9 インタビュー
「ふぁぁ…」
そんな腑抜けた声を出しながら恭平は起床した。昨日の疲れからかまだ全身がぐったりしてる感じがする。
恭平はふと視点を下に落とす。そこには昨日買った白くワンポイントの装飾が施されているTシャツがあった。
それを見て、恭平は少しだけ笑顔になった。
「さってとぉ…」
そう言うと、恭平は布団から起き上がりゲームの画面へと向かった。
「ひまぁ〜」ヘロヘロの声で美空は言う。
そう言いながら美空はカチャカチャとコントローラを動かしている。そして、ゲーム画面には勝利の文字が映し出されたところだ。
「はぁ〜。なんやかんや夏休みってひまぁ〜。なんかないかなぁ〜。」
実は美空も親しい友達は少ない。学校でこそ誰からも話しかけられるような人気者だが、いざ学校の外となると遊ぶ相手はほとんど恭平ぐらいしかいない、そんな広く浅い付き合いをしていた。
「いつもどーり恭平誘ってエペしようかなぁ…」
そう思い、メッセージアプリを開いた刹那、通知音が鳴った。
「ん?」そう思いつつ宛名を見てみるとこれがまさかのカレンからだった。
なんだろう、そう思いつつ美空はメッセージを見る。
そこには手短にこう書かれていた。
「美空ちゃん、今ひま?」
ナンパする人みたいな文だな、と美空は内心つっこみつつ、たしかに暇だったのでこう返した。
「暇ですよ。なにかありましたか?」
こう返した数秒後、すぐに返信が来た。
「いやぁ、実は聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?なんですか?」
「それは直接言おうかなぁ。どうせすぐ言うし。」
すぐ?美空は疑問に思っているとピンポーン、という普段あまり聞かない機械的な音が鳴りひびいた。
美空は窓から家の下を見た。そこで見たのはカレンが手を振っている姿であった。
「あ、やっほぉ〜。美空ちゃーん」
美空は何も返すことはできなかった。
「ほぇぇ〜、美空ちゃん、けっこう可愛い部屋なんだねぇ〜」
「それは、まぁ」それしか返す言葉がなかった。
「まぁ、そんなに長居するつもりもないから心配しないでぇ、用事が済めばすぐ帰るからぁ」
「まぁ、別にいいですけど」
「それで、用件なんだけどぉ」
何を聞いてくるんだろう、と美空は身構える。
「恭平君のことについてなんだぁ」
「…へ?」思わず変な声が漏れた。
「いやぁ、実はさ…」
「あ、いや、それ以上はいいです!言わなくても分かるんで!」
「あ、そぉ?じゃあいいや。」カレンはいつもと何も変わらない表情をしている。
「それで、一応聞くんですけどなんで恭平なんですか?」
「それはぁ…う〜ん、なんていうか、好奇心?ってやつかなぁ?」
「あっ…好奇心…ふーん」
「そういう美空ちゃんはどうなのよ?恭平君に興味ないの?」カレンが煽るように言う。
「えっ!?いや、別にそんなんじゃ」
「ならまぁいいけどぉ、じゃあ教えてくれない?恭平君について」
「まぁ、いいですけど…どんなことが知りたいんですか?」
「そうだねぇ、とりあえず…全部?」
「全部ぅ?」
「そ、全部。美空ちゃんの知ってること覚えてることだけでいいからぁ、お願い!」
キラキラとした笑顔でカレンは言ってくる。
「はぁ…。しょうがないですね。長くなりますよ?」
「ぜんぜんだいじょーぶ!」
「わかりました。えっと…じゃあどこから話そうかな…」
そう言うと、美空は恭平についてのかすかな記憶を思い出し始めた。
初めて会ったのはたしか幼稚園の年長組の時だったっけ。
その頃は今の性格とは大違いで、どちらかというとガキ大将って感じだったな。
野良犬に棒を投げつけて嚙まれたり、ボール遊びをしているときに幼稚園の外にボールを飛ばしてしまったり、その時はやんちゃで怖い子っていうイメージだった。
でも、いつだっけ、確か七夕の短冊の飾りをみんなで作るときだったっけ。その時に恭平はたまたま隣で作業してて、1人だった私に話しかけて来たの。
「おまえ、ねがいごと何にするんだよ」
「えっ、私?」その時は驚いた。私みたいな子に話しかけてくるようなタイプじゃないと思っていたから。
「わたしは…家族が健康で過ごせますようにって書いたよ」
「おぉ、いい願いじゃん!俺はこれ!」
そういって恭平は自分の短冊を見せてきた。そこには少し乱暴な文字で「にくがいっぱいたべたい」って
書いてあった。それを見てその時の私は大笑いしたなぁ。恭平君らしいやって。
そこからどんどん仲良くなっていって、いっしょに帰ろうってなったの。そしたら隣の家だったから、思わずお互いの顔を見つめて笑っちゃった。
そうだなぁ…確か今みたいな性格になったのは、確か中学生2年生になってからだったかなぁ。
小学校はこれまで通りのやんちゃぶりで過ごしていたんだけど、それに付き合いきれなかったって子が多くて、やがてクラスでも1人になることが多かったって感じかな。
それで中2になってからは今みたいに打って変わって静かになっちゃって、最初は心配したんだけどあぁ、変わろうとしてるんだなぁって。
でも私に対しては今も昔もあんまり変わってないような気もする。気のせいかもしれないけど。
あとは…最近変わったことで言えば6月くらいに
「変なキーホルダーみたいなの拾った」
って言ってそれを登下校用のカバンに付けるようになったこととか、エリンギが好きになったこととか、
あとは今まで全然読んでなかった小説を急に読み始めたりとか、そんな感じかな。
「おっけぇ、いい情報がとれたよぉ。にしても美空ちゃん恭平君のことくわしいねぇ。」
「まぁ、長い付き合いですからね」
「にしても幼稚園の馴れ初めまで言うなんてぇ、もうそれ恭平にのことす…」
「それ以上言ったらつまみ出しますよ」
「はぁい。美空ちゃんも厳しいなぁ」
「まぁ、せっかくですし一緒にゲームでもしますか?親睦も兼ねて」
「おっ、いいねぇ〜!それ!やろうやろぉ〜」
この人、考えてることは分からないけどいい人ではあるのかな、そう美空は思った。
「暇だなぁ…」恭平はそう言いながら、コントローラをカチャカチャ動かしていた。
[佐野恭平の1日整理脳内日記]
今日はひさびさに何もない日だったなぁ。最近はこんな日は珍しくなってるから、なんかさみしく感じたなぁ。まぁでも格ゲーの戦闘力はだいぶ上げれたしなかなか有意義な1日を過ごせたんじゃないかな。
でも1日部屋にいたから眠気があんまりないなぁ…。
そうだ、ASMRでも聞こう。
何が良いかなぁ
カレンは眠い目を擦りながらパソコンをカチャカチャと動かしていた。
「ひーん。終わらないよぉ、報告書の作成ぃ〜!」
そう言いながらとてつもない速さでタイピングをしている。寿司打ならトップ10くらいはいくんじゃないだろうか。
「まぁいいやぁ。今日は大収穫があったし。これを報告すれば…ふぁぁ、ねむ、」
そう言うとカレンはエナジードリンクをがぶ飲みする。
ぷはぁ、と酒を飲んだ後のおっさんみたいな声を上げると、またパソコンの画面とにらめっこを始めた。
「まぁでもあれをなんとかすればいけるはずだからぁ…あともうちょいかぁ…もうちょいならいいなぁ…」
時刻は午前の2時を回っていた。
こんにちは。新生茶んです。
これでよかったんかな、と書いていて思うことが多いです。
そろそろ最終のパートに行けたらなぁって思ってます。
感想、批評などコメントにて書いていただけるとモチベに繋がります。お願いします。
最後まで見てくれてありがとうございました。
また次回で。