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第四二話

 今回も明斗視点です。

 ……翔馬は帰ってこないよね。


 わずかな期待を持ちながら久島先生に捕まった翔馬の帰りを待つ。

 逃走を試みていたとは言え、翔馬の事だ。俺が見捨てたと言って、教室に戻ってくるだろう。


 そう思っていたが、教室の掃除はどんどん終わりに近づいて行く。


 ……どうせ、断られるんだから、姉さんたちが清瀬さんの歓迎会を考えて いるから、遅れて帰ってきて欲しいと行ってしまおうか?


 清瀬さんと二人きりなんて絶対に会話が続かない。

 正直に話してしまえば、清瀬さんだって納得してくれるはずだ。

 

 ……だけど。


 姉さんの事だ。サプライズで歓迎会をしたいと思っているはずだ。

 それをつぶしてしまうのはやっぱり、後味が悪い。


 頭をかきながら清瀬さんへと視線を移す。


「……ちっ」


 掃除は終わったらしく、清瀬さんは制服の中から、スマホを取り出して覗き込むとあまり面白くない着信かメールがあったようで舌打ちをした。


 ……あそこまであからさまに態度が悪いのはどうなんだろうね。


 姉さんも人前で舌打ちをする事はあるけど、あれはネタとしてやっているのであって本心ではない。

 しかし、清瀬さんの舌打ちは感情のままにやっている物であり、見ていて不快になる。

 咲耶さんの従妹だとは言え、こんな子に歓迎会なんかしてやる必要はないんじゃないかな?


「……こっちをずっと見ていると思ったら、こういう事ですか?」

「へ?」

「……メールを見ていないのですか? それなのに私を見ているなんてストーカーですか?」


 考え事をしていた俺の目の前に清瀬さんの顔がある。

 その表情は忌々しそうに口元を歪ませている。

 彼女が何を言っているのかわからずに俺の口からはおかしな声が出てしまう。


 清瀬さんは俺を犯罪者でも見るように見下す。


「ご、ごめん。ちょっと、清瀬さんの掃除が終わるのを待っている間に考え事をしていて」

「そうですか?」


 清瀬さんに謝り、スマホを確認すると咲耶さんからメールが入っている。

 内容は清瀬さんをフィリチータに帰らせないための物であり、清瀬さんから話しかけてきた事に納得ができ、慌てて取り繕うに頷く。

 清瀬さんからは冷たい視線を向けられるが、それが何に対するものかはわからない。


「それじゃあ、行こうか? 咲耶さんからは買い物に付き合ってくれとは言われたけど、何を買うかは聞いていないんだよね」

「私の方のメールに買って帰るものがメモしてあります。ただ……」

「ただ?」


 清瀬さんと話す様子を見て、教室に残っていたクラスメート達から生温かい視線を感じた。

 ひどく居づらく感じて俺はカバンを手に取り、清瀬さんに教室を出る事を提案すると清瀬さんはクラスメート達の視線など気にしていないようだがあまり時間もかけたくないようで廊下に向かって歩き出す。

 彼女の隣に並ぶと清瀬さんは咲耶さんからのおつかいの指示メールを見て忌々しそうに舌打ちをする。

 その様子に眉間にしわを寄せつつも、咲耶さんの事だから、何か余計な事でも書かれているのだろうか?


「……お店がわかりません」

「引っ越してきてすぐだからね。仕方ないよね」


 清瀬さんはわからない事があると俺に知られるのが屈辱だと考えているようである。

 

 他人に頼るのが苦手なんだな。


 清瀬さんの性格のようで一つ、謎が解けたと思い自然に口元が緩んでしまった。

 それを見られてしまい、彼女からは冷たい視線を向けられてすぐに表情を戻す。


「咲耶さんとかおじさんとおばさんは街を案内してくれなかったの?」

「部屋を貸して貰っているんです。おじさんとおばさんに休みの日に無理はさせられません」


 三人の性格を考えれば、清瀬さんが不慣れな街で過ごすのに不都合な事が無いように街の案内とかをしてくれるはずだ。

 だけど、清瀬さんの性格なら断ったんだろう。

 そんな事は予想が付いたけど念のため、聞いてみると予想通りの答えが返ってくる。


 ……そんなに悪い子ではないのかな?

 姉さんに付きまとう事さえ止めてくれれば、あそこまで警戒する必要はないのかな?


 少しだけ評価を変えた方が良いのかな? と思いながらも清瀬さんに付きまとわれて困り顔の姉さんの事を思い出す。

 人嫌いや意地っ張りと言う感じの子だけど、善悪の判断はつくようだし。もう少し長い目で見よう。


「それなら、買い物のついでに簡単に街を案内するよ」

「……」

「変に警戒しなくても良いから、一度、場所を覚えればこれからは一人でもどうにかなるでしょ」


 ちょうどいい機会だし、目的地だけを最短で回られては歓迎会の準備が終わる前にフィリチータに到着してしまいそうだ。

 思い切って彼女の興味がありそうな場所に案内すると提案してみると清瀬さんは俺を警戒しているようで疑いの視線を向ける。

 

 やっぱり、仲良くはなれないと思う。


 清瀬さんが人見知りを治せば姉さんの負担も減ると思うが、今のところ、清瀬さんになんて興味はない。

 このまま人見知りが続けば姉さんの時間が取られる可能性だってあるし、姉さんから目をそらさせるためにも独り立ちさせる必要がある。

 ため息を吐きながら、清瀬さんになど興味がないと強調するように言う。


「……」

「それで、どうするの? 休日におじさんとおばさんの手を煩わせたいのかい?」

「わかりましたわ」


 警戒が解けない事もあり、もう一度、聞いてみる。

 今度は、おじさんとおばさんの事を強調して。

 やはり、おじさんとおばさんには迷惑をかけたくないようで俺の提案に頷く。


 ……これで、姉さんからの頼みは何とかなりそうだな。

あれ? そう言えば、咲耶さんは?


「咲耶さんは案内してくれなかったの?」

「……あんな性悪と一緒になど居たくありませんわ」

「そ、そう? 咲耶さんは少し意地が悪いとこはあるけど、そんなに嫌わなくても良いんじゃないかな?」


 咲耶さんの名前を出して見ると今までにないくらいに悪意のこもった舌打ちをする清瀬さん。

 咲耶さんは悪い人ではないんだけど、ちょっと意地が悪いところがあるから、清瀬さんは人嫌いだし仕方ないのかな?

でも、だからと言っても嫌われ過ぎじゃないかな? と思うのは俺だけかな?


 明斗視点は書いてて楽しかったりします。

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