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第四三話

「咲耶、菫、さっきから何をしているの?」


 フィリチータに到着して歓迎会の準備を始めていたのだけど、咲耶と菫の動きが鈍いのが気になり、二人に声をかける。

 

 ……スマホ?


 二人は手にスマホを持っており、何か気になる事があるようでちらちらと覗いており、準備が手につかないようである。


「何かあったの?」

「いや、結と明斗が上手くやっているかな? と思って」

「思って? って、まぁ、時間が上手く稼げなかったら明斗からは連絡が来ると思うけど」


 明斗と結ちゃんの事を心配しているのか?

 ふざけていても咲耶は年上としての自覚があるのだと思いながら、咲耶のスマホを覗こうとする。

 しかし、咲耶は私にスマホを見せたくないのかスマホを懐にしまおうとする。


 ん? 何か怪しい。


 その様子に私はイヤな予感がして彼の手をつかもうとするが、私の手を咲耶は上手くかわす。


 彼の行動に何か絶対にあると思い、目で優馬に援軍を頼もうとするが、優馬は和真先輩とともに店内の飾りつけをしている。

 まったく、どうして、こういう時に役に立たないんだ。

 仕方ない。和真先輩もみあ先輩と仲が噂されているとは言え、現在はフリーだ。

 良い男に釘づけなのは仕方ない。

 

 改めて、咲耶へと視線を移す。

 咲耶はスマホをポケットにしまうと私から逃げるように準備に戻り、菫も逃げるように咲耶の後を追いかける。


 ……追及している時間はないか? それに明斗の事だ。何かあればすぐに連絡が来るはずだ。気になりはするがそれで準備が遅れてしまえば本末転倒だ。

 だけど、何かが気になるんだよね。


 首を傾げながら準備に戻ろうとするが何かが引っかかる。のどに魚の骨が刺さったような感じだ。


「そう言えば、翔馬くん、遅いですね」

「そうだね。どうしたのかな? 翔馬くんって、こんなに時間にルーズだった?」

「……基本的に指定時間がある時は明斗君に引きずられているからわからない」


 その時、葵は翔馬が来ない事を疑問に思い首を捻った。

 みあ先輩は兄である優馬の腕を引っ張り聞くと優馬は少し考え込むが翔馬が遅れている理由がわからずに眉間にしわを寄せる。


 ……優馬、さすがにその評価は酷いと思うよ。

 だけど、どこか自由人だけど翔馬はいい加減と言うわけではない。

 約束をすれば集合時間にはしっかりと準備をしているはずだし、何か不測の事態があればすぐに誰かしらに連絡が来るはずだ。

 そうなると何かあったか?

 まさか?


「咲耶、菫、翔馬に明斗と結ちゃんの後を付けさせているんじゃないよね?」


 私は翔馬が遅れている理由をおかしな動きをしている二人のせいだと結論付けて二人に詰め寄る。

 そう考えれば翔馬からの実況中継が気になり、スマホを覗き込んでいても不思議ではない。


「安心しろ。翔馬には尾行をさせてない」

「そう……」

「弓永、良く考えろ。今のは何かおかしいぞ」


 私の考えは考え過ぎだったようで少し安心して胸をなで下ろすが、和真先輩は咲耶の言葉に疑問を持ったようで大きく肩を落とした。


 翔馬には? には?

 ……翔馬以外に後を追わせているのか?


「咲耶、菫、誰に二人を尾行させているの?」

「俺達は尾行なんてさせてない。勝手に情報が送られてくるだけだ」

「咲耶の従妹の事を知らない人間から逐一連絡が入ってきているだけ、明斗も目立つからね。女の子と一緒なら話になるよ」


 合点の行った私は笑顔で二人を問い詰める。

 しかし、二人が言うには自分達はあくまで何もやっていないとの事で笑っている。

 

 ……嘘くさい。まったく、尾行なんて結ちゃんにばれたらまた人嫌いが悪化するんじゃないか?

 確かに気になるのはわかるけど、問題は結ちゃんの人嫌いと言う事なのにどうして、そういう事を考えないのだろうか?



「深月、文句を言いながらも結と明斗の事が気になると顔に書いてあるぞ」

「……そんな事はないよ」

「さっくん、すみれちゃん、二人は上手くやっている?」


 咲耶の言葉に少しだけ動揺してしまうが平静に努めて言う。

 私の顔を見て口元を緩ませる咲耶にわずかに殺意が芽生えるが二人の事が気になるのは確かにであり、スマホがしまわれている咲耶のポケットへと視線が移ってしまった。

 すぐに視線をポケットからそらすが二人がケンカをしていないかは気になる。どうにか状況を確認したいが今更、咲耶に頭を下げるのはムカつく。

 何か方法はないかと考えて周囲を見回すと優馬と視線が合わさる。

 同じことを考えていたのは優馬も一緒だったようで彼と目があった瞬間に苦笑いを浮かべてしまう。

 優馬は私が聞き出しにくいと感じ取ったようで咲耶に声をかけようとしてくれるが彼の言葉をさえぎってみあ先輩が咲耶に飛びついた。


「お前は本当にタイミングが悪い男だな。もう少し前に出て弓永を引っ張ったらどうだ?」

「……努力します」


 和真先輩はタイミングを逃した優馬の姿に何かを感じたようで肩を叩き、優馬は小さく肩を落とす。

 その姿に一瞬、わくわくするが今の問題は明斗と結ちゃんだ。

 自分は興味がないと言いたげに準備に戻ろうとしながらも、聞き耳を立てる。


「みあ先輩、聞き耳を立てているヤツがいるんであっちで話しましょう」

「ごめん。ボクにも教えて」


 私が聞き耳を立てているのに当然のように気が付いた咲耶はみあ先輩を連れて私から距離を取ろうと隅に移動して行く。

 その様子に私は慌てて声をかけると咲耶は小さく口元を緩ませる。


 く、悔しい。

 

 咲耶の表情に唇をかんでしまうが今は二人がケンカしていないかの方が気になる。

 ケンカしていないかを知りたいんだ。ここは重要だ。

 全然、変な事など考えてなどいない。


「あ、あの、二人も気になりますけど、翔馬くんはどうしたんでしょうかね? 明斗くんと清瀬さんの後を追いかけていないなら、こんなに遅いのはおかしいんじゃないでしょうか?」

「確かにそうだね。事故とかに遭ってないよね?」

「ああ、確かにある種の事故だな。翔馬は久島先生に捕まったから」


 明斗と結ちゃんの事も気になるが葵は翔馬がフィリチータに来ないのが気になるようで手を上げる。

 その声に不安になってしまうが、咲耶の一言で翔馬の無事が確認された。


 ……翔馬、何したんだろう?


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