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8 秘密と日常と、それから

なんでこんなところに、というのが美空がまず思ったことだった。

単に偶然ここに来ていたのか、それとも偶然ではないのか、そんなことをぐるぐる考えていた。が、恭平の方をふと見ると知らない女の人が2人もいた。

1人は店のロゴが入ったTシャツを着ているのでおそらくは店員さんだろう。

問題はもうひとりだ。その人は普通に私服で美人だ。

しかも恭平になんか距離が近い。せこい。

恭平にあんな親戚いたっけ、なんて考えていると向こうから話しかけてきた。

「えっと…。奇遇だね…?」恭平がそう言う。

「あ…。うん。少し聞きたいことがあるんだけど…」

「あ、やっぱりそうだよね…。なんでも聞いて…」

恭平がボソボソと答える。カレンは私服の女の人を指差しさがら、こころなしか大きな声で言った。

「あの人、だれ?」

「えぇ、わたしぃ?」

その人はぽかーんとした顔をして、自分の顔に指を指している。

「あっ、この人はカレンって言って…」

その恭平の説明に割り込むように彼女は話し始めた。

「わたしの名前はカレンだよぉ。そうだねぇ、恭平君との関係はぁ、山の小屋で一晩泊めたことある、って言えばわかるかなぁ?」

あぁ、と美空は声を漏らした。そういえば以前恭平がそんなことを話していた。

「なるほど、決して誘拐とかそういうのではないと?」

美空が物騒なことをたずねる。

「誘拐は趣味じゃないよぉ。恭平君とはただお買い物に来ただけぇ。あっ、一応そっちも名乗ってもらってもいいかなぁ?」

カレンが言う。

「あ、はい。すいません。名前を聞いたのにこっちが名乗らないのは失礼ですね。」

そう美空は謝ったあと、一呼吸つけてから答える。

「わたしの名前は中島美空です。呼び方は美空でいいです。恭平とは家が隣で、よく遊ぶんです」

「へぇ〜。前恭平君友達いないって言ってたけどいるじゃ〜ん。」

そんなことまで言ったんだ、と美空が思っているともう1人の方の人も喋りかけてきた。

「これ、私も自己紹介したほうがいい感じ?」

「いちおーやっとくぅ?」カレンが言う。

わかった、とそのもう1人が答えたあと、穏やかな声で話し始めた。

「わたしの名前はナグサだ。呼び方はそのままナグサで構わない。ここの店の店長をやってる。」

その説明を聞きながら美空はナグサの体をジロジロ見た。

胸がめっちゃおっきい。うらやましい。

そんな感情が美空にめばえたのだった。

「それで、うちの店にどうして?」

と、ナグサは美空に対して問いかける。

「あ、ちょっとそれについては…2人で話せます?」

美空が言う。

「わかった。じゃ、カレンと恭平君はちょっとどっか適当に見といてくれ。」

へーい、という間抜けな返事と共に2人は別の場所に移動し始めた。

「それで?わざわざ隠すようなやましいものはうちには売ってないんだが」

ナグサはそうおどけて言う。

「実は…恭平の誕生日プレゼントを買いに来たんです。」

「おぉ、あいつのか。あいつも隅に置けないな!」

そう言ったあとに冗談だ、とナグサは付け足した。

「それで?何か目星はつけてるのかい?」

「一応本人から希望を聞いたんです。そしたら、このモールの中ではここでしか売って無くてここに来たんです。」

ふんふん、と相づちを打ちながらナグサはたずねる。

「それで、そのプレゼントは一体?」

「耳かき棒です。」

途端、ナグサの目から笑みが消えた。

「言い間違いかな。もう一回言ってくれない?」

ナグサはそう言う。それに美空は同じことをもう一度言う。

「耳かき棒です。」

それを聞いたナグサは一目散に恭平のいる場所に向かって走り始めた。


ナグサに殴られた。なんで?

ポカンとしているとナグサは大きな声で恭平に怒鳴り始めた。

「おんめ、女の子になんてもん頼んでんだよぉ!」

え、耳かき棒ってそんな頼んじゃいけないものだったっけ。と考えを巡らせる。

「えぇ〜?恭平君、何頼んだのぉ〜?」

カレンの問いにナグサが店中に響くであろう大きな声で答える。

「いいかぁ?こいつは女の子に誕生日プレゼント何がいい?って聞かれて、あろうことか耳かき棒を頼んだんだぞ!許せるか?私は許せない!」

もんのすごい勢いでナグサは話す。というより怒鳴る。

それを聞いたカレンは数秒、ぽかんとしたあと、爆笑した。

「えっ?ちょ、まっwえぇぇぇ!ブッハッ!えぇ?耳かき棒?ブッハッハッハッ!ちょ、おもろw」

この人笑い方が汚いんだな、そう思った。


さて20秒ほど経ったであろうか、ようやくカレンはいつもの顔に戻った。

「にしても耳かき棒かぁ…。こんなん売れるのかと思ってたけど案外いけるもんなんだねぇ…。てか本人に誕生日プレゼントなんて聞いてよかったの?」

ナグサは美空に問いかける。

「いや、わざわざいらないもの買うよりかは聞いたほうがいいのかなぁって」

美空は淡々と答える。

「へぇ〜。私ならサプライズみたいなのするけどねぇ〜。美空ちゃん、そういうの考えなかったのぉ〜?」

フニャフニャした話し方のせいで煽ってるように聞こえるな、そう思った。

だがそんなカレンの口調なんて気にしないといった感じに美空は返答した。

「そうですねぇ…。もう長い付き合いですしサプライズプレゼントする関係でもないかなぁって。」

「え、何この子恭平と同棲でもしてんの?」

「してないですそんなこと考えないでください」

恭平は反射的に否定した。

「え、でもあの子の言ってること熟年夫婦か付き合って7年目のカップルだよ。もうこれは黒でしょ。確定でしょ。」

何がだよ、と恭平は粗雑なツッコミをいれる。それに合わせて美空もナグサに向かって話し始めた。

「ナグサさん、私たちは同棲なんてしてないですしましてや付き合ってもいません。」

「そんなことあるぅ?」

そんなカレンの野次の後、美空はこう続けた。

「…今のところは。」

「はいかくてーい。もうこれはイケるよ恭平」

ナグサが言った。

「いや何がだよ」

恭平もツッコむ。

「いやぁ、これでいかないのは男がないんじゃないのぉ、恭平君?」

「カレンは黙ってて」

少し語気を強くして言ってしまった。

「うっへぇ〜。ひどぉーい」

やっぱこの口調腹立つな、と思いながら恭平は話を本筋に戻す。

「一旦この話は置いといて、その耳かき棒の話を…」

そう言っている恭平に割り込みナグサが言う。

「いやなに勝手に置いてんだよこっちは真剣なんだよさっさ付き合え」

「だから話が極端なんだって」

恭平は少しため息を混じらせた。そんな恭平を気にする様子もなくナグサは続ける。

「んで?結局お前は美空ちゃんのこと好きなのかよ?どっちなんだよ?」

「いやだから…」

「あのぉ…。」

恭平はまたもや会話の順番を割り込まれた。

その割り込んできたのは、意外と言うべきか美空であった。

「そろそろ、この話終わらせません?」

静かながら強さのあるその言葉に3人ははい、としか言えなかった。


恭平はフードコートの椅子に1人で腰掛けていた。さすがに休みというだけあってかフードコートの席は7,8割と埋まっている。

「まだかなぁ…」

恭平は湯気の出るラーメンを前にそうつぶやく。

「おまたせー!」

美空はそう言いながらハンバーガーの乗ったプレートを持ちつつカレンと一緒に近づいてきた。

「カレンさんに奢ってもらっちゃったー!」

自慢げに美空は言う。

「え、まじで?」恭平はたずねる。

「ちょっとぉ、美空ちゃん。恭平君にはないしょって言ったじゃぁん」

「まぁまぁ、いいじゃないですか!」

満面の笑みで美空は言う。

「まぁ、いいけどぉ。あ、言っとくけどぉ、恭平君の分は払わないからねぇ。」

「別にいいですよ」

恭平はそうぶっきらぼうに答える。

「あれぇ、すねちゃった?」

美空がニヤニヤしながら聞いてくる。

「してねぇ」「してるでしょ」「してるねぇ」

そんな問答を何回か続けた。湯気が顔に当たり、恭平の鼻の先が濡れている。

「もー、顔ちょっと濡れてんじゃん」

そう言いながら美空は恭平の鼻にハンカチを当ててきた。

「あ、うん。ありがとう」

「なんか感謝が足りない感じだけど?」

「ありがとうございます」

「それでよし」

そう話す恭平らを見て、カレンが不思議そうに答える。

「ねぇ、2人って別に付き合ってないんだよねぇ?それにしては仲、良すぎじゃなぁい?」

「えぇ〜!そう見えますかぁ〜?」美空が言う。

「そんなことないっすよ。」

「いやぁ〜?あやしいと思うんだけどねぇ〜?」

「だから違うって…」

恭平は否定し続ける。

「ちぇぇ〜。つまんない男だねぇ恭平君もぉ。そんなんならいつまでたっても彼女できないよぉ〜?」

「…うっさいっすよ。早く食べましょう」

恭平はやけに丁寧に返事すると、そのままラーメンをすすりだした。

いつもより少しだけしょっぱい感じがした。


「じゃあ、そろそろ帰ろっか。」

「そうだねぇ。いやぁ、服もグッズも大量だねぇ〜」

「いや多すぎだろ。どんだけ金使ったんだ。」

「ん〜?それは大人の財力ってことでぇ〜」

「貯金してんすか」

「いやぁ〜。恭平君は難しい言葉を使うねぇ〜。ちょっとお姉さんには分からないかなぁ〜。」

「いやそれできてないじゃん」美空が言う。

「ふぇ〜ん。2人がいじめてくるぅ〜。」

「やめろよみっともない。何歳だよ」

「え、それ聞いちゃうのぉ?」

少し知りたい、そう思った。

「はーい!聞きたい聞きたい!」美空が割り込んできた。

「そうだねぇ〜。ま、もったいぶらず教えるかぁ〜」

「あ、教えるんだ」2人の声が被った。

「じつはぁ〜」

5秒ほど間隔を空けた後に、ゆっくりと答えた。

「…17。」

「へぇ〜。意外と若…ん?聞き間違いかな?もう1回言って?」

「だからぁ、17。」

「…え?」

その日の帰りは、会話があまり弾まなかった。


   [佐野恭平の1日整理脳内日記]

…17?17って言ってたよね?え?聞き間違いではないよね?あの人、酒飲んでたよね?まぁそれはいいや。今日は久しぶりに出かけたな。1日歩いたから足が痛い。でも服も買えたし耳かきも結局貰えたし良い1日だったなぁ。でも、やっぱり最近視線が気になる気がする。ラノベとかの見すぎだろうか、いやでも何か見られてる気がするんだよなぁ。ストーカーかなぁ。

でも俺につくストーカーとかセンスないしなぁ。まぁいいか。今日はゆっくり休もう。おやすみ。



「ふぃぃ〜。疲れたぁ〜。」

カレンは帰るやいなや、大声でそう言った。

「あ、そうだ。覚えてるうちにやっとこう。」

そう言うとカレンはスマホを手に取り、メッセージアプリを開く。

「やっほー。今日はありがとぉ〜!」

「こちらこそ。ひさびさに会ってたのしかった!」

「ところで聞きたいことがあるんだけど」

「え、何?なんかあった?」

「昼にいっしょに来た少年いるじゃん」

「あぁ、いたねぇ」

「その子から何か感じなかった?」

「と、言うと?」

「その、なんかオーラ的な、力的な、もしくは霊的な何か」

「あぁ、たしかに感じたねぇ」

「やっぱりそうかな」

「あぁ、でもあの子って言うより…あの子の近く?から感じた気がするなぁ」

「近くから?」

「そう、何かは分からないけど」

「おっけ、ありがと!」

「はいー。おやすみー」

「おやすみー」

カレンはメッセージアプリを閉じた。

「ふぅ〜。やっぱりそうなのかなぁ?また確かめないと…あっ、報告もあるんだった…眠いよぉ〜」

そう言うとカレンはドタバタと移動し始めた。

メッセージアプリの宛名はこんな名前だった。

        「霧切ナグサ」

こんにちは。新生茶んです。

だいぶひさびさの投稿になったなぁ〜。

リアルが忙しかったんとモチベがなくて逃走してました。数少ない閲覧者さんのために頑張ります。

最後までご覧いただきありがとうございました。モチベに繋がるのでコメントどしどしお願いいたします。最悪悪口でもいいです。

それではまた次回。

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