第七十四話 母と父へ
すると、陽々葵さんがちょうど後もう少しで出産するというタイミングで旦那さんが帰って来たのであった。吹雪だろうがお構いなしに家まで駆けつけて来たのだろう。すごい息を切らしながら、玄関でパッパと顔に着いた雪を払い落とすのであった。
「ただいま!陽々葵!大丈夫か!?」
旦那さんは荷物や上着をそこら辺に放り捨ててすぐさま陽々葵さんの元へと向かった。
「頑張って!陽々葵!」
「うん!!後もう少しだからね!」
そう言って旦那の呼びかけもあり、力を一気に引き絞った陽々葵さんはとうとう…
「おぎゃーーー!!・・・」
「おぎゃーーー!!・・・」
ここにいた私と円香、旦那さんに女医さん...それと何より一番は陽々葵さん自身がこの産声が聞こえた瞬間に安心したのであった。
旦那さんは一気に肩の力が抜けてその場に倒れ込んだ。そして、すぐに立ち上がって出産が終わり安堵している陽々葵さんに抱きついた。
ギュッ~~~!!
「ご苦労様!!陽々葵!!」
「ありがとう!!あなた!!私、お母さんになったよ!!」
私と円香は愛し合う二柱をみて少し顔が赤くなってしまった。
それは別に恥ずかしいからとかじゃなくて、ピュアな気持ちからであった。それと、自分が生まれてきたときも知る訳なんてないけど両親もこんな感じだったのかと思うと少し照れてしまった...
しかし、女医の飛鳥さんはそんな安心しきった二柱にまだ出産は終わっていないと言うのであった。当然、二柱とも顔をポカンとさせるのであった。
「まだ、出産は完全には終わってませんよ」
そしてカバンの中から医療用のハサミを取り出した。
「まだ赤ちゃんへその緒が付いてますよ。これを切り終わってやっと完全に出産が終わったと言いますからね。せっかくですし旦那さん...いや、"お父さん"が切ってください」
「お、お父さん...そ、そうか...!!」
旦那さんは今この瞬間に陽々葵さんの旦那さんから二柱の子を持つお父さんへとなり、その責任で手をブルブルと振るわせながら二柱のへその緒を切断し、後の処理は飛鳥さんがやってくれた。
「あうあう~~」
「ばぶぶ~~」
赤ちゃん二柱とも、しばらく経つと泣き止んだ後に疲れたのか眠ってしまった。どこかで聞いた赤ちゃんの仕事は泣くことと寝ることだってまさにこのことだ。
私は心の中で二柱の赤ちゃん、それに何と言ってもお母さんになった陽々葵さんに『お疲れ様でした』、と言うのであった。
そして、一段落ついて飛鳥さんは安心して医療道具を片付けこの場から帰るようであった。
「じゃあ、私はこの辺で失礼しますね」
「外は大雪ですけど、大丈夫なんですか?」
大雪の中を駆け抜けて来た旦那さんは飛鳥さんに聞いた。
「ええ、大丈夫ですよ。優秀な弟が送って行ってくれるそうなので!お気になさらずに。それではお二方、これから子育て頑張ってくださいね」
そう言って笑顔で飛鳥さんはこの屋敷を去っていった。
そして、清楚な旦那さんは、さっき子どもが生まれてきたときに見せたうれし涙を流して私と円香に感謝を伝えてくれるのであった。
「ありがとう!!祷ちゃんに円香ちゃん!!妻のことをここまで守ってくれてありがとう!!」
私と円香は最後の最後に家族全員が揃った状態で晩御飯を一緒に食べさせてもらうことになった。赤ちゃんが居る状態での初めての食事に私と円香は一緒に居ることができて何とも光栄な限りであった。
こうして約一ヶ月に渡る初めてのお仕事が完了したのであった。
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