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銀髪の友と風に吹かれて

◇◆◇◆◇◆◇◆


 そよ風。

 銀髪の暗殺者と肩を並べて風に吹かれている。

「俺さ、『ドラサガ』引退しようと思うんだ」

 なんだ、唐突だな。

「あれ、意外と驚かないんだな」

 別に、驚かないさ。

 誰にだって、別れはある。

「なんていうか、達観してるよな、ノブナガは。本当に幾つなんだよって感じ」

 なんだよ、そういうシェバこそ、もう、いいおっさんだろうが。

「そうだなー。びっくりだ。大人になったらもっと格好良くなるもんだと思ってたけど」

 あんまり変わらないよな。実際。

「そうそう。変わらない。なんだか不思議な感じだよな」

 結婚するのか?

「お」

 顔に出たな?

「ふうー。まぁ、そういうこと」

 いろいろ、面倒くさそうだな。

「そう! 驚いたよ! 結婚がこんなに面倒くさいことだなんて!」

 だろうなぁ。

「でも、楽しいよ。いろいろケンカもするけどさ」

 そうか。うらやましいな。

 相手は、小龍か?

「は」

 また顔に出たし。

「かなわないな、ノブナガには」

 いやそれはみんな分かってると思うぞ。ことさら話題にしないだけで。

「そうなのか」

 そりゃ、そうだよ。小龍が女プリーストに作り直してきた時、みんな「ああ」って思ったもん。

「うへ」

 まったく、鈍感というか、何というか。

 ま、いいさ。楽しくやれよ。

「ありがとう、な」

 なんだよ急に。

「今から引退するのに変な話かもしれないけどさ、俺がこんなに長くこのゲームを遊べたのは、お前のおかげだと思ってる」

 ははは。そんな、大袈裟な。

「みんな、そう思ってる。どんな時も、お前が俺たちを導いてくれた気がするよ」

 お人好しなだけだよ。

「いや、俺たちにとっちゃ、勇者さ」

 勇者、ね。

 月並みだけど、また遊びに来いよ『ドラサガ』に。

 どうせ人知れずギルド解体とかするんだろ。

「あれ、もしかして小龍に何か聞いてた?」

 いや聞いてない。シェバのことだから、何となくそうしそうだなって思った。

「そうか。ノブナガってなんか他人の気がしないよな」

 そうだな、俺もだよ。

 だけど、淋しくなるな。

「そうなのか?」

 俺を何だと思ってるんだよ。人が居なくなれば、淋しいものだろう。

「そか。なんだか嬉しいような、申し訳ないような」

 ここはMMORPG『ドラゴンサーガ』の世界。

 人はここで出会ったり、別れたり。

 楽しんだり、笑いあったり、いがみあったり、競い合ったり。

 山を越え、砂漠を越え、廃墟を探索し、巨大な敵に立ち向かったり。

 愛し合ったり。

 だけど、すべてはいつか消えてしまう。

 人にはいつしか、必ず別れが訪れる。

 だけど、希望はある。

 ここはゲームの世界。

 もしかしたら、この世界には希望しかないのかもしれない。

 物じゃなくて、あるのはただ希望だけ。



◇◆◇◆◇◆◇◆

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