2話「ホラーとプリンと私」
………………
俺のインプレッサ破壊事件は、彼女の親御さんが無料で車を直してくれるのと、彼女の親御さんが、あっち系の恐い人たちと関係あるらしいので不問にした。
彼女は、退学を免れた。
まさに、親の七光り。
一応、翌日の放課後に、教室に彼女を残し指導することにした。
「もう二度と、あんなことするなよ」
ありふれたことを言う俺。
「はーい」
反省の色が、見えない新城。
女じゃなかったら、殴ってる場面だ。
そういや、昨日、彼女が言った・・。
「先生が好きなんです・・」
という言葉を思い出した。
あの言葉は、俺から車のキーを奪うために吐いた嘘であろう。
だが・・。
もしかして・・、その言葉は嘘でなかったら・・。
と、俺は邪推した。
一応、聞いてみるか・・。
そう判断して、すぐに俺は声を出す。
「おい・・」
ちょっと、緊張したせいか、俺の声が震えていた。
その声に、彼女は首を向ける。
「なんですか・・」
「えっと・・、だな・・。昨日・・、俺のこと・・」
好きって言ったよな・・。
と言おうとした瞬間・・。
「好きって言ったのは、嘘ですよ」
まだ言ってもいないのに、すかさず言われた。
俺は、鼻水を吹いた。
ああ、嘘だと解ってたさ。
しかし、「もしかして、俺のこと好きなんじゃ・・」と期待したさ。
するさ。
男だもん。
「ああ・・、そうだよね・・」
俺はガクガクしながら、彼女の間を置かない言葉に回答した。
体が意思と反して、震えまくってる。
「先生、足震えてますよ・・」
「寒いからね・・」
「今、6月ですよ・・」
と、的確に指摘され、俺は思わず・・。
「うああああ!!!!!」
泣き出して、この場から逃げた。
もう恥ずかしくて死にそうだ。
急な大声で、彼女が引いていた。
元はといえば、この女が悪いんだが・・。
とりあえず、小1時間、職員トイレで泣きじゃくった。
………………
夕方になり・・。
残業も終わり、一人暮らししてる自宅のアパートに帰宅して、この日の辛さを寝て忘れようかと思ったが、途中でコンビニでプリンを買ったので立ち直れた。
辛いときは、プリンだ。
これが、子供の頃からの俺式の立ち直り方だ。
甘い物が苦手な人と、虫歯の人には勧めないが。
夜も深まった午後の10時。
ビデオ屋から借りてきた映画、「エイドリアンVSプレゼンター」を、プリン食べながら観ていた。
やっぱり、ホラー映画は毛布に包まって、プリン食べながら観るに限る。
今日あった辛くて、恥ずかしいことも忘れさせてくれる。
本当に、プリンとホラー映画を作った人に感謝。
ピンポーン!
普段、集金でしか鳴る事のないイヤホーンが鳴った。
しかも、こんな遅くに。
こんな遅くに、集金に来たのか。
と思っていた。
それで、俺はパンツ姿で、ドアの方に向かう。
こんな遅くに、誰だ・・。
と、イラつきながら、ドアにある小さな覗き穴を覗いてみる。
目を近づけた瞬間。
俺は、驚いた。
なんと、ドアの向こうには・・。
俺の心を弄んだ新城蓮の姿が・・。
………………
続く