第六話
色々あってようやく辿り着いた魔力測定部屋の中には、数人の神官と立派な台座に乗った水晶玉が鎮座していた。王家が秘匿している秘密の製法で作られた、黄金に輝く特別な水晶玉だ。
「初めて見たよ…すごく綺麗だね」
「…すごく高そう」
マリアンヌは、鵜による魚乱射事件が尾を引いているみたいだ。いつもの溌剌とした元気がない。
「鳥たち連れて来なくて、本当に良かったわ」
「ダチョウが好きそうな大きさだもんね…」
「温めだしそうで怖いわ」
「…これ以上の騒ぎは起こしたくないなぁ」
「もう弁償するものを増やしたくない…」
僕たちがヒソヒソ喋っていると、不機嫌そうな神官がゴホンと咳払いをした。
「水晶に両手をかざしなさい。強い魔力がある者程、水晶が明るく光ります」
神官に促されたマリアンヌが、恐る恐る水晶玉に手をかざす。
すると水晶玉が光り輝き、部屋を白く染め上げ——
ピキピキピキ…
バリン!
水晶玉が真っ二つに割れてしまった。
「水晶が割れる程の高魔力?!」
「せ、聖女様だー!!」
「司教様に報告せねば!!!」
興奮した神官たちが騒ぎ出す。
「どどどどどどどうしよう…」
水晶玉を壊してしまったショックで、マリアンヌは狼狽えていた。神官たちの慌てぶりに気づいていない様子だ。
「マリアンヌ様!すぐに教会へ参りましょう!」
神官に腕を掴まれたマリアンヌが驚きの声を上げる。
「ひぇっ!ここここれはわざとじゃないんです!」
マリアンヌが怯えている…これはマズい。
「神官様、マリアンヌが驚いています!どうか落ち着いてください!!」
神官たちは気づいていないが、マリアンヌの足元からは、床を突き破りウネウネと蠢く蔦が生えて来ている。
「お前こそ邪魔をするな!!」
神官の一人に振り払われ、僕は尻餅を付いてしまった。
「いてて…」
「ちょっと!ヴァンに何するの!!」
マリアンヌがそう叫んだ時——
…ドドド…ドドドドド……
遠くから微かに地鳴りの様な音が微かにする。
「キャー」
「うわー!何だー!!」
窓の外から、異様な町の喧騒が聞こえる。
「魔物…?!」
「いや!違う!!アレは…!!」
バキバキバキバキ!
ガシャーン!!
「ガォォォォォォ!!」
「グォォォォ」
「グルルルル…」
ライオンと熊と虎が現れた。
マリアンヌの間に立ちはだかり、神官たちを威嚇している。
「イーグルの用事って、この事だったのか…」
全壊した測定場から、悠々と空を舞うイーグルが見えた。
「マリアンヌを守るために連れて来てくれたんだね」
「イーグル!ありがとう!!」
マリアンヌが大きく手を振ると、イーグルはどこかへ飛び去って行った。
「神官様たち、寝ちゃったみたいだし…早く帰りましょ?」
神官たちは全員伸びていた。
彼らの周りには、鮮やかな色のキノコがたくさん生えている。おそらく睡眠作用のある物だろう。
「床に刺さったお魚、隠蔽できて良かったわ」
そういう問題じゃないと思う。
数ある作品の中からお読みいただき、ありがとうございました。
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