5話「ダメなものは、所詮、ダメなんだよ」
………………
翌日、俺は校長室に居る。
中年太りの校長が机に体重を掛け、椅子に座る。
その校長の目の前に、俺は立つ。
「どうしたんだね、浮船君・・」
という校長の問いが来た。
それに対して、俺は・・。
「今日限りで、学校を辞めさせてもらいます!!!」
と、大声で叫んだ。
その声は、校長室全体に旋律の美しい調べのごとく響く。
更に、勢いで校長の机に辞表を叩きつけた。「それでは、お世話になりました・・」
校長が状況が読めていないのに、そのまま、俺は校長室を立ち去る。
昨日のあの二人のバカ親子が来たときの俺も、こんな感じだったのだろう。
もう新城の顔を見るのも嫌だったから、受け持ちのクラスに一言も別れを言わずに立ち去ることにする。
自分勝手過ぎるとは思っているが、そんなことが、どうでも良くなるくらいに、昨日の件に腹を立てていた・・。
しかし、辞めるにしても・・、いきなり過ぎたな・・。
と、少し反省してしまったのが、俺の良心なのだろうか。
というか、これが普通の感覚なのだろう。
………………
それから、1年の暇な日々を過ごし、俺は都心から離れ、とある島に住んでいる。
あの事件があっても、教師の夢を捨てられずに居たため、この島の小さな小学校の先生をやっている。
この学校の生徒は、少ない。
だが、俺はこの少数の子供達と、日々向かい合って生きている。
毎日が、体当たり。
だけど、俺は、とても充実していれる。
辛いときもあるが、あのインプレッサ大破事件を思えば辛くなくなる。
そういう意味では、あの女に少し感謝せねば・・。
いや、やっぱり、感謝はしない・・。
………………
そして、ここに暮らしはじめ、7年経った。
さすがに、あの事件は、もう忘れた。
俺も、気づけば32のオッサンだ。
歩くたびに、周囲の人々から暖かく見守られ、
「先生、おはようございます」
と、日々挨拶される。
都会にいた頃、こんなに優しく挨拶されたことはあったであろうか・・。
今日は、実に日差しが眩しい。
なにか、いいことがありそうだ。
そんな予感で、頭がいっぱいだ。
世の中は、嫌なことだらけだ。
俺の場合は、嫌なことから逃げた。
だが、逃げるが勝ちと言う言葉がある。
逃げることによって、人は新しい自分の道を見つけることが出来る。
それを、俺は証明した。
だから、今、とても充実している。
そう思いながら、俺は学校への道を歩く。
しかし、所詮、現実は小説より奇怪なり。
この後、俺は自分の認識の甘さに泣く。
新しい居場所だと信じた学校には、なぜか、新任の教師になった新城蓮が居る・・。
所詮、世の中はダメなものはダメだ。
………………
完
かなり中途半端で、些末な作りになってしまったことをお詫びします・・。物語を破綻させてしまった自分の力のなさを憎むばかりです・・。