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ファンタジー小説

もやしびと

作者: オリンポス
掲載日:2012/10/23

読みやすさを意識しました。

「あー。――外に出たくない」

 夏の容赦ない陽射しが、カーテンからもれて。

 そのカーテンからは熱気がもれて。

 その熱気のせいで部屋は蒸れて。

 いまぼくは、すごく不愉快なのだった。

「全く……」

 ふーっ! と。

 大きなため息をつきながら、ぼくはコントローラーを投げた。

「いつまでやっても、いつまでたっても、エンドロールにたどりつけやしねえ!」

 まるで無表情のテレビ画面に愚痴を言ったが、しかしその映像に変化は訪れない。

 当たり前である。

「あー、だるいだるい」

 と。

 軽快なステップで台所に行き、グラス一杯の水を汲んで、テレビ画面に戻る。

 ――最近。

 エアコンの調子が悪くなったせいで、冷風がでない。

 きっとフィルターにほこりがつまっているのだろう。

 除去するのが面倒くさいから、そのまま放置しているが。

 ああ、融解するほど暑いなー!

 漫喫行きてー!

 と、思案しているうちに。

 ふと。

 1台のノートパソコンの存在を思い出した。

 なんのことはない。

 どこの家庭にでも置いてありそうだけど、年代がちょっと古いタイプのパソコンだ。

 財閥のボンボンか、流行に敏感なミーハーかはわからないが――。

 たぶんそんな人が使っていたのだろう。

 近辺の河原に落ちていた。

「株でもやるか!」

 株において。

 成功するのは銀行などの企業が主体である。

 ぼくみたいな個人投資家は。これは素人にいえることだが。

 証券会社のアドバイザーなりアナリストなり雇わないと、儲けるどころか、損をしてしまうことが多いという。

 だがしかし――。

 ジョナサン・リーベットは、とある掲示板に書き込みをし、株価を吊り上げることに成功している。

 当時まだ15歳前後であった。

 その後、米証券取引委員会(SEC)に不正取引の容疑で告発されたが、べつに悪いことなどやってはいない。

「さーてと……」

 ニューヨーク市場とナスダックの値動き、シカゴ市場の日経先物の値動き、各国市場の値動き、外国人投資家の動向、25日移動平均値、移動平均乖離率、TOPIX(東証株価指数)、25日騰落レシオ、ストキャスティック…………の確認完了。

 なんか都合よく、日経新聞も拾ってくることができたぞ!

 ――というわけで。

 株を買った。

 とりあえず、回転売買でもやって、資金をつくらないとな。

 しくじったらナンピンでもするか。損切りはもったいないから。

 早くも弱腰で、100株購入した。

 誤解しないで欲しいのだが、この株は100株単位で販売していたのだ。

 べつに富豪買いでもなんでもない。

 …………。

 さて、さて。

 茶番が済んだところで本題。

 しょうじき株とかはあまり、というか、全然関係がなかったのだ。

「むむむっ。こ……これは!」

 株取引を終え、ネットショッピング中。

「もやしをプランターに植えて育てるだと? た……楽しそうではないか」

 ぼくはさっそく購入した。

 商品名に『もやしびと』とある、あやしげなものを。


 ――20日後。

 ベランダで栽培していたもやしは、すでに芽を出し始めていた。

 しかしながらぼくは「育つの遅くねーか」などとぼやいていた。

「ふつーは、数日で出来上がると思ったんだけどな」

 相変わらずの良いお天気。

 海にでも行って、焼きたい気分だ。――焼きそばを。

 とはいえ。

 海の家の主人が鉄板と材料を貸してくれなかったら、できない相談だけどな。

「さーて、この種はなんだ?」

 商品名『もやしびと』を注文した際。

 プランターでもイチゴパックでもいいのだけれど、そっちにいれて育てる用の種と。

 食用の種が包装されて送られてきた。

 ――前者の方は、さっそくプランターに植えて育てたが。

 ――後者はまだ食べていなかった。

「ドラゴンボールの仙豆みたいな効力があったりしてな」

 くだらない詮索をしつつも。

 パクッと口に含み。

 嚥下えんかした。

 咀嚼そしゃくしたわけではないので、味はわからなかった。

「さーて。暇つぶしにゲームでもやろっかな!」

 テレビのスイッチと、ゲーム機の電源をいれた。

 ――プレイ開始。

 約10秒後。

「飽きた」

 ぼくはコントローラーをテレビに向かって投げつけた。

 …………。

 しばらく沈黙すると、

「さーて、ひさびさに公園でも行くかな」

 家を出て自転車に乗り、近くの公園に駆けだした。

 その公園には、園児の送迎を終えたママ友たちが群がっていた。

 ベンチに座り、ママ友の様子を観察しながら、

「まあ、平日だからな」

 無職のぼくは呟いた。

 空を見上げると、やや曇りがかってくるのがわかった。

 どうやら風向きから考えても。

 雲行きを考えてみても。

 ちょうどぼくのいる公園に差しかかる。

 降られてもまずいから、さっさと移動しよう。

 ぼくは足元の土が、雨で湿っていく様を想像していた。

 ――結果。

 ぼくの予想は的中した。

 通り雨ではあったが、遠慮なしに降った。

 ママ友も途中で察したらしく、いつの間にやらいなくなっていた。――代わりにといっては、ほ乳類と両生類なので無理はあるが、代わりにその場所でカエルが鳴いていた。

「ヘックショイ!」

 くしゃみをするぼく。

 なんだか地面に根が生えたみたいにして、身動きが取れず。

 雨をしのぐこともできず。

 髪の毛をぬらされた。

 ――。…………。

 おやっ!?

 なんか急に元気がわいてきたぞ! すげえ。

 手足を主体とする神経系は。

 全くいうことを聞いてくれないけど。

 なんか調子がよくなった。

 日が落ち。

 夜になり、さらに元気が増した。


 ――翌日。

 ぼくの座っていたベンチに人はおらず。

 代わりに。

 といっては、動物と植物なので無理があるが。

 もやしが。

 生えていたという。

 そのもやしは、人のように大きかったことから。

『もやしびと』と呼ばれるようになったらしい。

 ニートが。

 強さ、たくましさの象徴である。

 もやしになった瞬間だった。

感想いただけましたら、必ずお返事いたします。

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