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第十一話

優馬視点です。

 クラスが違うため、廊下で深月と別れて教室に入る。

 クラスメート達と朝の挨拶を交わすと一直線に自分の机に座り、机に突っ伏して頭を抱える。


 ……深月の身体、柔らかかった。そして、良い匂いだった。


 抱きしめてしまった彼女の小さな身体の感触を思い出してしまい、一気に体温が上がって行く。

 はたから見れば今の僕の姿は僕が壊れたと見えるだろう。

 僕だって朝から教室の席で頭を抱えて悶えている友人が居ればいくら仲が良くても少し距離を開けたくなる。

 だけど、今の僕はそれどころじゃない。

 腕の中に残る彼女の感触を思い出そうと必死だ。


「優馬、また、面白い格好しているけど、深月と何かあったか?」

「……何、写真を撮っているんだよ。サク」


 スマホを片手に悶えている僕の写真を撮るクラスメートが一人。

 そのシャッター音に僕が顔を上げると僕と深月の小学校からの友人の一人である『大河咲耶おおかわさくや』が立っている。

 咲耶の家は喫茶店を経営しており、子供の頃から後継ぎになるべく学校が終われば手伝いをしている。

 彼自身、美形であり、あの甘い笑みで笑いかけると女の子はくらっと来てしまうようで多くの女の子から告白されている。

 小学校の時に深月のそばに良くいた事もあり、僕は敵意のこもった視線を向けていた事もあった。

 咲耶は僕の視線に気づいたようで二人になった時に楽しそうに笑うとあの可愛い深月をタイプじゃないときっぱりと言い切った。

 その時、安心して胸をなで下ろした僕を見て、「弱みゲット」と小学生にしては信じられないくらいの黒い笑みを浮かべて言ったのだ。

 その時から、弱みを握られた僕は深月と事でずっとからかわれ続けている。

 それも深月が僕の事を同性愛者だと勘違いしている事を知っていてもフォローをしてくれない腹黒い男だ。

 この男に騙されている娘達を見ると助けてあげたくなるが何を言われるかわからないため、知らないふりもしている。


「いや、優馬が深月関係でおかしな行動をしている所を見つけたら、写真を撮って置いて欲しいって、翔馬に頼まれたからな。送信とそれで今度は何があったんだ?」


 そして、なぜかうちの翔馬と仲が良く、僕の知らない所でメールや電話をしている。

 咲耶は翔馬へとメールを送り終えたようでスマホを僕の机に一時的に置くと僕の前の席のイスを拝借して、僕の前に座った。

 その様子を見て、なぜか女子達が黄色い声を上げる。


 ……勘弁してほしい。深月も勘違いしているけど、どうして、僕を同性愛者(そんな目)で見るんだ。僕は正真正銘、女の子が深月の事が好きなのに。


 腐女子と言われる女子達はどこにでもいるようで僕が嫌がっている事など気にする事無く、教室の中からこそこそと噂話が聞こえる。

 その様子に泣きたくなるが声を大きくして言うと逆に変な噂になる可能性もあるため、何とか湧き上がる怒りを抑えつける。


「否定しないからだろ。女子だって現実は現実だって理解しているんだ。二次元それ二次元それ三次元これ三次元これと割り切っているさ。お前だって、女の子同士の絡みのあるエロ本も見るだろ? それと一緒だ」

「な、何を言っているんだよ。見ないよ!?」

「そうだったな。深月にそう言う物を持っていて軽蔑されるのがイヤだから持ってないだったな。それが深月の勘違いを大きくさせているとも知らずに。性欲を持て余した高校生男子なんだ。それくらい普通に持っていると深月だって思っているし、見つかって軽蔑されると思うなら、あえて幼馴染物で統一しておけよ。それがそろっていたら、お前がホモじゃないって思い直してくれるから、誤解が解ければ簡単だろ?」

「そ、そんなわけ、無いだろ。絶対に軽蔑されるに決まっているだろ!?」


 付き合いの長い咲夜には僕の考えている事などお見通しなのかため息を吐いた後にからかうように笑う。

 僕は顔を真っ赤にして否定するが、咲耶から言わせれば僕の行動すべてが逆効果だと言う話だ。

 僕と咲耶が話し始めた様子に若干、引いていた友人達がわらわらと僕達の周りに集まってくる。

 友人達は咲耶の意見に賛成のようで大きく頷いており、僕は少数派のため居心地が悪くなり、身を縮める。

 

 ……だって、幼馴染だし。部屋にそんな物が有ったら、絶対に汚物を見るような目で見られるよ。

 僕の事を同性愛者だと勘違いしていても普通に話をしてくれてはいるけど、そんなのを見て軽蔑して距離を取られたら僕は生きていけない。


「結局、今の関係が壊れるのが怖いだけだろ。ヘタレ」

「ヘタレじゃない!!」

「ヘタレじゃないって言うなら、今からHRが始まるまで十分あるから、深月のところに行って告白してこい。絶対に無理だろうけどな」


 スマホを弄りながら僕を挑発する咲耶。

 ヘタレ扱いされている事に僕は声を上げるが、咲耶はさらに挑発を続けて深月に告白して来いと言う。


「うっ……」

「早くしろ」

「早くしろ。じゃない。だいたい、僕と話しているのに何でスマホを弄っているんだよ? 親しい中にも礼儀ありって知っているかい?」


 その言葉に立ち上がろうとするが、いざ、深月への告白となると腰が引けてしまう僕。

 咲耶と集まった友人達は僕の姿を見て、ニヤニヤと笑っており、踏ん切りのつかない僕は話をそらそうと咲夜に向かいスマホをいじるなと言う。


「安心しろ。ラインでこのやり取りを翔馬と中学の頃の仲間に伝えているだけだ」

「安心できるわけないだろ!! 咲夜、君は僕をどこまでからかえば気が済むんだ?」

「これだけの人間に生温かい視線で応援されているのにいつまでヘタレているつもりだ? 早く決着付けないと面倒な事になるぞ。お前が思っている以上に深月は人気があるんだからな」

「ぐっ」

 

 咲耶は友人達に今の僕の痴態を伝えていると言う。

 僕は恥ずかしさに声を上げて咲耶からスマホを取り上げようと手を伸ばすが咲耶は僕の手を簡単に交わすと自分のスマホの画面を僕に見せつける。

 そこには翔馬だけではなく、別の高校に行った友人達の名前が連ねてあり僕は何も言えなくなってしまう。


「今日も告白は無理とそろそろ時間だから解散だ」


 僕の様子に咲耶はため息を吐くと友人達への報告を終えたようでスマホの電源を落とし、集まっていた友人達を散会させると自分の席に戻って行く。


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