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暗殺者は振り向かない



『は……?』

「は……?」

 ……は?

 あ、まぁ確かに〈黒騎士〉のしたことは迷惑行為だろうけど……。

 女騎士さんも、率直すぎて意外というか、むしろ場違いな気さえするこのシェバの言葉に、あっ


けにちられている。


『ま、まぁそう言われれば迷惑行為だろうが……』


 思わずという感じで、〈黒騎士〉が返事をしてしまう。

「……そもそもあなたは、なぜこんな事をするんですか」

『死ぬ為だ』

「?」

 だったら、一人で死ねよ、と思うな普通は。

『……お前には分からんよ』

「死ぬのは駄目です!」

『お前には関係ない』

「関係あります!」

『何がだ』

「あなたも〈ドラサガ〉のプレイヤーでしょう!!」


 場が静まる。


 ……。


 は。


 ははっ……。


「俺が勝ったら、俺のギルドに入ってもらいます! そして、このゲームもっと楽しんでもらうん


ですから!」


 うはw


『ハハハハハハ!!』

『悪くない、悪くないなお前!! 良かろう、こういうのは嫌いじゃないぞ!! だがな、お前には万


に一つの勝ち目もない。クリティカル攻撃で防御力を無視するとはいえ、俺は多少の攻撃などモノ


ともせんよ!!!』


 『〈瞬・歩〉』!!

 〈黒騎士〉が未来のスキルで一気に間をつめる。

「〈バックステプ〉」!!

 交錯。

 シェバは、この時代のスキルで交錯する。


 ……俺の脳裏に、かつての十年間がよみがえる。

 仲間たちとの思い出。

 そうだ。俺もこうして、熱く語らったんだ……。


 好きだとか、嫌いだとか。

 もうやめるとか、やめるなよ、とか。

 強いとか、弱いとか。

 効率がいいとか、悪いとか。


 くっだらねー、青春を。


 そうだな、シェバ。この世界は、誰がなんと言おうと、俺たちにとっていい世界なんだ。

 


 ……だったら、見せてくれ、お前の理想を!!

 ヒトミに言われ、宿屋システムで手に入れた商人専用の〈宝庫〉。

 その中には、かつて未来で使っていた俺の武具たちが、ひしめいている。


〈エルフの弓〉……使用者を透明にする隠れ里の弓。

〈レーヴァテイン〉……神属性を切り裂く伝説殺しの魔拳。

〈ミョルニル〉……山脈の胎動の中で産まれた地震鎚。

〈人喰い村正〉……対人性能に特化したいわくつきの妖刀。

〈円月輪〉……放たれたが最後、相手を中心に螺旋を描き切り刻む巨大チャクラム。

〈ト-ルハンマー〉……雷神の化身。


 そうだシェバ……、これを使え!!

 俺は、一本の短剣を宙に投げる。

 武器の名前は、


〈錐錘〉。


「!?」

 まるで熟練のコンビのように、その短剣を受け取るシェバ。



『ナ・ニ?』


〈錐錘〉。

 相手のDEFが高ければ高いほどダメージを与える、神ランク武器の一つ。

 反魔法の力で増強されたこの短剣は、相手の硬度を攻撃力に転換してしまう。俺の世界(・・・


・)では二年で使用制限がされた禁断の武器だ。

 防御力に特化した高VIT型であろう〈黒騎士〉には、この攻撃をかわす術は無い。

 突いた。

『グゥ……』

〈黒騎士〉の胴体右半分に、穴が穿たれる。

 返す刀の反撃は、閃光の如き手さばきで〈幸運の短刀〉に持ち替えて、〈強運回避〉でやり過ご


す。

『ナメルナヨ……、〈暗殺者〉ゴトキガ……』

 構わず、〈黒騎士〉が連撃する。シェバが〈幸運の短刀〉から持ち替える暇を与えなければ、〈


錐錘〉による攻撃を受ける事は無い。


 一合。

 二合。

 三合。。

 四合。。。。。

 五合。。。。。。。


 土煙が上がる。〈黒騎士〉は、間合い取る。

 そして土煙が収まる。

 そこにシェバは居なかった。


『!?』


 狼狽する〈黒騎士〉。

 もしかして、彼は去ったのか。

 いや。

 彼は言った。

「僕が勝ったら、自分のギルドに入れ」と。

 閃光のシェバは振り向かない。

 居るのだ、彼は。

 そうか、そういうことか。

〈影隠れ〉

 対象の影に隠れて身を隠すという、〈暗殺者〉のスキル。

 かれは、〈黒騎士〉のかげのなかにいる。

 そして、影より跳躍し、シェバは〈黒騎士〉を突き刺したまま、天高く上昇する。

 そうして、〈黒騎士〉はDEADした。


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