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天使に喰われたオーディナリー  作者: 猫飯 みけ
第5章 過去紀行録 Z
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Angel 61 月光奪還編Ⅲ

炎神奏古プロメテウスを捻じ曲げた、か。思い上がりと言ったことを訂正しよう。――だがその力はなんだ?」

「おいおい、炎神奏古プロメテウスの名を使っていても、頭の方は随分と知識が足らねぇな。もう推測くらいつくだろ?」


 勝手に手が、口が動く。と言うよりも自分に身体を動かす権限が無い。


(何が、どうなってる……)


 自分自身を俯瞰し、第三者の様に見つめている。幽体離脱のような……気持ち悪い感覚だ。


(これがフォルトゥーナなのか? これは一体……それにあの力は)

「ちっとは黙っとけ。戦いに集中できねぇだろ?」


 リーダーは不審に思ったようで、懐疑的な視線を送ってくる。はたから見れば声の大きい独り言に見えただろう。


「何の話だ?」

「悪ぃな。ちょっと自分との対話に忙しくてよ」


 直人の考えたことはフォルトゥーナに届いているようだった。


(どうしてお前が俺になっている!?)

「あ? そもそも力を貸してやるんだから、体借りるくらいどうって事ないだろ。器のちいせぇ男だな!」

(おい!)


 フォルトゥーナは背伸びをし、軽く肩を回す。


「待たせたな」

「奇々怪々な独り言はもう良いのか?」

「おうよ。何時いつでもかかってこい」

「そうか……死ぬなよ?」


 リーダーは周囲に浮いている剣を、再び流動的な炎に戻す。それは轟轟とした音を響かせながら、右手に収束していく。そし巨大な炎がたった一つの剣となり、手のひらに収まった。今まであった剣とは生成にかかった炎の量が明らかに違う。

 加えて手首と足首にそれぞれ火の輪が揺蕩たゆたっている。空気の振動で、左右にチラチラ揺れていた。


炎神奏古プロメテウス……瞋恚しんいほむら


 等身に見合った大きさの片手剣は、鮮やかに燃えながら圧迫感を出している。


「瞋恚って……それは誰に対する怒りだ? 俺に向けるもんじゃあねぇよな、プロメテウス。まぁ、フォルトゥーナって言っても分かんねぇか。性別も口調も変わってるし」

 

 剣先は真っ直ぐにフォルトゥーナに向いている。


「でもまぁこうやって相対するのも面白ぇ。どっちの方が格が高いか競ってみ」


 フォルトゥーナがぼつぼつ話している隙に、リーダーは誰も気づかない速度で剣を振り下ろしていた。振りぬくだけで生まれた風圧、周囲はその勢いだけで体ごと引いてしまう。


「っと、不意打ちってのは人間だと“卑怯”って言うんじゃないか?」


 剣は不思議と空中で止まっており、フォルトゥーナの眼前でカタカタ音を出しながら震えている。リーダーは軽く舌打ちをすると、再び目の前から消えた。目視で追えない速度で飛行しているのだろう。風が短い髪を揺らしてくる。


 フォルトゥーナは余裕そうに微笑みながら、ポケットに手を入れながら突っ立っている。


「今のお前じゃあ俺を超えられないが、かと言って俺も攻撃する方法がない」

「――何が言いたい?」

「俺の勝ちだ。お前の今の形態は長く維持できる代物じゃないだろ? お前が力尽きて動けなくなる方が先だ」

「そうか」


 リーダーはそう返答すると、構えた状態から剣を降ろす。


「どうやって攻撃を防いだのかは分からない。けど、力尽きる前に一度試させてもらおうか。これは過去一度だって防がれたことは無い」


 リーダーの左手に、どこからともなく炎が集まりだした。先程よりは小型の剣が生成される。


「随分と単純だな。一振りでダメなら二振りか?」

「あぁ。シンプル・イズ・ベストって言葉があるだろ?」


 前傾姿勢から解き放たれた肉体は、フォルトゥーナに向かって迫ってくる。先程と同じように切りつけられる手前で、剣は静止する。剣が二振りになった所で変わらなかった。変わったところと言えばフォルトゥーナの表情である。


 随分と苦しそうだ。顔を歪ませ、深く食いしばっている。フォルトゥーナの感情が、考えが直人の方にまで流れ込んできた。


 ――限界。


 連続で切りつけ続ける刃を、全て受止めるなんてことは不可能だ。フォルトゥーナの能力は分からないが、シンプルな結界などではなさそうだった。

 

 と言うのも、剣は物体に当たって止まっていると言うより、空中のなにかに動きそのものを止められているに近く見えた。それがフォルトゥーナの能力なのだろうか?


「どっちが先にぶっ倒れるか耐久戦をしようってか? おもしれぇ!」


 リーダーのmagicaの限界が先か、フォルトゥーナが防げなくなるのが先か……

 数えることも出来ないほどのやり取り。お互いがお互いの限界を試すように、速度も出力も上がっていく。周りの空気が振動し、建物自体が揺れているような気もした。


 先に膝を着いたのは――フォルトゥーナだった。


 肩で息をし、magicaとして出力することすら出来なくなる。直人は眩しい光と、数センチ先から感じる熱量に目を覚ました。


「俺の勝ちだね」


 リーダーはいつものような口調に戻っていた。こちらに向けられた炎の刃を解き、荒い呼吸を整えている。


「君のその力は一体なんなんだ? 見たことも聞いたことも無い」

「俺にも分からないです……幸運の力だとは聞いていますが」

「幸運ね〜……運だけで剣が止められるの? 一体どんな確率だよ」

「俺もそう思います」


 片膝を付いている直人に、手が差し伸べられた。リーダーの手を取り立ち上がる。


「何はともあれ、味方が強くなっているのは良い事だ。これで君の持ってきた案件の成功確率もより上がっただろう」

「だといいんですけどね」

「マーダー、君は俺と一緒に最前線に来てもらうよ。それが希望だったんだろう?」

「――はい」


 奥の階段から、カタカタと歩く音が聞こえる。そちらに目をやると、参謀とへリーネが紙を持って降りてくるところだった。


「リーダー、ざっくりだけど作戦決まったよ」

「よし、総員に集合をかけようか。大仕事だよ!」


 その場にいた全員が威勢よく返事をする。その日の夜に、プロメテウス構成員42名が集結した。


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