シェバ 死す
(後日談)
暗黒城から湧き出てくる正体不明の〈BOT〉たちは、その日を境に正体を消した。冒険者たちの間ではさまざまな憶測が飛び交っていたが、やがてそのウワサも忘れ去られていった。
しかし、フレデリカ城下を蹂躙した〈黒騎士〉については、『ドラゴンサーガ』始まって以来の大事件として人々の心に書き留められることになった。
「シェバ様、一緒に狩りでも行きましょうよう……?」
「いや、遠慮しとくよ。〈騎士〉と〈暗殺者〉じゃ一緒に狩る意味ないでしょ? それにヒトミさんと僕とじゃ、レベルが違いすぎて狩り場も合わない
し……」
すでに『ドラサガ』内の最大勢力ギルド長として、知る人ぞ知る存在となっているひとみんだが、シェバを見つけては、何かとお誘いをかけてくる。ひとみんの気持ちを知ってか知らずか、シェバはまじめ一辺倒のそ知らぬそぶり。
いや……、シェバのことだから、むしろ絶対にひとみんの気持ちとか、気づいてないんだろうな……。俺にはわかる、分かるぞ(涙)。
ひとみんが〈僧侶〉でも作れれば大手をふってシェバを誘えるのだろうが、キャラ変えできない俺たちにとっては叶わぬ望み。
……まぁ、シェバはひとみんがたとえ〈僧侶〉になって誘ってきても、
「〈暗殺者〉じゃ効率でないから、ほかの人をあたったほうがいいよ」
とか諭しそうだけど。というか絶対言うと思います。
〈黒騎士〉は、お約束どおりシェバのギルドに入っている。
今日は、運営からその処遇が決まる日らしい。
あれだけの騒ぎを起こしたのだ。〈BOT〉の件もある。
しかし、〈黒騎士〉はサバサバとしたものである。
何せ彼は、死ぬことが目的なのだ。
……なぁシェバ、俺たちが、未来から来たって言ったら、信じるか?
「……」
10年後にはさ、マイルドセブンが無くなってるんだぜ。
「まじすか」
mjmj。あと、「いいとも」も終わるよ。
「いや、それはウソでしょw」
シェバのギルドの溜まり場は、フレデリカ王国図書館の一角。今回の騒動の中心である、〈黒騎士〉、シェバ、俺、そしてなぜかひとみんが集まっていた。俺の肩には、イングリッドさんが乗っかっている。
そこへ、一目見ただけでそれと分かる、羽の生えたユニークキャラクター、……ゲームマスターがやってきた。
ゲームマスターは運営のなりかわり。この世界でさまざまな強権を執行できる、いわば神のような存在である。
そのゲームマスターが口を開く。
【今回の一連の騒動について、処遇を通達します】
【まず〈黒騎士〉ことカイン】
【あなたは】
【無抵抗のプレイヤーキャラクター
【に対して】
【大規模な攻撃を仕掛けたノーマナー行為について】
【10日間のアカウント停止処分とします】
……お。
ひとみんも、心なしか安堵した表情をしている。
カインの方も、死ねなくて残念かと思いきや、案外ほっとしたような感じ。いざ自分が死ぬと……、いや殺されるとなったら、不安にさいなまれていたのかもしれない。
【そして、シェバ】
……え?
俺たちの戸惑いなどおかまいもせずに、ゲームマスターは続ける。
【シェバは】
【カインとの戦闘において】
【チート行為が】
【確認されました】
【これは重大な違反行為です】
【よって】
【シェバには】
【アカウントバンの措置をとらせていただきます】




