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本音

 保健室に沈黙が流れる。全員が凍り付いたように動かない。

 ルリは目をぱちくりし、床を無言で転げ回っている勇気に目を落とした。

 その瞬間、ルリの中で勇気のイメージが崩れていく音が聞こえた。憧れの王子様が地面を転がり、服も髪もグチャグチャにしている図は、乙女の妄想を壊すには充分な破壊力をしていた。

 百年の恋もさめる。それがたった一ヶ月程度なら、なおさら覚める。冷める。


 どこか絶望した表情で固まったルリに声をかけたのは、隣で水筒を抱えていたさっちゃんだった。

「お、おい。大丈夫・・・じゃあ無さそうだな・・・」

 自分の行動(落とし穴、熱した食塩ぶっかけ)で彼女が傷付いたことに少し責任を感じたのだろうか、さっちゃんが心配そうに訪ねた。

 その声でハッとしたらしいルリは慌てて、勇気の所に駆け寄る。

「ゆ、勇気君、大丈夫ぅ?

 アンタたち、勇気君に酷いことすると、ゆ、許さないんだからぁ・・・」

 ルリの声が少しずつ小さくなっていく。

 僕達は顔を見合わせ、もう一度ルリを見た。

 ルリはワナワナと、拳を握りしめていた。そして叫ぶ。

「もう、やめてよ!

 邪魔しないでよぉ!」

 僕達を睨み付けた彼女の顔は、今にも泣きそうだった。僕達はルリのその表情に頭を混乱させる。

「俺達はこの物語が終わると居なくなってしまうんだよ。

 邪魔しないと、死んじゃうんだよ!」

「そんなの分かってるわよ!」

 さっちゃんの言葉に、彼女は絶叫に近い返答をした。

 目からは既に涙が溢れていた。

「知ってる!分かってる!


 でも、私だってさぁ、こんなよくあるラブコメの主人公になんか、なりたくなかったのよっ・・・!


 こんな奴と恋愛するよりも、私も脇役みたいにお友達と遊びたかったわよ!

 でも、完璧じゃないと駄目だもん・・・!遊ぶ時間は勉強で無くなるしぃ、男の子の近くに居ないといけないし・・・」

 彼女はそう小さく呟く。そして涙を拭うと、僕達を睨んだ。

「でもね、私はこの物語を終わらせたら、自由になれるの。

 ねぇ、アンタ達。」

 ルリは言う。僕達に、言う。

「アンタ達は楽しかったでしょ?青春。

 だからそろそろ、私に代わってよ」

 このままじゃ青春が終わっちゃうよ、そう彼女は告げた。


 イケメンに近付いたのも、全部自由のためだったのか、と僕は少し納得した。

 しかしそれだけで僕達の人生を終わらせてもいいかと訪ねればそうではないだろう。自己中心的な考えは元からだったようだが。

 どうしたらいいかと困った僕が、ふとモブ子を見る。彼女はまっすぐに、ルリを見ていた。

 そして、モブ子はゆっくりと唇を動かす。

「3日。3日頂戴。」

「え?」

 ルリはモブ子に顔を向ける。モブ子はもう一度繰り返した。

「3日頂戴。

 

 私が、私がなんとかしてみせるから!」

 彼女はそれだけ告げると、僕達の手をひいて、保健室を出る。

 きっと彼女ならなんとかしてくれるはずだ。僕はそう信じると、モブ子に続くように足を動かした。

 タイトルを変更します。

 友達の助言を生かし、【脇役延命のススメ】とさせていただきます。

 これからもよろしくお願いします!

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