もう一人の自分
「あー今日も疲れた」
今日も一人駅のホームでつぶやく。
自分で言うのも何なんだけど、俺は毎日充実した生活を送っている。
正直楽しい、本当に楽しい日々を過ごしている。疲れたとは言ったけどこんな日々が毎日続けばいいのにと感じる。
帰る時間はいつも通り6時ぐらいになるだろうか
帰ったら母親が出迎えてくれて、用意してくれたお風呂に入り、上がったころに丁度出来上がっている夕飯を帰ってきた父親含めた3人で談笑しながら食べる。
本当、家でも学校でも充実している。こういうのを幸せというのかもしれない。
そんな充実感に浸っていると普段自分一人であるはずの駅に見知らぬ人影が見えた。
普段俺以外いないんだけど誰だろう
普段一人で過ごす駅に何故か人がいることに少し興味がわいてきた。
話しかけてみようか、あちらは前髪が長く顔が見えない。きっと暗い性格なのだろう。
こちらから話しかけてこの圧倒的なカリスマ性で虜にしてやろうか。
まあ半分は冗談だけれど。
とりあえず話しかけてみよう。いつも一人寂しかったから電車を待つ間暇をつぶせるのであればなんでもいい。
「こんにちは、いつもこの時間帯はあんまり人がいないから珍しくって声をかけてしまいました、この駅を使うのは初めてなんですか?」
いい感じに声をかけられたのではないだろうか。このままこれからの話し相手としたいところ...
「えっと僕は...その...初めてじゃないです...」
彼は顔をあげながら答えた。前髪が分かれ顔が徐々に見えてくる。
その瞬間自分の目を疑った。訳が分からなくなった。すべてをそこにおいて逃げ出したくなった。
足がすくんで動けない、手に力が入らない、バッグが手からすり抜け落ちる。
なぜなら、彼の前髪の隙間から見えたものは、まったく同じ、似ているとかではない、目、鼻、口、眉毛、まつげ、耳、すべての位置が全く同じ。そう俺と同じのいわゆる
ドッペルゲンガーが目の前にいたからだ。
新作作ってみました