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【本編完結】僕の彼女は聖女様  作者: 泉川葉月
第一章 僕の彼女
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第五話

 イーグル不在で訪れた隣町。今日はマリアンヌの魔力測定の日だ。


「ヴァンが作ってくれたサンドイッチ、すっごく美味しかったわ!」

「サンドイッチ用に焼いたパンが上手く出来て良かったよ」


 隣町までは、ゆっくり歩いて数時間の距離。村からほとんど出る事のない僕たちにとっては、ちょっとしたピクニックデート気分だ。

 と言っても二人きりではないのだけれど。


 僕とマリアンヌの周りには、ゾロゾロと着いてくる鳥の大集団。イーグルが残していった護衛の鳥たちだ。クジャクは大きな羽根を広げて周りを威嚇しながら練り歩き、ペリカンは大きな袋を持つ嘴から、水鉄砲のように水を撒き散らしている。フラミンゴたちは一糸乱れぬ動きで首を動かし、カラフルなオウムたちが「コンニチハ!コンニチハ!」と連呼しながら忙しなく飛び回っている。


「お母さん、鳥さんがいっぱいだよー」

「大道芸のパレードかしら?」


 ダチョウは隙あらば僕の頭を温めようとのしかかって来る。どうやら丸っこい物を見ると、温めたくなる衝動に駆られるらしい。


「人が鳥に襲われているぞ!!」


 …ちょっとした騒ぎになった。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥



 隣町の外れにできた測定所は閑散としていた。町といっても、ここは王都からずっと離れた辺境の地。商店が数軒あるだけの長閑な町だ。王都から派遣されて来たのだろう——退屈そうな神官が測定に来る人の受付をしていた。


「辺境の村から来ました、マリアンヌです」

「えーっと辺境村のマリアンヌ、マリアンヌっと…ここより辺境のド田舎村からわざわざご苦労なこって…」


 測定参加者の名簿を見ながらマリアンヌの名前を探す受付担当の神官は、感じの悪い人だった。


「辺境の村といやぁ、昔、虫まみれの気持ち悪いガキが…」


 神官がそう言いかけた時、ブーンという異音がした。


「うっうっうっ…うぎゃあああああ!」


 どこからともなく現れた蜂の大群に、神官は追いかけ回されながらいなくなってしまった。少し異臭がした気がする。


「何だったのかしら?」

「よく分からないけど、受付は済んだみたいだし…中に入ろっか」


 僕たちは無人になってしまった受付を通り過ぎて測定場の中に入ると、大きな声に呼び止められた。


「君たち、ダメだよ!測定所内はペットの持ち込み禁止!!」


 いなくなってしまった神官の代わりに、慌ててやって来た別の神官に制止されてしまった。

 すると——


 ズガガガガガ!


 「ペットじゃない!」と言わんばかりに怒った鵜たちが、神官に向かって一斉に口から魚を吐き出した。


「ひっ…」


 自身の足の数センチ先——何匹もの魚が突き刺さった床を見た神官は、そのまま白目を剥いて気絶をしてしまった。


「…どうする?」

「…どうしよう」


 マリアンヌと僕は神官を空き部屋に隠し、鳥たちに見張りをお願いした。


「不可抗力だけど…罪悪感と後ろめたさが拭えないわ」

「意図せずして人を傷つけてしまった、サスペンス小説に出て来る犯人の気持ちだよ…」

「お魚で床に穴開けちゃったし…弁償しなきゃダメよね」

「というか、木の床に突き刺さるって…あれ本当に魚なの?」



 使用された凶器は、魚のようなもの。



数ある作品の中からお読みいただき、ありがとうございました。


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