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第十九話

「なんか、疲れたね」

「そうだね」


 結ちゃんから解放された私は優馬と一緒に生徒会の手伝いをしている。

 彼女の相手に比べたら生徒会の手伝いなど簡単なものであり、私は念願叶った優馬と一緒の手伝いに内心ドキドキではあるが表情に出すようなへまはしない。


「だけど、あの子、大丈夫かな? 初日から久島先生に捕まって」

「……更生してくれたら良いな。ボクは女の子には興味がないんだから」


 優馬はレン兄に捕まった結ちゃんの事を心配する。

 その様子に少しだけ嫉妬を覚えるが、それ以上に結ちゃんへの恐怖が勝り、私の身体を震わせる。


「ひょっとして、ボクはこれからずっと結ちゃんに狙われて過ごさないといけないのかな?」

「ど、どうだろうね」


 頭をよぎった恐怖を口から漏らす。

 同性愛者に狙われるのがこんなに恐ろしいとは思っていなかった。

 同性愛者の優馬まで引いていると言う事は結ちゃんが只者じゃない事はわかる。

 私はこれから彼女に狙われる学生生活を送らないといけないのか?

 そんなのはイヤだ。

 私は同性愛者には理解をしているつもりだけど、自分がターゲットにされるのはごめんだ。

 私は好きな相手が同性愛者であっても、私自身が腐女子要素を含んでいようが恋愛に関して言えばドノーマルだ。


「あれ? 電話? ……また、咲耶あいつか?」


 頭を抱えている私のスマホが着信を告げた。

 慌ててスマホを取り出すとディスプレイにはまたも咲耶の名前が表示されている。


 ……今度は何の用だ?


「今度は何?」

「いや、さっき、言い忘れた事があってな」


 私は何事かと思って電話に出ると咲耶は電話先で苦笑いを浮かべている。


 ……なんか、イヤな予感がする。


 私の本能が危険を知らせている。

 このまま、通話を切ってしまおうかとも思うが明斗とは違うため、要件を聞かなければしつこく電話やメール攻撃をしてくるだろう。


「言い忘れた事って何?」


 咲耶との付き合いもかなり長い、あいつが私の性格を理解しているように私もあいつの考えがある程度は理解できる。

 しぶしぶ、咲耶の言い忘れた事を聞く。

 なるべく、面倒事は遠慮したい。

 ただでさえ、今日は結ちゃんと言う爆弾を不本意とは言え、抱え込んでしまったのだから……


「週明けでも良かったんだけど、新入生に俺の従妹が入ったんだけど、ちょっと暴走気味な子だから、問題起こすかも知れないから、今日、問題起こしたらフォローしてくれ」


 ……何だろう? 問題が一つになった気がする。


 咲耶が言うには明斗や翔馬と同様に彼の従妹が月宮学園高等部に入学したらしい。

 

 それを聞いた途端、私の何かが更なる警告音を鳴らす。


「……ねえ、咲耶、ひょっとしてその子の名前って清瀬結ちゃんって言わない?」

「そうだけど、もう会ったのか? ……あいつ、今度は何しでかした?」


 私は内心びくびくしながら、先ほど会った百合娘の名前を出した。

 私の予想は的中しており、電話先で咲耶はため息を吐いている。


 ……あんたの関係者か。そう考えると逃げ切るのが難しいね。


「で、あいつは何をしたんだ?」

「……なぜか、ボクの事をお姉さまって呼んでいる」

「お姉さま? ……なんで、そんな状況になったんだ?」


 咲耶の疑問に私は理解できない結ちゃんの事を話す。

 従兄妹の関係とは言え、状況がまったく理解できない咲耶は彼にしては珍しく重々しい声で聞き返す。


「それに関して言えば、ボクが聞きたいです」

「弓永さん、そろそろ仕事に戻るよ」

「うん。咲耶、終わったら、お店に行くから話はその時に」

「わかった。待っているぞ」


 結ちゃんの性格を理解しきれていない私では理解できない事が多すぎる。

 私がため息を吐いた時、優馬が私の制服を引っ張った。

 咲耶に約束を取り付けると私は通話ボタンを押し、スマホを制服に戻す。


「清瀬さんって咲耶の従妹だったの?」

「そうみたい……咲耶の関係者と言う事は絶対に逃げきれない。どうにかしないとボクの貞操が危険だ」


 私と咲耶の話を聞いていた優馬は結ちゃんと咲耶の関係を理解したようで私に笑いかける。

 優馬の笑顔に気持ちがぐらつくが私は身の危険が近づいている事の方が重要であり、どうしたら良いのかわからない私は大きく肩を落とした。


「とりあえず、咲耶に清瀬さんの事を聞いてみないとダメだね」

「そうだね……変な事に巻き込まれているんだから、あいつに何か奢らせないと」


 今の状況では結ちゃんの情報が少なすぎる。

 身の安全を確保するためにも情報を集めるのは重要だ。

 ……今度、文芸部の友達に百合娘についても聞いてみよう。


 でも、抜け出せなくならないようにしないと……絶対に同性愛者などには私はならない。


 私は拳を握り締めて声高に宣言しようとするが、隣に優馬がいる手前、そんな事はできない。

 彼の前で結ちゃんをバカにするのは同性愛者な彼を傷つけてしまう可能性だってある。

 そんな事をして優馬に嫌われるわけにはいかない。

 私は深呼吸をして自分を落ち着かせると咲耶に奢らせると悪態を吐く。


「あんまり無茶は止めなよ」

「それは金額的に? カロリー的に?」

「どっちも、弓永さんが体重を気にし始めると翔馬や明斗くんが騒ぎ始めるから、特に翔馬は肉が食いたい。ごはんが足りないって」

「そう?」


 私の悪態に苦笑いを浮かべる。

 その言葉に私は少し気になる事があり、頬を膨らませた。

 優馬は自分の意見ではないと首を横に振る。


 ……明斗と翔馬に責任を押し付ける気か?

 と言うか、私は太ってなどいない。

 だいたい、自分の分は制限したって、明斗や翔馬の分まで減らしたことはない。


「と言うか、男の子と同じ量を食べたら、ボクはすぐに丸くなってしまう。基礎代謝が違うわけだし……筋肉を増やすか?」

「そんな必要はないと思うけど、弓永さんは今のままで充分、魅力的だよ」


 筋肉量が多い人は基礎代謝が違う分、食べたものを効率よく燃焼させることができると言う話だ。

 しかし……あんまり、筋肉の方が質量は重いと言うし、結局、体重が増えるのかどっちもイヤだな。


「ユーマ、今、何か言った?」

「……なんでもないよ」


 考え事をしている間に優馬が何かを言っていた気がしたので聞き返して見るが優馬は大きく肩を落としている。


 ……なんか、重要な話だったのかな?

 まあ、何でもないって言っているし、そうでもないのか?


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