天国の教習所
俺は今年、交通事故に巻き込まれて死んだ。どうやら天国というか極楽浄土とやらにくることができたらしい。生前大して悪いこともしなかったから天国に来れたんだろうか。おぼえている悪いことなんか冷蔵庫にあった家族のプリンを勝手に食ったことがある程度だ。俺の分で食っていいやつだと思ったんだよ。悪いか?
ところで今現在、俺はやっかいなことになったと思っている。今年死んだ俺は新盆というやつでお盆に生家に帰る予定なのだが、俺は死者の乗り物とされている馬にも牛にも乗れない。
どうやって帰るんだよ、一体? と思っていたら教習所の通知が来た。最近の死人は馬にも牛にも乗れないやつばっかりだから乗り方を教えてくれる教習所が天国にはあるらしい。変なところで現代的な世界だな。
早速、天国で知り合った友達と一緒に天国の教習所とやらに行ってみることにした。
いってみたらなんだか知らないが混んでいる! 人が沢山だ。日本人じゃないやつもいる。とはいえみんな仏教徒なのだろう。日本以外にも仏の教えを信奉してる国は多いからな。こんなに馬だの牛に乗れないやつが沢山いるんだな。教習所ができるわけだ。
カリキュラムがあるぞ。なになに? 学科まであるのか? 交通ルールを守りましょうだぁ~? 守ってもいいがみんなすでに死んでるぞ?
そうして俺は今日始めて実地の訓練を受けた。まずは馬よりのんびりとしておとなしいナスの牛に乗ってみることからだった。ナスの牛はシュールだった。
しばらくして俺は始めての実地の教習を終えた。
「うーん、今日は判子をあげられないねぇ」 と教習所の指導員に言われてしまった。
俺は運動神経がよくない。運動神経がよかったらそもそも車にひかれて死んでいない気がする。
結局俺は今日、判子をもらえなかった。天国だというのに世知辛い世の中だぜ。
読みやすいようにちょっと修正。