第九十三話 別れ
私は手紙を握りしめて、千尋の元へと向かった。もうこれで彼と出会えなくなると思うと、胸が張り裂けそうであった。
「行かなきゃ…約束の時間が…」
昨日はあんなに笑顔で指切りをしたっていうのに、今の私の顔には何一つとして笑顔がない。
私は下を向きながら河川敷まで向かった。そして、集合場所が近くなると、私を見つけた千尋は大喜びで私の元まで駆け寄ってくる。
ギュッ!!
「祷の匂いしたから振り返ったら本当に居たわ。今日は香水かけてないけど、それで大丈夫なの?俺は別に大丈夫だけどさ」
「うん…」
「じゃあ、今日は人気のない場所にでも一緒に遊びに行こうぜ」
そう言って千尋は私の手を握りしめて駆け出そうとした。
しかし、私はその手を振り解かざるを得なかったのである。
バシッ
「どうかしたのか、祷?ずっと俯いてて何か具合でも悪いのか?」
私は泣き出しながら顔を上げて、皺くちゃに握りつぶした手紙を千尋にあげた。
「千尋これ…」
「何これ…手紙?」
そう言って千尋がその手紙を受け取って、中を開こうとした瞬間に私は全速力でその場から立ち去った。
「待ってよ祷!俺、なんか君に悪いことでもした?」
「ごめんね!本当にごめんね!さようなら千尋!!大大大大好きだよぉぉーーーー!!!」
私は追いつかれてしまわないように必死になって宿まで走った。そして、誰にも見つからないところに身を隠し、涙を拭いていると母主様が現れて拍手をした。
パチパチパチ
「祷、よくやってくれたわ。だってあんな男、あなたには必要ないものね。今日からずっと私の部屋においで~。朝まで遊んであげるわよ~、ふふふ!」
「あーでもそっか、泉奈たちが邪魔ね。チッ!!まあ近頃になったらアイツら三柱にまた夜遅くまでの仕事でも当てておけばいいか…となると、あのそばかす娘が邪魔になってくるわね…」
母主様はそう小声でボソボソと呟いた。
「まぁ…何はともあれ」
そう言って彼女は泣き崩れる私に合わせて腰を下ろした。そして、私の手を握りしめて立ち上がらせるのであった。
「ふふふ。これで祷は、正真正銘私の者になったわね。来れる時はいつでもいいから私の部屋までおいで。可愛がってあげるわよ」
もちろんだが、私はそれっきり母主様の部屋に行くことなんてなかった。部屋に行くように誘われることは何度かあったが、悉くそれを断った。
だかしかし、愛する彼氏を失った無様な私を見て楽しんでいるのか前のように叩いたり、脅したりすることはなくなってはいた。
でも自分は、みんなに迷惑や心配をかけないのと、これ以上母主様との関係を悪化させないようになんとか自分を取り繕っては振る舞ってきた。そのせいで、本当の自分がどんなのだったかすらも分からなくなっていってしまった…
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