イングリッドさんのひみつ
首都、フレデリカ城下にある宿屋が俺の拠り所。
窓から見下ろせば、フレデリカの大通り。MMO黎明期の熱気に湧くプレイヤー達の露店であふれ、賑わいを見せている。
俺は、どうやら勇者らしい。だけど、一日の大半はこうして宿屋で過ごすことが多くなっていた。
未来のスキルが使え、しかも廃人装備まで所有しているチートな俺の存在が運営に見つかったら……。
もし垢バンされれば一巻の終わりだろうし。
あ、そういえばイングリッドさん。
「なんでしょう?」
イングリッドさんてさ、何が出来るの?
「あれ、言ってませんでしたっけ」
いや、全然聞いてないけど。
「ボクは勇者の使いとして、力が及ぶものなら貴男の言う事なら何でも聞きますよ」
え。
まじか。
「まじまじ」
じゃ、今までどうして何もしてくれなかったんだよ……。
「いやそれは、言われなかったから……」
言われないと動かない新人さんですかそれは……。
「それじゃ、試しに何か命令してみて下さい」
ぬ。
ふむ、うーむ。
……だったらお金稼いできて。ルーチンワークで稼げるいい狩り場紹介するから!
「あ、それは出来ません。天使はアルバイト禁止なので」
なんだよそれ……。
「公務員みたいなものだと思ってもらえれば」
一体どういうことなんだよ……。
「んー、それじゃ、代わりに、受肉して脱ぎます」(ぴろっ)
おっ、おいいいいい、やめろっ!




