死後のせかい
「四度目のネカマ結婚おめでとーうございまーすっ! いよ、フォータイムスチャンピオン!!」
やめろ、天使イングリッド。
「ワンターイム……、トゥーターイム、スリーターイムス……、フォーターイムスチャンピオーン」
そして天使が誰かのものまねをしている。
「いやーしかし、まさか小龍がネナベとはねぇ。どうりであきらめないと思ったわ。はっはっは。そういえば小龍の一人称って「わたし」だったしなぁ。ずっとショタキャラ演じてるのかと思ってたんだが」ひとみんが紅茶片手に、もの言う。
「ううむ、ネット恋愛はむずかしいものですね。ボクも神の御使いとして、興味しんしんです」
「いやー、まったく、まったく」
ここは俺の根城、例の宿屋である。
いつのまにか天使イングリッドさん(等身大)とひとみんがうちとけて、ここちよいアフタヌーンティーとしゃれ込んでいる。
……いや、ガールズトークならよそでやってくれないか。
「いや、天使は男でも女でも無いですしおすし」
「オレも、ネカマフレンド(嘘)だし」
「いや、気が合いますね」
「まったく、まったく」
……ううむ、とりつくシマがないぞ。
「そうそう、ヒトミ様について、興味深いことがあるんですけど、聞いていいですか?」
「ん? なに?」
「ヒトミ様って、死んだと思ったらこの世界に墜落したんですよね」
「うん、まぁね」
「つまり、この世界に転生した、と」
「まぁ、そうと言えるかも」
「むむ、これは興味深いことですぞ、勇者様」
何が。
「言ったじゃないですか。輪廻の輪の話」
ああっーと、魔族に殺された人間は、天国にも地獄にも行けず、苦しみ続けるってヤツだっけ。




