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自由気ままに生きてみる  作者: 紅龍
ギルドの利用方法?
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地の底

「嵌められましたか・・・・・此処まで侵入を許すのはおかしいと思っていたんですよ。まぁ、元から全員殺すつもりでしたのでそれでも良かったのですが、不穏分子をこれだけ集められたのですから、上々と言っておきましょうか──」

こちらの事など見てもいない裏切り者へ、必殺の一撃を叩き込むが・・・・。

「・・・・・殺気を隠す技術は素晴らしいですが、いかんせん能力が足りませんな、第一王子殿・・・・・やはり、勇者のクラスを失い戦士に成り下がった落伍者ではこの程度という訳でしょうかね」

笑みを浮かべてこちらの斬撃を片手で防ぐ程には実力が乖離していたのだと現状を見て溜息も漏れるというもの。勇者としての力を失ったとはいえ戦士として見れば上だと自負していたのだが、腹心であった目の前の老人が今では化け物の様に見えてしまう程、力の差があったのだと呆れるばかりだ。

「・・・・俺が弱いのは重々承知。転生者やら神の使徒やら大層な奴等が上にはごろごろしてるって事ぐらいは調べがついてるさ」

「おぉ・・・・何処から仕入れた情報かは聞きませんが、優秀な情報屋を囲ってらっしゃるようで、後でそやつも始末しなければなりませんな」

今の今まで見せていた好々爺の様な笑みは鳴りを潜め、仮面の下から浮かんできたのは猜疑心に満ちた冷たい表情。見るだけで心の底から凍てつく眼光の鋭さはまるで刃物。世のすべてはゴミであると宣言する様な拒絶の気配を纏っており、温かさなどは皆無。俺に向けられる視線もまた価値無しと拒絶する色を宿しており、意識とは別に肉体が反応したのか、剣を持つ手も自然と震えだした。

「くそっ!! 恰好つかねえな!!」

好きな女の前でガタガタと震えていていられるものか。

正直、レイスは怖いがそれよりもシーラの落胆はそれ以上。

ここで死ぬとしても見栄の一つでもはらねば死ぬに死に切れぬ。

圧倒的な膂力差でがっちりと止められた剣を見つめてみるが、これはどうにもダメそうだ・・・・・となれば残った手はただ一つ!!

「・・・・・肉体強化! 死に晒せ! このジジィが!!」

無理に発動した反動か、肉体のあちらこちらから断裂するような音が響くが、それがどうした。怒りの感情のままに振るった拳は、レイスの体を貫いた・・・・。

「・・・・・・やはり、貴方は失敗作ですなぁ」

レイスを貫いた拳には血の一滴すら付着する事無く、感触は空を切ったかの如く。下卑た笑いを浮かべる表情からは到底結びつかない程に異様であり、奴の首から下はまるで影の様に人としての形を喪失していた。

「化け物が品定めしてんじゃねえぞ!」

「・・・・はっは。私を化け物と感じているならばやはり、評価は変わりませんな」

こちらを完全に舐め切った発言だが、肌で感じた格差はそれ以上。

子供と大人などと比較される差では到底表せない程の差を感じ、背筋に冷たいものを感じてしまう。

「・・・・・わたくしが相手を致しましょうか?」

今の今まで事態を眺めていたクロとやらがそんな事を口にするが、どう見ても戦闘には不向き。舐められているのだろうが、シーラの為にも逃げれるものか。

「お嬢さんもそう言っておりますよ、若様。ここは一つ、こやつらを土産に王都へ戻るのも賢い選択だと思いますが」

「今の今まで裏切っておいて、どの口が・・・・・」

「いえ、これも国からの命令、宮仕えの辛いところで御座いますよ」

殺意を向けられているにも関わらず、飄々とした態度を崩さず、二度三度と拳を胴体に向けて打ち込むが、そのどれもが先程と同様に空を切る。

「さて、そろそろお暇致しましょうかね。国への反逆者をこの場で殺すのも有意義ですが、万が一という事もありますから・・・・一度逃げると致しますかね」

「逃がすかッ!!」

舐めた態度を崩さないレイスへ懐に忍ばせた短剣で数度切りつけるが、これも同じく肉を切り裂く感触は皆無。無敵と称しても不思議ではない怪物に対し、心が負けを認めるが、顔には出してやるものかと虚勢を張るが・・・・。

「安堵の表情が顔をのぞかせておりますよ、元勇者様」

「ならぁああッ!!」

図星をつかれた羞恥を怒りに塗り替え、レイスに掴まれていた大剣を手に怪物の腹を目掛けて横薙ぎ一閃。怒りのままに上下二分割に敵を割る・・・・が。

「無駄ですよ」

傷らしい傷も刻めず、レイスは飄々とした態度のまま階段を上へと駆けてゆく。

「・・・・・それでは失礼致します」


実力差は端から明白だったが、それにしてもこれ程か。

最初から奴の事など知らなかったのだと改めて認識するが、それも言い訳にしては苦しい。自身が万屋の面々を騙す為に手の込んだ芝居をしている訳ではないのだが、それを今更言ったところで信じてくれる筈も無い。

主犯格であるレイスをみすみす見逃した手前、差し出せるものといえば己の命ぐらいかと、再会を果たしたシーラを最後に目に焼き付けるかと眺めてみるが。

「・・・・・第一段階成功致しました。現在、レイスをレギオンが追っております。失態をおかしたのですから逃げ込む先は我等にとっての敵に他なりません。印象だけで潰す訳にもいかなかったのですが、証拠があるとなれば・・・・」

「・・・・・仕方ないよね」

「感謝致します」

何だか俺の預かり知らぬところで、俺の居た古巣が処断されそうになっているのを空気で感じてしまう。レジスタンス組織と言ってもレイスが作り上げた組織。

今にして思えば俺を旗印に反抗勢力を集める為の装置だったのだろうが、レイスが直に動いたという事は既に役目を果たしているという事。

「・・・・レギオンからの報告を待つ事にはなりますが、そこの愚か者を使って、国盗りを開始する事を、此処に宣言致します」

「・・・・・・はぁ?」

役目を果たした愚か者に、黒髪の美女はそう宣言すると共に何かが動いたかと思った瞬間、俺の意識は暗い闇の中へと落ちていった・・・・・・。


                      ◆

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