結婚!ハッピーエンド!?
「良かったじゃないですか。シェバがゲームをやめられて」
イングリッドさんが俺に語りかける。
……。
「なんて、そんなことないですよね……」
最初は、シェバにこのゲームをやめさあせようと思っていた俺。
だけど、シェバは俺が渡した〈錐錘〉が問題になって、この世界から存在を抹消された。
そして、今回の一件で一番ショックを受けているのがひとみんである。
もういい加減、気を取り直せよ、ひとみん。
「……カインはな」ひとみんが口を開く。
黒騎士のことだ。
「カインはな、未来の『ドラサガ』世界が終わったから、この世界に来たんだよな」
そうだな。そして俺は天使に騙されて、だ。
「オレは……、死んだら魂がこの世界に拾われた感じだ」
え、ひとみんってもしかして死んでるの?
「多分。病気でさ、ああ、死んだなー、って思ったら、この世界に来てた」
ふうん……。
「だから、オレにとって生き死には結構どうでもいいことなんだ。もう死んでるし」
そんなもんなんだ。
「うん、だけどね」
だけど、何だよ。
「せめて、恋をしたいって思ってるんだよね」
そか。
ひとみんが、オレを見つめている。
さて、と。
「あれ?」ひとみんが、意外そうな目で立ち上がった俺を見る。
あれって、何だよ。
「あ、いや、何でもない」
それじゃ、俺は宿屋で休むわ。
「おう。今度泊まりに行くわ」
はは。
了解。
んじゃね。
「すいませんー」
お、遠くで初心者が何か言ってるぞ。
「ちょっとお願いしたい事がー」
あらまあ、壁かな。
ひとみんは……、やらないか。
「あ、いや、オレやるよ、壁」
ううっそ。どういう風の吹き回し?
「いいだろ、たまには。 オレって実はいい人なんだよ」
まぁ、わからんでもないけど。
「なんだよ、そのリアクションは……」
「もしもーし?」
初心者キャラが近くまでやってきた。そして俺のことはスルーして、騎士であるひとみんにまっしぐらだ。まったく、もう。
「すみませんー、ヒトミさんですよね。お願いしたい事があるんですけど」
「? いやそうだけど。壁?」
「違いますー
「あ、もしかして入団希望とか」
「違いますー。僕、こう見えてもギルドマスターなんですよ。ほら、この髪型に見覚えありませんか?」
髪型……? 無造作に見えて品のいい、凛とした銀色の短髪。
あー確かに見覚えある。シェバみたいだわ。
「んー、シェバ様みたいだね」
「様はもうやめてください」
「は?」
「そして、もしかして、って言ってみて下さい」
「え? もしかして」
「そう、ボクはシェバです。本物です」
おだやかな風に揺れる銀髪。正義をたずさえた無垢な瞳。
若き狼……。
……。
おおおおおおおおお!!!?
シェバが、この世界に帰ってきた……?
早! でも良かった!!
「マジか……、マジでシェバなのか……?」とひとみん。
「ふふ。ボクだけに教えてくれたヒトミさんの秘密、ボク知ってます。ヒトミさんって、一度死んでるんですよね……?」
「お、おう。確かに、本物のようだ……」なぜか、たじろぐひとみん。
ふわああー。
で、お願いって何なの? ギルド一回解体してくれとか?
「いや、ひとみさんにです」
あ、そうだ。
「ひとみさん、俺と結婚してもらえませんか?」
◇
えええええええええええ!!?
帰ってきた早々、シェバがひとみんに求婚した!?
おおお、やったじゃないか、ひとみん!
いやー、二次元人と三次元人の恋なんて、どうなるか分かんないけど、ワクワクドキドキするね!
良かったね、ひとみん!
シェバがいい奴だってのは、俺が保証するから!(だって俺だし)
結婚システム実装はもうちょっと先だけど、そんなの関係ナッシング!!
事実婚は未来ヨーロッパで大流行するんだぜ!?
「え……、あ……」
ひとみんは真っ赤だ。
「……駄目ですか?」
シェバは大まじめだ。
「お……、オレの……、何処が……良くて?」
「全部です。強いところも、弱いところも」
ひとみんの強いところは分かるけど、弱いところって何だ……?
「お……、オレの……、弱いところ……?」
ひとみんの瞳から、涙がこぼれる。
な、なんだこれ。
なんか異常に効いてるぞ……?
「弱いところは、僕が、護ります。だから、結婚して下さい」
「あっ、ありがとう、ありがとう……」
おお。
ようし、そうときまれば早速教会だ!
ぱんぱかぱーん、ぱんぱかぱーん、ってなモンだな。
「だけど……」
ん?
「駄目なんだ」
え。
「どうしてですか……? あ、いや、いきなり結婚ってのは難しいとか」(シェバ)
「いや、そうじゃないんだ。オレもできれば……、シェバと……結婚したい……」(ひとみん)
やっぱ両想いなんじゃん!!
「だったら……、なぜ……」(シェバ)
「それは……」(ひとみん)
「オレって実は……、ネカマなんだ」
(第一部、完!)




