Angel 33 力の兆し
あれから目を覚ましたのは3日後だった。耳に届くのは心電図らしき機械から聞こえる音だけ。そこにはコーマンの姿はなかった。一定間隔で聞こえてくる電子音、まるで病室のようにも思えた。
(……気を失っていたのか)
うまく力が入らず、上体を起こすことが出来ない。管の繋がった左腕を持ち上げようとするもプルプルと震え、思うように動かすことすらままならなかった。そして、右目から伝わる異様な熱。眼球が溶けてしまう錯覚を覚えるほどに高温だ。
(どれほど眠っていた? 明らかに体力が落ちてる……参ったな)
『何日間眠ってたか? 答えは3日だ』
声がした。どこかでモニタリングでもしているのか、部屋の中のスピーカーを探す。だが、そんなものは見つからない。いや、俺は言葉になんかしていない。これは思考を読まれている……!?
『いくら探したって、お前の欲しいものなんて見つかりはしないぞ? 怖いのか? この俺が』
違う。これは読まれてる訳じゃない! この声は……俺の中にいる誰かだ。自分の身体がスピーカーになったように音が響いている。これはどこからする声なんだ? 精神疾患からくる幻聴……? コーマンの質の悪いいたずら……?
『何気づかないふりをしているんだ? 分かっているんだろ? もう気づいちまったんだろう? この声はどこから聞こえているのか。この声の正体は何なのか……なぁ?』
煩い、うるさい、五月蝿い!
声がするたび、頭が割れそうなほどに痛くなる。拒絶反応……その言葉が脳裏をよぎる。
『何とか言ったらどうなんだ。なぁ……神崎直人?』
直人は、とっさに自らの右目に人差し指をかけた。動かなかったはずの腕が、勝手に動き、そのまま瞳を抉りとるほどの強さで皮膚に爪を立てていく。痛みよりも恐怖が脳を犯していた。一刻も早くこの声の元凶を取り除かなければ、自分が壊れてしまう! いまはそうとしか考えられない。
「やめたまえ!」
急に腕を掴まれた。いつから部屋にいたのか、コーマンは青ざめた様子でしがみついている。
「落ち着くんだ! 気をしっかりもて、自分を認識しろ!」
息を切らしていた直人だったが、次第に呼吸が戻っていく。気づけば体中から汗が噴き出ていた。何かに支配されかかっていたのか……? 震える口から、必死に言葉をひねり出す。
「声が……声が聞こえたんです……」
「声?」
あの忌々しくも、狂いそうな声は今は聞こえない。あいつの言う通り、どこから聞こえてきたのかも分かっている。
「右目から、語りかけてきたんです」
そう……あの声は瞳、magicaから聞こえてきたのだ。
「新しいmagicaが、俺を喰いにきた……」
第3章 過去紀行録 E ー終ー
これにて第三章が終わりになります。次章からまた時間は現在に戻ります。過去編の続きはまたの機会に……ブックマーク、感想などいただけると励みになります。ぜひともお願いします……




