対岸にある星を追って
シリーズの、『崩壊のその先に全てが』のこの小説の上の小説を読んでからこれを読んだほうがを分かり易いと思います。
という事で、すみませんがタイトルのところの『崩壊のその先に全てが』をポチっとしてから、こっちに戻ってきてください。
よろしくお願いしますぅっ!!
Prologe
その人たちの愛情は、そこの見えないほどに深く、そして澄んだものだった。
その人たちが愛情を捧げてきたものは、ある一人の少女によって崩壊する。
その人たちは怒り、少女を恨み、いつの日かの復讐を誓った。
小さなツインテールのもう一つの愛情を捧げられたものは、その人たちのことを快く思ったいなかった。
その人たちは、それでもツインテールの小さなものに愛情を注ぎ続け、自分たちの気持ちを少しでも楽にしようとした。
だがある時、ツインテールにある事を告げられ、その人たちの少女に対する恨みは一層濃くなる。
その人たちは、少女に完全な復習を決めた・・・・・・・・・。
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「おはよぅ、まま」
まだ眠そうな目をして、リナは階段を降りた。
リナの短いツインテールが震える。
「リナ、おはよう」
明るい微笑を見せて、リナの母さんは挨拶を返す。
今日も学校か・・・・・、リナはため息をついて、ランドセルを持った。
「どうしたの、ため息なんかついて?」
「別に」
「まさか学校でイジメに合ったりはしてないでしょう?」
「私をイジめたりするやつは殺すよ」
リナはセラセラと笑ってお母さんに言う。
「そぅ・・・・・・、ならいいけど」
「なんでそこまでイジメのこと気にすんの?」
「なんとなくそんな気がしただけよ」
「ねぇちゃんの自殺と、関係あるんでしょ」
ピタッと、リナの母さんの動きが止まる。
だがそれも一瞬のことで、母さんはすぐに元に戻る。
「もぅ、何回もいってるでしょ」
「何を?」
「お姉ちゃんの自殺は友達関係のことで、何でそれがリナのイジメの原因になるのかってことよ」
「それがホントにただの友達関係ならね」
「友達関係にただのも何もないでしょ」
「ジャぁさきくけど、なんでねぇちゃんの学校が爆破されたすぐ後に引っ越したの?お金ないとか言っておいて」
「・・・・・、誰に、訊いたの?お姉ちゃんの学校が爆破されたって話」
「チコねぇちゃん」
「・・・・・・・・・・・・、そぅ・・・・・・・・・・・・・」
「私聞いたんだからね、学校壊したのがねぇちゃんだったって事」
リナはそういってそのツインテールを揺らしながら、サンドイッチを片手に家を出て行った。
その後には、怒りと恨みと戸惑いに満ちた目をして口元を歪ませながら笑っているリナの母さんがいた。
「チコちゃん、本当に、どうしようもない子ね」
そこに、二階から降りてきたぼさぼさの髪の一人の男が言う。
「悪い子はさ、やっぱ、お仕置きしないとね」
「あら、あなた。おはよう」
「おはよう、翔深」
二人はニコニコと笑い合った。
「チコちゃんは、悪い友達だったよ」
「友美が死んでから変だなと思って友美のPCの履歴を見たら、県民サイトなんてものがあるんですものね」
「あぁ、それで友美がそそのかされたってことが分かったよね」
「表面だけいい子ぶってるああいう子ってだいっ嫌い」
「リノや友美のように、素直で可愛い子が一番だよねぇ」
「えぇ」
そこで、二人の間にしばらくの沈黙が流れた。
「やっぱりチコちゃんには、キツイお仕置きが必要だね」
しばらくして、男のほうが口を開いた。
二人は笑いあったまま、リナの出て行った扉を見続けた。
まるで、その先の運命が見えているかのように。
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そのいち
どこまでも
「ミカコー、おっは」
「すず、おはよぅ」
「もぅ、その呼び方やめてっていったじゃん」
「だって、すずってば雀みたいに小さいんだもん」
リナは、友達と一緒に学校まで登校していた。
小学6年生のリナは、早く中学に上がりたくて仕方がなかった。
「ミカコさぁ、どうやったらそんなにでかくなれんの?」
「だからすずがチッサいだけだって」
「てゆうかさ、うちの学校で私のことすずって呼んでるの、あんただけだよね?」
「だからなに?す、ず」
「じゃぁ、私もミカコのことキノコって言っちゃおうかな」
「やめれー」
「やだもーん、キノコ」
「うぅ、でも塾ではすずって呼ばれてんでしょ」
「だまれぃっ」
「でも塾かぁ~、いやじゃない?」
「べっつに。行きたい中学あるからがんばれるもん」
「え?初耳。どこ?どこの中学行くの?」
「琴丞我中」
「マヂで?あっこめちゃ頭いいってゆうじゃんか」
「だからぁ?」
「もう会えなくなっちゃうかもよ」
「いいじゃんか、別に」
「おぃおぃ」
「冗談だって。ほら、私たち家近いからさ」
「あぁ、じゃあ会えるかも」
「でもなんであんなとこに行きたいの?」
「うぅん、尊敬する先輩がいるから、かな」
「誰々??」
「キノコはさ、知らないと思うけどチハルって先輩」
「うちの小学のOB?」
「違うよ。庄月小のOB」
「あぁ、そっか、すず越してきたんだったもんね」
「うん。いまさらかよ」
「うん。いまさらー」
「もぉう」
「でもさ、すずみたいなんが追っかけるその先輩ってそんなにすごいのぉ?」
「うぅん。その先輩ってゆうよりもさ、その先輩の友達がすごいの」
「?じゃぁなんでそっち追いかけないの??」
「その先輩庄月中だから・・・・・・」
「あ・・・、ごめん」
「いいよ。別に」
「でもすずの追いかける先輩かー。私も一回あってみたいな。男?女??」
「もぅ、男追っかけてどぅするってわけぇ?」
「それもそっか。すず、そういうの全然だもんね」
「そういうこといわなーい」
「でさ、その先輩の名前って?」
「チコっていう先輩だよ。すっごく綺麗でさ。私がツインテールなのもその先輩の真似。でも・・・・・・、あの先輩腰よりまで髪の毛伸ばしてるからさ、私と見た目が決定的にちゃうんよな」
「すずも伸ばしちゃえば?」
「うぅん、でもなぁ」
「あっ、そっか。すずはロング似合わないもんねー」
「うるさいっ!」
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学校の中で、リナは一人放心する。
授業はつまんなかったので、寝ようかとも思ったが、なぜか上手い具合に眠気が差してこない。
そこで、ある一人の男のこのことについて考える。
リナが琴丞我中に行きたいもう一つの理由。
それは、その男の子が、琴丞中の2年生だからだ。
錠与君・・・・・・。
放心しながら、その名前を心の中でつぶやき、そっと、蓋をした。
その錠与に、すでに片思いの相手がいると知らずに、彼女の愛は進んでいく。
気が付いたら後戻りも出来ないほどに深く、そして澄んで濃いものになっていた。
その濃さが、ある時、ある崩壊を生み出すこととなる。
だが、それはずっと先、彼女が中学に上がったときの話であった・・・・・・。
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そのに
深く澄んで
「ただまー」
「リナ、おかえりー」
家に帰って、彼女はある一つの違和感に襲われる。
どこも変わった事はない。
でも確かに、どこか、なにか違和感があるのだ。
「リナ、これからチコちゃんの病院にお見舞いに行くけど、リナは来る?」
「行く行くッ!」
「じゃぁ、服を着替えてきて頂戴」
「うんっ」
違和感がさっきよりも強くなった。
母さんが一言しゃべるたびに、チコの中の違和感がドンドン膨らんでいく。
リナは自分の部屋に戻ると、スカートを脱いでジーンズをはき、黒のパーカーを羽織ってきて、またリビングに降りた。
「リナは・・・・・・、チコちゃんのことどう思っているの?」
揺れる車の中で、リナの母さんが唐突にそう訊いてきた。
「どうって?」
「だから、どんな人と思っているのかって訊いてるのよ」
「そんなのままだって知ってるでしょ!とーーってもソンケーしてる人だよ」
「チコちゃんを?」
「何でそんなこと訊くの??」
「これからおみまいにいくからさ」
「私出来る事なら庄月中に行きたいぐらいだもん」
リナがそういった瞬間、母親の目に殺意がこもる。
車を運転している母の顔は、リナからは見えなかったが、車の中の空気が澱んだことに気が付いて、リナは口を閉じる。
「どうして?どうしてチコちゃんなんかがいいのよ・・・・・・?」
「まま?」
急に口調が変わった母親を心配して、リナは声をかける。
「なんでもないわ」
「ならいいけどぉ・・・・・・」
「でも、本当にどうしてチコちゃんをそんなに尊敬しているのよ?」
「だってさ、ほら、チコねぇ可愛いしさ、綺麗だしさ、賢いしさ、金持ちだしさ、どことなくミステリアスな雰囲気があるし。それに、ケッコー優しいし。チコねぇは人間の鑑だよ」
「人間の鑑・・・・・・?」
「そうそう。チコねぇ以上はきっといないって」
「お姉ちゃんは?」
「ねぇちゃんも確かにすごかったけどさ、チコねぇにはかなわないよ」
「かなわなかったね。確かにそうかもしれないわ」
「ままがねぇちゃんと私以外を誉めるなんてめずらしいじゃんか」
「あら、ままだって認めるときにはきちんと認めるのよ」
「ままがねぇ」
「何?その目?」
「疑いの目だよー」
「あらら、一体何を疑っているっていうのかしら」
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二人を乗せた車は、互いの言葉の尾を引きながら病院に向かって走ってゆく。
その先に待っているある二人の崩壊の運命を知るものは、誰一人として、いなかった。
チコでさえも、今までいろいろなことを見て、考え、予測してきたチコでさえも、このときのことは、分からなかった・・・・・・。
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「その方の病室なら1527室です」
看護婦の言葉を聞いて、リナの母さんは歩き出した。
病室への行き方を説明しようと引き止めている看護婦の言葉を無視して、母さんはエレベーターのボタンを押した。
リナはその母さんに連れられて、早足で歩いていた。
「ハァハァ・・・・・・。まま、もうちょっとゆっくり歩くことは出来ないわけ?」
やっとエレベーターの中に入って息をついたリナは母さんにそうたずねる。
「なるべく急いだほうがいいのよ」
「なんでぇ?」
「なんででも、よ」
そう言う母さんの手には一輪の花が握られていた。
椿だ。
リナは小学生なので、まだそんなルールは知らなかったが、その母さんの行動は、普通ではなかった。
かあさんは、握っていた椿の花を、はさみで、根元から切りおとした。
パサッと乾いた音を立てて椿が花びらをまいて床に落ちた。
ハラハラと散る花びらも全て落ちたことを確認すると、母さんは、その花を拾い集めた。
母さんが全ての花びらをひろい終わるとともに、エレベーターが目的の階についたことを、チンッ、と快く響く音で知らせてくれた。
病室のドアを開ける。
そこには、いつもと変わらない容姿の、チコねぇが横たわっていた。
「ちーこーねーぇ」
リナは、そう言うとチコのベットに飛びつこうとしたが、母さんに止められた。
リナの母さんはチコの耳元で、他には聞こえないようにささやいた。
「分かってるんだからねチコちゃん。あなたがあのサイトの管理者だってことは」
リナは母がなんていったのかは分からなかったが、チコの目が警戒に細められたのは見て取れた。
「翔灯って言えば分かるかしら」
リナの目の前で、それは起こった。
チコがベットから飛び起きて、いままでその細い首があったところに母さんの腕が食い込む。
苦痛に顔を歪ませてたっているチコねぇにむかって、母さんが向き直り、走ると、その首を締め上げた。
更に顔を歪ませるチコねぇに、母さんが狂悪な笑みを浮かべる。
ガラガラガラガララッ!!
ちょうどそこに、病室のドアが開いた。
母が驚きと警戒の目をしてそちらを見る。
そしてリナも、釣られてそちらを見た。
そこには、リナにとても見慣れた一つの顔があった。
「チハルねぇちゃん・・・・・・」
リナがつぶやいた。
チハルは、荒れたベットと、チコの首を締め上げている女の顔を見届けると、薄く口元を歪ませていった。
「チコに、何したの?」
おとなしく、なおかつ、それでいて背筋の凍るような声だった。
「殺そうとしてるの?」
リナの背に冷や汗がつたる。
次の瞬間
「死ね」
チハルねぇちゃんの口から発せられた二文字が、病室内の温度を一気に氷点下まで下げた。
チハルねぇがそばにあった霧吹きの蓋を開けて母さんに向かって投げつけた。
霧吹きの中に入っていた液体が、母さんに降りかかる。
においで、これが何かが分かった。
消毒用アルコールだ。
いつの間にかチハルねぇの手の中にあったライターに火をつけ、それをチハルねぇは、母さんに向かって投げつけた。
ボワッ
悲鳴を上げて、母さんが倒れる。
その悲鳴を聞きつけて、そばにいた看護婦さんがこの病室内を確認して、ダッシュで走り去った。
十数秒後、医師が来て状況を確認、すでに火は消えている母さんを抱き上げ、他の病室まで運んでいった。
「チハルねぇちゃん」
「リナ、なぁに?」
至って普通の顔でチハルはリナの声に応じた。
「ままのせいで、ねぇちゃんがケーサツにつかまったりしない?」
「その前にあの女がつかまッだろな」
リナの問いに、背後から返事が返ってくる。
「チコねぇ・・・・・・、大丈夫だった?」
「大丈夫なわけあるか、あぁ、脇腹がくそいてぇ」
「チーちゃん、でも死ななくて良かったね」
「あぁ、チルル、あんたのおかげだよ」
会話を聞いていて、リナは足がすくみ、今すぐにでもこの場から逃げ出したい気持ちになった。
「あんのババァ、告訴してやっからな」
「うん、それがいいよ。あとは権力に任せてっと」
「チルル、ケータイ」
「はいはい」
数分後、警察が来て火傷の応急処理が終わったリナの母さんは、警察に連れて行かれた。
チハルは、友達を守るために仕方がないことだったと警察を言いくるめて、自分は害を逃れた。
「リナ、ああいうオトナだけには、絶対になっちゃいけねぇよ」
チコねぇの言葉をきき、リナは、その場に崩れ落ちた・・・・・・。
このシリーズも6つ目となりました。面白かったですか?
なら良しとしましょうwww