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保健室

 その10分後、やっとモブ子が昼食を食べ終えた。彼女は苦しそうに腹を押さえているが知ったことではない。自業自得だよこの野郎。

 さっちゃんは机を自分の位置に戻すと、

「ちょっと保健室、見に行かねぇ?」

そう、僕達に訪ねた。

 頭を強打したルリの容態、そしてネバネバになっているはずの勇気の観察に行くためか?と、僕は少し考えて、「行く!」と返事した。

 にぃちゃん、それによっちも「行く」と首を縦に振り、モブ子は「私も、私も行く!」と元気に手を挙げていた。

「じゃあ行こう。」

 さっちゃんは置いてあった水筒を肩にかけると、教室のドアを乱暴に開けた。


 保健室は殺風景で、消毒の匂いがしていた。部屋に置かれたベッドには女の子が寝かされていた。

 ルリだ。

 どうやらまだ気絶しているらしく、ピクリとも動かない。

 彼女の顔に怪我が無い事を確認すると、僕は部屋の奥の方に目を向けた。


 白い塊があった。

 というか勇気だった。

 勇気は「フシャーッ!」という唸り声をあげながら、必死に体を捻り、ネバネバを取ろうとしている。その姿はまるで大きなナメクジのようで、少し鳥肌がたつのを感じた。

 この物語のヒーロー、気持ち悪っ。


 勇気は、そんな失礼なことを考えていた僕の存在を確認すると、大きな声で怒鳴ってきた。

「お前ら!モブのくせして俺を穴に落としたあげく、ベッタベタにしやがったな!

 こんなことして許されると思ってんのか!」

 女の子が寝ているのにも関わらず、自分の為に叫ぶ姿はまるで子供である。この物語は人気が出ないだろうな、と少し感じた。

 

「はやくこのネバネバをどうにかしろ!

 おい!聞いてるのか!」

 勇気は叫ぶ。モブ子は、「うるさい」と言いながら上履きを投げつけた。

 当然、ネバネバが上履きにも付着する。モブ子は嫌そうな顔をして、さっちゃんを見上げた。

「さっちゃん、上履きのネバネバを取るにはどうしたらいい?」

 さっちゃんは抱えていた水筒を開けると、中の液体を上履きにかけた。

「ほい。後はティッシュとかで拭いとけ」

「ありがとうです!」

 それを見た勇気は、水筒の中身がネバネバを溶かすことが分かったらしく、またギャンギャンと騒ぐ。

「おい!お前!

 それを俺にもかけろ!」

 それを聞くとさっちゃんは恐ろしい程の笑顔になり、勇気の方を向く。

「え?かけちゃって、いいのか?」

「いい!ほら、はやく!」

 その笑顔に危険を感じられなかった勇気は言いながら頭を突き出す。

 さっちゃんは、笑顔で水筒の蓋を開けながら、言った。

「ん、じゃあ遠慮なく。」

 さっちゃんが水筒の中身を一気にかける。流れ出た透明の液体からは湯気が立ち上っていた。

「熱いィィィィィ!」

 勇気の体に液体が付いた瞬間、彼は地面に転がった。中の液体は相当熱いらしく、至るところから湯気を吹き出し続けている。床に付いた液体は、白く固まり始めていた。

「なぁ、さっちゃん」

「なんだ?」

「何、かけたの?」

「液体になるまで熱した食塩だ」

 食塩。どこまで熱すれば液体になるかは詳しくは知らないが、そこそこ高温で温めなければ液体にはならなかったはずだ。そりゃあ熱い。

 ナメクジに塩をかけると溶ける、とは言うが。

 ・・・もしかしてあれ、本当にナメクジのベタベタだったりするのだろうか。あ、ちょっと吐き気が・・・。

「うわ・・・火傷とか・・・してないかな」

「いや火傷するでしょ」

 にぃちゃんやよっちは口を押さえながら後ろに下がる。無言の『こっちくんな』オーラが、体から滲み出ていた。

「ぷぷっ・・・あはははははっ!」

 モブ子は笑う。ちなみにこいつの上履きも白い固体がついている。ここ一週間は近づかないでほしいところだ。

 保健室には、勇気の悲鳴とモブ子の笑い声がキンキンと響いて、とてもうるさかった。

 ここまでうるさいと、あの方も起きてしまわれる訳で。


「ん・・・なんかぁ、うるさぁい」

 語尾を伸ばした、少女の声が聞こえてきてしまいましたとさ。

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