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【本編完結】僕の彼女は聖女様  作者: 泉川葉月
第一章 僕の彼女
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第七話

「なにっ?聖女様らしき人物を見つけたじゃと?!」


 王が興奮して叫ぶ。


「はい。辺境の村に住んでいるとの事ですが…」

「辺境伯領の更に端にある村か…ここ(王都)から最も離れた地じゃな。見つけるのに難儀した訳じゃ。して、聖女様は今どこに?」


 司教は落胆の声色を隠せずに発言する。


「それが…どうやら保護に失敗してしまった様子でして。辺境村に帰られたかと…」

「なんじゃと?!すぐに辺境村に使者を出せ!王の勅命じゃ!!」


 王の書簡を持った小隊が、辺境の村に向かって出発した。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥



 マリアンヌの騎士(ナイト)は、鳥たちの他に新しく加わった虎、ライオン、熊にサイ、象、ワニ、ハイエナなどの大型の動物たちになった。


 辺境の長閑な村は、野生の王国に様変わりした。


「マリアンヌー!象に乗らしてー」

「虎さん撫でても良いかな?」


 村のみんなに警戒されるかと思いながら、ピューマの背に乗り帰還したけれど…特に驚かれる事はなかった。むしろ羨望の眼差しを受けた。


 動物たちは村の家畜を襲う事もなく、この前生まれたミノタウルスとも打ち解けた様子。みんなで交代して村の外を見回っている。

 猿は畑の収穫を手伝い、ラクダは森から薪を運ぶ荷物持ち、熊は川で鮭を取ったり。村人から重宝がられ、すっかり村に馴染んでいるみたいだ。


「イテッ!」

「ヴァン!大丈夫?」

「空から何か落ちて来たみたい…」


 見上げると、空ではイーグルが旋回していた。僕は落ちて来たそれを拾い上げた。


「これは…またイーグルの催促かな?」


 イーグルは測定所での騒動の後、マリアンヌの元を離れ旅に出たらしい。たまに村に戻って来ては、マリアンヌには綺麗な貝殻や珍しい花をお土産に置いて行く。


「もうあの子ったら!言うこと聞かなくていいのよ?」

「うーん…でもイーグルの事だから、何か必要があってなんじゃないかな?」


 僕には、謎の石やどこから持ってきたのか分からない古びた本を落として行ったり…態度は相変わらず素っ気ないけれど、イーグルのくれるお土産のおかげで僕の趣味は益々充実するようになった。


「だけど…これ大変じゃない?本当にいいの?」

「前にも作った事があるから大丈夫だよ」


 イーグルが僕に本を落として行く時は、僕に何かを作って欲しい時で——その大半は、先々でマリアンヌが必要になる物が多い。

 謎の多いイーグルだけど、離れていてもマリアンヌを慕ってくれているみたいだ。時折こうして元気な姿を見せてくれるので、僕もマリアンヌもとても安心している。


「いつもありがとう、ヴァン!それからイーグルも!!私、みんなのこと大好きよ!!」


 マリアンヌがそう言うと、マリアンヌから光が弾けた。金色の美しい光のヴェールが村を覆う。それと同時に村の外から、ゴゴゴゴゴと地鳴りのような音が聞こえてきた。耳を澄ますと、水が流れるような音も響いている。


 …わぁぁぁ…!な……これは…

 …突然…堀が…ワニ…どうな……

 …助……ミノタウ……襲わ……


 村の外から微かに人の声が聞こえて来る。しかし、村の誰もそれを気にしない。村を訪れる郵便配達や行商人だったら、動物たちは大人しくしているからだ。


「外が騒がしいなぁ」

「ここらも物騒になったもんだねぇ」

「でも、マリアンヌと動物たちがいれば安心だぁ」

「ありがたいねぇ」

「あぁ!ありがたいなぁ」

「ありがてぇ、ありがてぇ…」


 村人たちがマリアンヌと動物たちにそっと手を合わせる。


「「「「「ありがたや〜」」」」」


 村人たちの声が木霊した。



 …聖女様……迎え……失敗…

 ……王……司教……お伝…



 村は今日も平穏な一日だ。



次回よりマリアンヌ視点の第二章に入ります。


数ある作品の中からお読みいただき、ありがとうございました。


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