表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使に喰われたオーディナリー  作者: 猫飯 みけ
第5章 過去紀行録 Z
66/151

Angel 63 月光奪還編Ⅴ

 入口に配備された警備は2人。気づかれないように後ろから意識を奪い、電源の切れた自動ドアをこじ開ける。部隊はそれぞれ目的の場所へと一目散に駆けていく。直人たち1班は、ひたすら非常階段をかけ登り、6階へと歩みを進めていた。道中に出てきたやからは、直人が認識するとほぼ同時に絶命している。


 先駆けを務めているのは氷月と花雨かりの双子だ。コードネームの通り、それぞれが氷・水系統のmagicaを有している。鮮やかに首を跳ねていく様は、15歳という年齢とあまりに乖離していた。


『この次の角で停止。マーダーはmagicaを使って索敵して』


 警報装置のアラートに、階下から聞こえる銃声とパチパチと何かが燃える音。その喧騒の中、インカムからヘリーネの声が聞こえた。ここは5階西階段を上がったところ。このまま階段で6階まで駆け上がる方法もあるが、1度停止する。一行は5階の廊下を経由し、中央階段から6階まで行くルートを選択した。


「了解」


 直人は壁に背中を付け内界解放リベラシオンを使用する。騒音が耳に張り付くが、その中からなんとかして足音や小さな物音を探る。


「第8研究室前と中にそれぞれ2人、保管庫前に1人、中央階段付近に1人。計6人だ」

『よし! 予定通り西階段側に戦力を集めることに成功している。このまま中央階段を突き進むよ』


 へリーネは感覚共有を使い、リーダーの状況をリアルタイムで把握していた。magicaにより数秒早く戦況をコントロールしていることで、的確に素早く指示を出すことが出来る。戦いの中でこの数秒は重要だ。


「氷月、シューター」

「「了解」」


 リーダーに名前を呼ばれた2人は一目散に廊下を駆け抜け、交戦を始めた。直人が索敵した敵が凄まじい速度で絶命していくのが聞こえる。


 リーダーは余裕そうにスタスタと中央階段に向かって歩いていく。直人たちはそれに続いた。前を歩く彼は、magicaを使うことはない。氷月やシューターを信頼し、これからの交戦に向けて力を温存している。

 

「行くぞ」


 階段に片足を交互に乗せ、目標ターゲットがいる6階にたどり着いた。——今までと変わらない、ただのフロアのはず。それだと言うのに息苦しさが直人を襲った。焦っている? 緊張している? 


 (違う——これは……何か)


 恐怖でもない。押しつぶされそうなほどの緊迫感でもない。美月を救うことに対するプレッシャーとも違う。だが、確かにどこかで感じたことのある感覚。そうだ、これは負の感情じゃない。


 (俺は……楽しんでいる。これは高揚感だ)


 気づかないうちに生まれてしまった戦いに対する興奮感。精神的な自己防衛でうまれた異常な感性を直人は感じていた。


 この階層には美月が、そして恐らくフメテノやその付き人が待機している。人として最強格であろうアドナイのトップたち。そんな奴らと命のやり取りをする。そんな地獄が楽しみで仕方がない。今の自分を試してみたい。


「予定通り適性体の確保に行くぞ」


 氷月とシューターが合流し、再び動き出す。階下では順調に施設の制圧が進んでいるようだった。イディたちは上手く動けているのだろうか。

 

「そこの連中、ちょいと待ちや」


 唐突に聞こえる女性の声。とっさに周囲を確認するが見当たらず、気配すら感じ取れない。インカムから届くはずのヘリーネの声も聞こえてこない。彼女も困惑しているのだろうか。


「あんたら、フメテノのおっさんとこ行くんか? それとも適性体んとこか? どっちにしろ、こっから先は通す訳にはいかんなぁ」

「残念、その両方だよ」


 フロア全体に響く声に、リーダーが返答をする。彼は炎神奏古プロメテウスを発動し、めらめら燃える炎をまとっていた。何か感じ取っているようで、奥の部屋の入り口に炎の剣を向けている。


「……へぇ、驚いた。あんた、あたしが見えるんか? それともただの当てずっぽうか……どちらにしろやっかいな輩やなぁ。こんだけ気配消しとっても位置がばれるなら意味ない」

「なら姿を現しても良いんじゃないか?」

「ははは! あんた頭はきれへんみたいやな。いやただの冗談か……いやぁ〜すまんすまん、あたしは別にあんたを倒す必要はない。あたしは付き人として、あんたらを足止めするだけでええんや」

 

 言葉の通り、声の主の姿どころか声の聞こえる方向すら絞り切れない。リーダーだけが位置を大まかに感知しているようだ。


『今、廊下突き当り』


 感覚を共有しているヘリーネもまた一緒であった。おもむろに廊下突き当りを見るが、何も視界には入ってこない。リーダーには何が見えているのだろうか。


「オッケーオッケー。ちゃんと位置がばれとるみたいやな。これならmagicaを使っている意味がないやんな。ほな、もっと君たちの意識からあたしを消せばいい。簡単な話やな」

「意識から消す……だ?」

「そう、意識から消すんや。こうやってな」


 直人は何も感じない。だが、リーダーだけが慌てたように周囲を見渡している。いや、そもそもリーダーは《《何を探しているのだろう》》。不自然なまでに何かを警戒している。


「——どこへ行った?」

「またまた驚いた……ここまでしても、あんたはあたしの存在覚えていれるんやな……」


 リーダーは急に「——どこへ行った?」といった。何の話だろうか。今は早く美月のところへ向かうべきだろう。こんなところで時間を浪費している場合ではない。


「リーダー、突っ立てないで早くいかないとまずいぞ、時間的に」

「何を言っている……!? この声が聞こえないのか!」


 リーダーは驚愕の表情を直人に見せた。


「そりゃあ聞こえへんよ。ふつーはああやって声も聞こえん、姿も見えん、思い出すことも出来んようになる。今もあたしと会話出来てるあんたが異常なんや」

「――それがお前のmagicaか」

「そうや。あたしがフメテノのおっさんの付き人、リンファや。覚えてくれると嬉しいなぁ……まぁ、この戦いが終わる頃には覚えてられへんと思うけどな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ