プロローグ
「君は学問のすすめを知っているかな?
やっぱり七歳の君は知らないよね。じゃあそれがどういうものか、そこから話していこうか
学問のすすめというのは、福沢諭吉の最も有名な著書だ。それ自体を指すこともあれば、中の一文だけの時もある。一般にはその一文しか知られてはいないね。都合よく。
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり。そしてこれから先を噛み砕いて言うと、なのになぜ世の中に上下関係が生まれるのか、その理由は何なのか。私はその答えを本から見つけた、それは勉学を修めるかどうからしい。と書いてある。僕の誤訳があるかも知れないけれど、そこには目を瞑ってくれ。なにしろ僕は上に立つ人間じゃないからね。
話を戻そう。その学問のすすめから僕は思ったんだ。勉学は昨今の少年少女には退屈な物でしかない、ならその苦行に耐える努力しなければいけない。勉学の根幹は努力なんだ。ならその努力が人間の上下を決めるんだとね。
だから君も努力をしてくれ。そうすればいつかきっと、君をいじめた奴等を見返すことができる。僕はそう信じてるよ」
この先生はとても夢見がちで正義感なんだと思った。
なんていったって、湿った袖を擦り付けて頬を真っ赤にした小学一年生の少年に、自分の恥ずかしい持論を悪びれもせずに希望に充ち溢れた顔で言うその人は、とても主人公で、僕のヒーローで幼い自分にはとても格好いいものに写ったのだから。