表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/75

ひとみんの初恋



 うわあ。

 すごい、すごい!

 これ、ほかの動いてる人も、みんなつながってるんだよね?

 〈騎士〉さんも、〈魔導士〉さんも、〈僧侶〉さんも!

 すごい。パソコンって、すごい!

 あはは、でもすぐ死んじゃう!

 かわいいけど、〈ポコリン〉ってつよいなぁ。

 どうしよう。

 あ。だれか来た。

 ちょうどいいや。

 あの、そこの〈あんさつしゃ〉さん。

「うん? 僕の事?」

 そうです、そうです。すみませんが、生き返らせてくれませんか?

「えっ……。でも僕、〈暗殺者〉だよ? 〈リザ葉〉(リザレクションの枝葉)使っちゃうけど……」

 あ、それでだいじょうぶです。

「あ、そうなの。それじゃ生き返らせるね」

 お、おおー。

 ありがとうございます。おかげで助かりました。

「はぁ。で、〈リザ葉〉は?」

 え? 持ってませんけど何か。

「……あ、ああ、そう。それじゃ、気をつけてね」

 あ、まって下さい。

「どうしたの?」

 壁してください。

「え」

 だめですか。

「あ、いや、別にいいけど。どうせ暇だし」

 やったー!

 あ。

「? どうしたの?」

 ごはんだって。

「あ、そう」

 それじゃ、またあした、お願いします!

「え、は……、はい?」

 それでは、ノシ。




「という事があってだな」

 ひとみんは似合わない〈うさ耳〉を付けたまま恥ずかしそうに話した。

 いや……その話、何かおかしくないか……。それっていい話なのか……?

「ノブナガ殿の言いたい事は分かる。昔のオレって香ばしいよな。だけど、しょうがないだろ」

 何がだよ。

「オレ、当時小6だったんだから」

 ぶっ。リア小かよ……。

「かっこよかったぞー、シェバさんは。オレのとんでもないワガママに付き合ってくれて、結局オレがソロプレイに目覚めるまでずーっとレベル上げ、手伝ってくれたんだ。シェバさんに比べたら、ほかの〈暗殺者〉なんてみーんな、いもっこだな!」

 あ、それで〈暗殺者〉嫌いなワケね。

「でもな、当時のシェバさんは、オレの事、ネカマだと思ってたんだよ。なぜなら、オレが自分でそう言っちゃったからな」

 は、はああああああああ?

 なっ、何でだよ!

「なんだよ急に、血相変えて」

 あ、イヤすまん。でも何で、自分の事、男だなんて?

「勝てないと思ったんだよ」

 何が。

「何しろ「あの」シェバさんだからな、群がってくる女なんて、星の数ほどいたんだ」

 ……ううむ、まったくそんな記憶は無いのだが……。

「だから、勝てないと思ったんだよ。何しろ自分は小学生だからな。大人の女の人達を相手にして独り占めするなんて、できやしないと思ったのさ。だから、オレは自分を男だと偽った。男だって言っておけば、ほかの女たちに嫉妬される事も無いと思ったし、そもそも男同士なら、フられる事も無いだろ。当時のオレは、ずっと一緒にいられればそれでいいと思ってたからな。いや、当時のオレってば、そりゃあかいがいしいものだったぞ」

「まず、一カ月かけてシェバさんがログインしてくる場所セルを把握して、同じセルで待つわけだ。普通同じセルにキャラクターは入り込めないのは知っての通りだが、ログイン時だけは重なる事が出来るんだ、それで、「あははーシェバさんと合体した~」とか言ってみたり」

 今日は朝から思わぬ合体がありまして……、みたいな感じか。

「ん? 何だそれ」

 いや何でもない。聞こう。

「料理システムって出来るじゃん? そしたら毎晩シェバさんに貢いだりしてな。「今晩のおかずは〈ポコリンのローストビーフ〉ですよ~」なんつったりしてな」

 いやポコリンが素材なら〈ローストビーフ〉おかしいだろ。

「うむ。当時のシェバさんにも同じ事言われたな」

 ……ギクリ。(そんなこと言ったっけ?)

「ほかにも、かわいらしい頭装備見つけてはシェバさんに感想聞いたりな。これどうですか?って」

 どうもこうも、ネカマ宣言してたんじゃないのかよ。

「つまり〈黙ってオレにかわいって言ってくれ〉って事だな」

 おおお、痛々しい……。


「ふふ……、やり方はどうあれ、頑張ったぜぇ、当時のオレ。シェバさんが好きだろうと思ってわざわざファーストエヴァンダム全話網羅して話し合わせたりしてな」

「どうだ。我ながらかわいらしいモンだろう?」

 ……。

「でも、結局シェバさんに彼女ができちゃってな。彼女と一緒にいるシェバさんを見るのが耐えられなくなって、何も言わず彼の元から逃げ出したって顛末なのさ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ