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第十六話

 な、なんで、こんなに忙しいの?


 入学式の朝、真新しい制服に身を包んだ明斗と翔馬の姿を拝んだ後、優馬とともに月宮学園に向かった。

 当日だけの手伝いだと甘く見ていた私も悪いのかもしれないが学校に到着するなり、私は先生たち、優馬は生徒会に拉致されて先生達の指示で学校内を走り回っている。

 新入生や保護者の方々に配るプリントの印刷、冊子作り、その他もろもろ忙しすぎる。


 レン兄にだまされた。優馬と一緒だって言ったのに。

 と言うか、プリントくらい前日までに印刷して置いてよ。


 私は地団駄を踏むが先生達の手前、文句を言うわけには行かない。

 ここで私の前に顔を出さない辺り、レン兄の黒いところだ。

 きっと、優馬も私のように馬車馬のように働かされているだろう。


 本当に入学式も見せて思えるのかな?


 レン兄を疑っているわけではないけど、どうしてもだまされている気がしてならない。


「姉ちゃん、忙しそうだね」

「手伝おうか?」


 私がプリントを手に廊下を爆走していたその時、すでに登校してきていたのか明斗と翔馬が私を見つけて駆け寄ってくる。


 ……待て。どうして、すでに女子生徒に囲まれている?

 それも二人が並んでいる場所に黄色い声まで……腐女子(同族)が居るのか?

 ……いや、待て。私はノーマルだ。

 部屋にあるBL本はあくまで優馬の研究用であって……すいません。思いっきり、嘘をつきました。すでに完全な趣味(主食)です。


 二人の周りはすでに女の子達が囲んであり、私はその様子に改めて、後輩達が言っていた二人が人気者だと聞かされた事を思い出す。


 しかし、耳に届く言葉は純粋な好意が混じった声と私が何者か噂する話よりは二人が並んでいる事に対するおかしな視線が気になるのはなぜだろう?

 

「明斗、翔馬、大丈夫だよ。二人は新入生なの。今日の主役なんだから、お姉ちゃんの事は気にしなくて良いから」

「そう?」


 二人に好感を持っている娘達から私を見定めるような視線も感じるため、『姉』だと強調して二人の提案を断る。

 

 ……そして、明斗、なぜ、肩を落とす。あの娘達からの敵意が上がったから止めて欲しい。


 私に断られて肩を落とす明斗の様子になぜか新入生の女の子達の眼力が鋭くなったような気がする。

 これは優馬への告白に運悪くぶつかった時と同種のものだ。

 その視線に私の背中には悪寒が走るがあまり遊んでいるとレン兄の事だから入学式を見せてくれない可能性だって考えられる。


 明斗には悪いけど、仕事に戻ろう。翔馬、どうにかして。


 翔馬に目で助けを求めると彼はくすりと笑う。

 その様子から私の考えを酌んでくれたのがわかった。

 さすが、誰よりも私の扱いを心得ている男。


「明斗、姉ちゃんを困らせるなって、仕事の邪魔になるぞ。それにそろそろ、俺達も教室に入らないといけない時間だし」

「別に困らせているつもりはない。それじゃあ、姉ちゃん、忙しいみたいだけど慌てて転んだり、階段から落ちたりするなよ」

「わかっているって、そこまで心配しなくても大丈夫だよ。ボクは仕事の途中だから行くね」

「姉さん、逃げるな。話を聞け」


 翔馬から注意を受け、明斗は不機嫌そうに顔をしかめた後、私にくどくどと注意をし始める。

 こうなった明斗は長いため、私は逃げるように廊下を駆け出す。

 

翔馬、明斗の事を頼むよ。あ、これはダメだ……


 明斗が追いかけてこない事を願いながら、廊下をまがった瞬間、長い髪をサイドポニーでまとめた女の子一人を男の子が三人囲んでいるのが目に入る。

 私は急ブレーキをかけようとするが、全力で走っていた私は止まる事が出来ずにそのうちの男の子一人にぶつかり、手に持っていたプリントをぶちまけてしまう。


「い、いってえな」

「ご、ごめんなさい」


 男の子達は一昔前にいた不良なのか制服を着崩しており、私を睨み付ける。

 慌てて頭を下げて謝り、プリントを拾おうとするが男の子達の一人が私の手をつかんだ。

 

 ……あ、これは絡まれる流れだ。さっきの娘は捕まって困っていたわけね。


 男の子達と一緒にいた女の子は私が登場した時にこの場から逃げ出してしまい、私は状況を理解した。

 高校デビューと言う奴なのかすごく高圧的な目だ。

 

「二年か?」

「そうみたいだ……悪いと思うなら、少し付き合ってくれよ。先輩」


 私の制服のネクタイを見て、同学年とは違うと判断したようだが囲んでいた女の子に逃げ出されたため、私を標的にしたようである。


 ……だけどね。私達は君達みたいな子に威圧されるほど、弱くないんだよ。

 なぜならね。レン兄のような人間凶器と知り合いだからね。


 男の子三人を相手に普通は怯みたくなるのだが、彼達以上の圧力を笑顔でかける人間を私は知っている。

 それに比べれば、この程度の圧力には屈するわけにはいかない。


「付き合ってくれるの? 悪いね。ぶつかったのはボクなのにプリント拾うのを手伝ってくれるなんて、君達は良い子だね」


 笑顔でプリント拾いの協力を仰ぐ。

 予想をしていなかったのか三人の表情は一度、怯むがふざけるなと言いたいのか私の腕を強く引っ張ろうとする。


 これはまずいかな?


 怒らせてしまったかな? と思いながらも私は焦る事はしない。

 なぜなら、この三人より恐ろしいものが背後に近づいてきている気配をひしひしと感じるからだ。


「弓永さん、戻ってこないと思ったら、プリントを落としてしまったんですか?」

「は、はい。それでこの子達に拾うのを手伝って貰っているところです」


 私は背後から伝わる圧力に顔を引きつらせると落ち着いた声で話しかけるレン兄。

 目の前の新入生の男の子達は私を獲物として見ている事もあり、レン兄を睨み付けているがそれは死にフラグだ。

 止めるんだ。私は血の惨劇など見たくない。

 私は男の子達に話を合わせるように目で合図を送るが、翔馬とは違い、彼らと私の中にはアイコンタクトでつながるような信頼関係はない。


 終わった。


 これが正直な私の思いだが、男の子達はいかにレン兄が恐ろしい存在かは気が付いていない。


「そろそろ、新入生は入学式前のHRが始まりますから、教室に戻ってください。弓永さん、行きますよ」

「Yes, sir Boss」


 レン兄は笑顔で新入生達に笑顔で圧力をかけると三人のうちの一人はレン兄の恐ろしさに気が付いたのか仲間二人の制服を引っ張り、教室に向かって歩き出す。

 私はその様子に血の惨劇が起こらなかった事に胸をなで下ろすとレン兄にプリント拾いを手伝って貰い、仕事を再開させる。


 いつも閲覧ありがとうございます。


 今週から、仕事の方が忙しくなり、毎日更新が難しくなると思います。

 現在、『勇者の息子と魔王の娘?』と言う作品も同時に書いていますので交互に更新と言う形になると思います。

 また、こちらの作品は午後8時をめどに予約投稿になる事をご了承お願いいたします。

 

 以上の事、ご理解いただければ幸いです。


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