3話「ゴム、空高く」
…………………
新城蓮が、俺のアパートの前に・・。
そのことに、俺は慌てて服を取りに走った。
部屋干ししてたズボンを履き、脱ぎ散らかしてたシャツを着る。
そして、慌ててドアに向かった。
玄関に着いた俺は、ドア越しの新城に向かって。
「こんな時間に、なんの用だ・・」
と言った。
本当に、この時間になんの用なんだ。
夜に、男の部屋のチャイムを鳴らすとは・・。
彼女の口が開いた・・。
「とりあえず、部屋に入れさせてもらえませんか?」
な・に・を・い・っ・て・る・ん・だ・!・?
バカか、この女!
自分の言った言葉の危険性が解ってるのか!?
俺は、我慢に弱い人間であり、自分の欲望に弱い。
部屋に入れたら、新城になにするか・・。
解ったもんじゃない・・。
責任は持てん・・。
だから、部屋に居れられるわけないだろ!
………………
と、五分前の俺は思っていた。
人間とは、どこかで自分の意を反してしまう生き物なかもしれない。
だから、環境問題が耐えないのだろう。
だから、リコール問題、不祥事問題が耐えないのだろう・・。
新城が、俺の部屋のお気に入りのテーブルの近くに足を崩して座っている。
「エイドリアンVSプレゼンターなんか観てたんですか・・。お茶か、なんか下さい」
そう、ビデオ屋の袋を手に取って言っている。
しかも、お茶を要求してやがる。
以上通りに、新城を部屋に入れてしまいました・・。
僕は、なんてことをしてしまったのでしょう・・。
17歳の女子高生を、自宅の部屋に入れてしまったのです。
言ったとおりに、僕は欲望に弱い人間だと、再実感しました。
僕は、彼女を襲ってしまうかも知れません・・。
台所へ向かい、彼女へお茶の用意をしながら、いつかは使おうと思っていた、とあるゴム製品をタンスから取り出して、ポケットに入れる。
これで、準備はオーケーだ・・。
テーブルに肘を乗せる彼女に、お茶を出す。
お茶を出しながらも、俺は、すでに戦闘態勢に入っている。
いつでも、出撃可能。
しかし、俺とて社会人。
とりあえず、なぜ、ここに来たかを聞かねばなりませぬ。
「おい、なんで、俺んちに来た・・」
今更ながらに、そう言った。
映画を流しっぱなしにしてたテレビを見ていた彼女が、こっちに顔を向けた。
その振り向いてきた表情が、少し色っぽい。
この女はどこか、そそられる・・。
欲望のメーターが、振り切れそうだ・・。
溢れ出そうとする欲望を押さえる俺に対し、彼女が口を開く。
「あと、数分したら、私のお父さんも来ますんで・・」
なるほど、そういうことか。
だから、俺の部屋に入ったのか。
その発想は、なかったわ。
………………
俺は、彼女を部屋に置き外に出た。
大きく深呼吸を、2、3回する。
そして、叫んだ。
「意味ワカンネェええええよーーーーーー!!!!!!!!!」
本当に、この女は、なにを考えている・・。
もう少ししたら、彼女の親父が部屋に来る・・。
そう思いながら、ポケットに入れていたゴム製品を俺は空高く投げ捨てた。
宙に舞うゴム製品に、少しロマンを感じる俺は死すべきであろうものなのか・・。
………………
つづく・・。