ソニックブームが地面で跳ね返ってきて破壊されてしまいます。これを避けるためにはマッハ1を越える速度を出さなければいけません。沈む夕日に等しい速度では心もとないのです。太宰治はこのことを知っていたに違いありません。



 サイボーグ009も真っ青の加速性能を発揮したメロス。しかし残念なことに、彼の着ていた服はギルモア博士の開発した強化服ではなかったため、大気との摩擦で燃え尽きてしまいました。一人の娘がメロスの裸身に恥じらい、マントを差し出したのは科学的にも正しい展開と言えるでしょう。太宰治の科学的考証はここでもばっちりです。



 ところでメロスの進路上にいたセリヌンティウスと王は、なぜ無事だったのか。おそらくセリヌンティウスも頭脳改造を施されたサイボーグであり、自らを守るためにチート的な超能力バリアを張ったものと推定されます。王が助かったのは偶然彼の背後にいたためでしょう。



 こんな親友なら、万一の時も簡単に殺されるわけがありません。メロスも心穏やかに十里の道を往復したことでしょう。



 二人の超戦士を目の当たりにした王はその能力に感嘆し、自分もその輪に加えてほしいと言いました。後にこの王がサイボーグ・ゼロゼロテンとなり、二人の命を狙うことになるのですが、それは別の物語。

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