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第三九話

 どうしたものか?


 結ちゃんの歓迎会と言う本題を伝えるだけ、伝えるとお弁当を食べ終えてみあ先輩は自分の教室に帰ってしまった。

 そう、企画などは全て私に丸投げして行ったのだ。

 みあ先輩らしいと言えばらしいのだが、微妙に納得できない。

 まぁ、みあ先輩に企画を全面的に任せるもの不安でしかないけど、一人で考え込むと考えが凝り固まってしまうから、誰かの話も聞きたいものだ。


 協力してくれそうな人間を探そうと教室内を見回すが、まだ、菫と葵は教室に戻ってきていない。


 咲耶に聞いてみようか?


 歓迎会を企画するにあたり、結ちゃんの予定や参加する人間が集まれる会場を探さなければいけない。

 そう考えると咲耶の協力は必須だ。


 一人で考えていても仕方ないと考えて優馬と咲耶の教室に向かう。


「来たね」

「こっちに逃げていたか……友達を売るなんてひどいよね」

「時には試練を与えるもの友情だからね」


 教室の中を覗くと優馬の席には優馬だけではなく、咲耶と私を見捨てた菫と葵もいる。

 私を見つけて手を振る菫を見て、恨みがましく言ってみると菫は苦笑いを浮かべた。


「深月、お前だって、菫がみあ先輩の暴走モードに捕まっていたら見捨てるだろ。一緒だ」

「失礼な。ボクがそんなひどい事をすると思っているのかい?」

「菫、これからは深月が生贄を買って……」

「許してください」


 私は虚勢を張ってみるが、咲耶の言葉にすぐに訂正する。

 だって、被害者になどなりたくない。みあ先輩の着せ替え人形になっても死ぬことはないんだから、生温かい目で見送ってあげれば良いだけだ。


「それで、弓永さん、みあ先輩は何を言いに来たの?」

「そうだった」

「結の歓迎会だけど、店が休みの日に店内で良いよな?」


 困り顔の私に優馬は苦笑いを浮かべながら助け舟を出してくれる。

 頷き、話し出そうとする私の言葉を遮り、咲耶が結ちゃんの歓迎会の事を話す。


 どういう事?


 意味がわからないと優馬達の顔を見回すと葵は申し訳なさそうに表情を曇らせており、菫は私の反応が面白いのかニヤニヤと笑っている。


「朝の時点で和真先輩からメールで歓迎会をやろうって連絡が来ていたんだよ」

「……どうして、ボクにはメールが来てないの?」


 優馬は言いにくいのか苦笑いを浮かべながら、私に説明をしてくれるが完全にはめられた事を理解した私は眉間にしわを寄せて聞き返す。


「深月にはみあ先輩が直接、伝えるって張り切っていたらしいから、俺達に言われても困る」

「それで昼休みのみあ先輩の襲撃が予測されていたから、私は葵と一緒に非難したんだよ。まさか、お昼休みのチャイムがなってすぐに表れるとは思わなかったから、焦ったけどね」


 ……和真先輩め、今朝の事に対する嫌がらせか?

 わかったよ。結城先生との関係について、これ以上は追及もしないようにするよ。


 私にだけ、みあ先輩が襲ってきたのは和真先輩の報復としか思えない。

 以後気を付ける事を心に誓うと空席からイスを拝借して優馬の隣に座る。


「それじゃあ、歓迎会はこっちで企画してくれていたんだよね?」

「一応な。メインは深月とみあ先輩による早着替え十二連発だ」

「そんな事はしない」


 歓迎会の企画の進捗状況を確認してみると咲耶が企画しているメインイベントを上げる。

 しかし、その企画には賛成しかねる。

 ただでさえ、二日続けて私はみあ先輩の被害に遭っているのだ。絶対にイヤだ。


「こんなにノリノリなのにか?」

「いやあああああ!? な、なんで持っているの!! 隠して、そんな物を見せないで!!」


 反対の意思を見せる私の前には昨日、結ちゃんの事を相談しに行った後に着せ替えられた時の写真が並べられる。

 私は昨日の恥辱が思い出されて奇声を上げてしまうが、咲耶はそんな私の反応を見て楽しそうに笑っている。

 ノリノリではない。みあ先輩に着せ替えをさせられるとある一定の時間からもうどうでも良くなるのだ。

 言葉としては自暴自棄とでも行った方が良いのだろうか? 気が付いたらしっかりとポーズまで決めてしまう。

 それが冷静になった時にものすごく恥ずかしいのだ。

 顔を真っ赤にして写真を取り返そうとする私の手を咲耶は交わして行く。

 この性格の悪さを持ってしても、女子に人気があるのは反則だと思う。


 ……疲れた。


 何とか写真を取り上げるがすでに私の体力は限界だ。

 こんな時にみあ先輩の襲撃があれば絶対に逃げられない。

 止めよう。変な事を考えるとみあ先輩の事だから、本当に出現しそうだ。


「それで、歓迎会だからあまり日が経ってからもなんだし、次の定休日で良いか? 料理とかの準備は父さんと母さんに頼むしかないけど」

「平日だからね。仕方ないよ。学校終わってからの準備だと時間もかかるし」


 息を切らしている私の事など気にする事無く、咲耶は話を進めて行く。

 せっかくの休日に歓迎会の準備を押し付けて良い物か悩むところだけど優馬は咲耶に賛成している。

 確かに咲耶の言い分はもっともなんだけど、やっぱり、私としても何かしてあげたい。

 それは喫茶店をやっているおじさんとおばさん以上の料理を作れるとは思えないけど……


「納得いかないなら、なんか別に作れば良い。みあ先輩だって勝手に厨房で何かを作り始めるだろうからな。その方が結も喜ぶかも知れないし」

「そうだね。おじさんとおばさんと料理はかぶりたくないから、相談してみよう」


 私の考えが読めたようで咲耶は一つの提案をしてくれる。

 苦笑いを浮かべてはいるものの、その表情からは咲耶も結ちゃんの事を心配しているのが見て取れる。

 私が明斗や翔馬を心配するのと同じようなものを感じ、素直に頷く。


「会場の飾りつけとか人手いるから、学校が終わったらすぐにいかないといけないだろうけど、どうする? 咲耶の従妹は友達がいないんでしょ。それなら、すぐに帰宅でしょ?」

「そこら辺はほら、明斗と翔馬に丸投げ?」

「……いや、それは酷く不安になるよ」


 おじさんとおばさんに協力を仰ぐのは決定したけど、会場がそのままと言うのは寂しいと思ったようで菫は結ちゃんの帰宅を遅らせられないかと言う。

 咲耶の中では明斗と翔馬も強制参加と認識しているため、その辺の問題は二人に丸投げするつもりのようだが、明斗と結ちゃんの険悪な空気を考えると任せにくい。


 どうしたものか?


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