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ハンス=シュミットは行く。  作者: 蒼弍斎
第一章 始まり。森の民。
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1章 00話 プロローグ1 目覚め。

蒼弍斎です。

深く考えずに、気軽に暇をつぶして頂ければ幸いです。

極力筆を休めないように頑張りますので、

ご支援、宜しく御願いします。


誤字脱字、御報告、随時お待ちしております。


 暗い。何も見えない。




 リーン リーン


 鈴の音が聞こえる。




 リーン リーン

 ○#%¥”$


 鈴の音は止まない。

 それに消されるような、声が聞こえる。




 リーン リーン

 ア#%¥”$


 女の子の声か。




 リーン リーン

 アル%¥”$


 ん?何だ?何を言っている。




 リーン リーン

 アルフ¥”$


 分からない。分からないが、懐かしいような気がする。




 ん……。


 滴が頬を濡らした。

 浮上する意識。


「……んん。」


 冷たくそして硬い背中の感触。

 まだ力の入らない体をなんとか動かして、反転を試みる。


「くっ」


 しかし、どうにも言う事を聞いてくれない体。

 まるで自分の物じゃない(・・・・・・・・)かのような感覚。

 言い知れぬ不安が脳裏を横ぎる。

 手足は……有る。

 意識は……覚醒しつつある。

 俺の名前は……



「俺の名前は……。」



 俺は、誰だ?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 苔むした祭壇で目を覚ました。

 なんとか上体を起こし、当たりを観察する。


 不快ではない空気が漂っているが、そこは決して美しい祭壇ではなかった。

 否、かつては美しい祭壇であったのであろう。

 しかし、今この時にあって、柱は折れ、壁は崩れ、天井は洞窟の岩肌そのものである。

 怪しく青色に光る水晶が、最低限の光源を確保してくれている為、周りの状況を伺い知る事が出来た。


「ここは、どこだ?」


 自分の名すら思い出せないのに、ここが何処であるかなど、知る由もない。

 服装は極めて簡素な黒いズボンと、黒い貫頭衣。

 シルバーの四角い装飾が施されたベルトが、貫頭衣を腰のあたりで留めている。

 頭にも黒い布を巻いているようだが、はっきりとは分からない。


 体は十分な機能を取り戻していないようで、立ち上がる事は未だ出来ないでいる。

 ふと、自分の座っている場所を見下ろす。


 丸や何かの図形が、自分を中心に広がっている。

 時に離れ、時に交差し、複雑な線が円の中、所狭しと埋め尽くされている。

 意味のありそうな図形や、計算しつくされたような線。

 それを見て美しいと感じた。それと当時に、言い知れない既視感が芽生える。


「……くっ」


 空気中の水分は十分であるが、どのくらいあそこで横になっていたのか分からない。喉が渇きを覚えている。

 どこか、水を探さなければ。

 しばらく、座っていた事で、体の自由は戻りつつある。

 ようやく、俺は自分の足で立ち上がり、今いる場所から動く事が出来る。

 そして、僅かばかりの高揚感が心の片隅に灯った気がしたが、体が求める乾きに忘れてしまうのだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 歩き出した俺は、この洞窟の中にあるであろう祭壇を出た。

 祭壇の入り口もすでに、瓦礫と言って差し支えない程度には崩れてしまっている。

 祭壇を出ても、しばらくは洞くつであるようだ。

 これだけの湿った空気だ。どこかに、水たまりくらいあっても良いだろう。

 天上から垂れ下がるように、滑らかな石が幾重にも続いている。


 鍾乳石…だったか、水と関係したはずだ。

 未だ、自分の名すら思い出せない俺は、何故か、そんな事はぼんやりと思い出す事が出来た。


 祭壇の中にあった光る水晶は、離れる毎に少なく、そして小さくなっていく。

 これが無ければ、光を確保出来ない。

 ためしに、小さいものを袂から折ってみよう。これで光が消えなければ、光源は確保出来るということだ。


 バキッ


 硬いと思われた水晶だが、以外と簡単に折る事が出来た。

 しかも、依然として淡く光り続けている。温度は感じない。むしろ、少しひんやりとしている。

 光を確保出来た事に、ほっと胸をなでおろし、歩を進める。




 どれくらい歩いただろうか。

 結構な距離を進んだところに、流れる水を聞いた。


「っ!」


 調子を取り戻した体も、歩いた疲れか、足は重い。

 しかし、そんな事は気に止めず、走り出す。


「あった!」


 俺が寝転がっても五人は並べる程度の広さを持った池がそこにはあった。


 ザバッ


 深さすらも確かめず、水の中に突っ込む。

 そして、顔を勢い良く漬け


 ごくっごくっごくっ


「ぶはぁあああ」


 乾いた体に浸透していく水を感じる。

 歩き、そして最後は走った体の火照りも、この水が熱を冷ましてくれて心地よい。


 生き返る。


 まさに、そんな気分だ。




 元来、水がある場所には少なからず生き物の営みがある。

 こんな光も殆どない場所でも、それは変わりない。


 大きな影が、後ろを横ぎった事に気づかず、俺はこのひと時の安らぎに身を委ねてしまっていた。

2014/06/02

修正:主人公の見た目に対する言及が無いのと、物語の都合上、初期の服装に加筆。


 ※頭にも黒い布を巻いているようだが、はっきりとは分からない。

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