第一話
この想いは報われない。
そう思ったのはいつだろうか?
私には異性の幼馴染がいる。
容姿端麗で運動神経抜群、成績も良く、誰にでも優しい完璧な幼馴染だ。
当然、友人達からは羨ましがられていたし、幼馴染と言う事で距離が近いため、彼のファンクラブを名乗る娘達からは嫌味も言われた。
そんな時にはどこからともなく颯爽と現れ、私の事をかばってくれるのだ。
そして、私は少女マンガやゲームのお約束に漏れる事無く、幼馴染に恋をした。
淡い初恋だったんだと思う。そう思いたい……
だけど、そばにいたから気が付いてしまった。
小さな頃からそばにいたから……
彼は女の子など恋愛対象ではないと。
彼の視線の先にはいつも可愛い男の子がいる事に。
それに気が付いても当然、私は信じる事が出来なかった。
好きな男の子が女の子ではなく、男の子が好きなんて思いたくないからね。
きっと、彼はボーイッシュなタイプの娘が好きなんだと勝手に思い込もうとした。
だから、彼の興味をひきたくて髪を短くして、一人称も『ボク』にした。
幸いと言って良いかはわからないが、私の胸は残念だったし、バレー部にも所属していたから動きやすい格好にしたいと言えば、友人達や家族もしぶしぶだが納得してくれた。
幼馴染だけは付き合いが長いせいか首を傾げていたが本人に向かって理由を言えるわけもなく、何とか誤魔化した。
この格好なら、私の事を見てくれるのではないかと淡い期待もした……
だけど、そんな想いは脆くも崩れ落ちた。
彼から見る私の立ち位置は恋愛感情のわかない親友、もしくは妹と言ったところだろう。
実際、彼の性癖に気づき始めてからは恋愛対象として見て貰えなくても、この格好なら、ずっとそばに居られるのではないかと思っていたし、玉砕覚悟で想いを伝える事も考えたが腰が引けてしまった場面も多々あった。
いつも隣にいるのだ。
そんな気持ちが見え隠れすれば、普通は気づき、私に興味がないなら鬱陶しがられて避けられただろう。
しかし、相手は『完璧な幼馴染』だ。
想いを伝えたいと思っている方から考えれば泣きたくはなるが、当然のように鈍感も兼ね備えている。
伝わらない想いに何度も涙で枕を濡らした。
そんな私は自分でも女々しいとは思う。
彼が気づいてくれないなら自分の想いにふたをしてしまえばそばに居られるんだとも考えようとした。
……割り切ろう。いつも通り、『ボク』になってあいつを交えた友人達とバカな話をして笑う。
楽しければ、そんな毎日を暮せればそれで良いとも考えた。
でも……気づいて欲しい。幼馴染ではない特別な関係になりたい。
そんな想いの繰り返し、何度も何度も毎日のように私は自分の気持ちを抑えつけるために『ボク』に代わる。
私の想いが彼に気づかれないようにでも気付いて欲しい。
そんな、矛盾の繰り返し……
それでも……
どうしても想いが溢れ出てきてしまう時はある。
それは私の初恋が終わった日。