ネトゲで×3
……宿屋での昼下がり。イングリッドさんがのたまう。
「しかし、十年前の自分を更正したいって言いますけど、そんなことしても何の得にもなりませんよ? どうせなら共闘でもすればいいじゃないですか」
……天使よ、これから十年後の俺が合うハメになる黒歴史をお前に教えてやろう。
■黒歴史その一
ネトゲでバツ3。うち、ふたつはネカマ。
「おおお……」
どうだ、香ばしいだろう。
「……ネカマと結婚したのって一回だけじゃなかったんですね……」
結婚もなにも、、生まれて初めて付き合った人がネカマだった。
「おおおお(涙)」
さらに、生まれて二番目に付き合った人もネカマだった。
「おおおおおおおおおおおおおおお(涙)」
ふふ、天使じきじきの慈悲の涙とは、恐れ入ります。
「なんて言うか恋は病とよく言いますけど、これもひとつの現代病みたいなモンなんでしょうか」
まぁモニタ越しのキャラはみんな可愛いからな。
その見た目で明るく楽しく励ましてくれる女子がいたら女子耐性のない男の子なんていちころなのじゃよ。
「あ、でも一人はネカマじゃないんですね。それならある意味よかったじゃないですか」
……た。
「た?」
……たぶん。
「え、まさかもう一人は会ったことないとか……」
恥ずかしながら、ない。
「(涙)」
……ふふ。
「ていうか、そもそも三人目もネカマなんじゃないですか!? いよっ、ネカマキラー!!」
てんきゅっ!(涙)
あ、でも一つだけ訂正すべき点がある。
「何でしょうか」
正確には三人目の子とは離婚してないから、バツ2だな。
「……ええとつまりあなたは、未亡人なう? それとも寡夫?」
よく分からんが、こういうときの結婚ってどう処理されるんだろ。
「確か失踪して四年とかで死別と同じ扱いになるとかなんとか。まぁゲームの中の結婚ですけど」
でもここが今の俺にとっちゃリアルだしな……。
――……。
「ノブナガさん」
はい。
「今、もしこの世界で結婚した相手と出会ったら、って思ったでしょう」
うっ。
まぁ図星です。
でもたぶんまだ会えないよ。彼女まだ小学生なうだから。
「は?」
今、十年前なう、だから。
「も、もしかしてその三番目のお嫁さんって……」
うむ。
「じぇじぇじぇ、JC!?」
……イングリッドさん。
「あい」
今の、「じぇじぇじぇ」って言いたいだけだろ。
「えへへ」