表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由気ままに生きてみる  作者: 紅龍
ギルドの利用方法?
44/53

英雄

「・・・・・・何時もの部屋だ」

目が覚めてみると見えるのは普段使っているダンジョン内の我が家。

ダンジョンの中に家を作るなんて非常識だと紅葉に怒られてたが作ってよかった理想のマイホーム。

現在は慎ましやかな和風の二階建てだがこれが中々に味わい深く良い感じ。

何処か国民的なあれやこれやな雰囲気のある家づくりには心を落ち着かせる作用があるのか、窓の外から見える暗い景色に多少、心がささくれるのを感じてしまうが、それもまた生きている証拠だろうと軽く溜息を漏らして状況を整理してみる。

「・・・・・・なんだか分からないままにギルドを襲ったところまでは覚えてるんだが、その後はどうしたっけ?」

頭の中に駆け巡るのは殺戮と呼ぶにふさわしい破滅的な光景。

俺としてはそんな事を命令した覚えも無いのだが、何故だかクロとレギオンの間では確定した事実のようで、俺の命令で動いていた様子。

「行き違いがあったっぽいな」

俺としては素材さえ貰えれば良かったのだが、何故かその他諸々、命まで奪う事が確定していたらしく、彼等のギルドに訪れたのは事の経緯からして明らか。

昔の自分であれば搾取される状況に怒りを覚えたかもしれないが、今となってみれば素性を知られる事も無いので気楽なものなのだが、どうやらそこらの意識的なすり合わせができてなかったというべきか。

「確かに、この世界で舐められるという事はイコール死って感じだもんな。そうなると痛い目にあわせるとか、奪われたものは奪い返すとか、報復措置ってのは安全を得る為には必要って考えなのかもな」

奴隷の身分であったが、我ながら視野が狭いと言うしかなかった。

だが、それもその筈。王都から外に出た事も無く、この世界での人生のほぼ全てを王都で過ごしていたのだから当然。

篭の鳥であったけれどなんやかんやで仕事さえすれば守られていたのも事実。必要以上に奪われるという事も無かったので、気持ちが緩んでいたのだと認識を改めた。

「・・・・・・余裕ができるとよくないな」

元々の性分なのだろうが、生きていくと決めた以上進むべきかと気を持ち直した矢先、部屋の扉を軽く叩く音が室内に響いた。


「・・・・・・入っても宜しいでしょうか?」

クロと思しき女性の声にどう答えるべきか悩んだのは一瞬の事。

部屋の隅から隅まで眺めて、見られては不味い物が散乱していない事を確認して、口を開く。

「ど、どうぞ」

女性を寝室に招くなど過去にも無い事態なので声が自然と上ずってしまうが、そこはご愛敬。相手もそんな事を気にした様子も無く、扉はゆっくりと開いてクロの姿が徐々に露わとなった。

「・・・・・お休みの所、申し訳ございません。状況報告並びに今後について方針を示して頂ければ・・・・と」

いきなりの爆弾発言に、高鳴る事も無い心臓が早鐘でも打った気になるが、表情も死んでいればそういった機能もほぼほぼ抑制されているので表面上冷静を装い脳内では慌てふためき答えを絞り出す。

「・・・・・・それじゃあ街の様子を聞いてから方針を決めようか」

精一杯の時間稼ぎの一手を指しつつ、ヒントとなる言葉を貰えないものかと内心クロに縋りつつ、そう言ってみる。

「畏まりました。では、現状の街の状況について先にご報告致します。まず、神々の剣に関しては街を破壊した主犯格という認識が住人の共通認識となっております。これにつきましてはライセンスに誰に殺されたかと記載される機能がついていたかと思いますが、吹き飛んだ住人達の中に冒険者が多数混ざっていたらしく、因果関係が立証された為、この様に認識されております」

「・・・・・成る程」

ライセンスカードに含まれる機能にそんなものがあったなと今更思い出した。

受け取って最初の頃は性能のおかしなカードだなと思ったけれど、犯罪の証拠にもなるのかとつくづく怖い機能だと関心してしまう。

「・・・・・なら、神々の剣を殺したのは俺とクロとレギオンだよね?」

先程の機能がそのまま犯罪として立証されるなら犯罪を引き起こした原因として追われる立場になるのでは無いかと思ったのだが・・・・。

「厳密に言いますと奴等のメンバーを確実に殺したのはわたくしのみです」

クロがそう語るのにあわせて状況を整理してみると、他の状況は力の使いすぎによる自滅な訳で、直接攻撃は確かにしていない。

「ですので、一番簡単な方法としましては、わたくしを殺す事。もしくは王国へ引き渡すなどが最善かと考えました」

「・・・・・・・・」

自身の命に価値を見出さない発言に一瞬、意識が沸騰しかけた。

そもそも捨て鉢だった己がそんな事を考えるのも恥知らずだが、それにしても頭にくる。最初から勘違いのすれ違いによって引き起こされた悲しい事故なのだから、みんなで解決するものだと思っていたのに、最善手はこれだと差し出されたのは納得しかねる最悪な一手。

今生ぐらいは好き勝手に生きてみたいと始めた旅路に、暗くて重い思い出は今はまだ俺には必要が無い。

自然と手が震えそうになってしまうが、それでも言葉で語るべきだろうと、クロを差し出さない方向で苦肉の策を口から吐き出した。

「・・・・・君が英雄になれば話は違うんじゃないか?」

「英雄・・・・でしょう・・・・か?」

エルフの中にもこの世界にも無いものだったのか、クラスなどと呼ばれるものに縛られた世界では生まれない人々に語り継がれる存在。

勇者でも無く、魔王でも無いただの呼称。

きっと光輝く様な存在に対する名称なのだろうが、目の前の一人を生かす為に俺はその名称に相応しい存在へとクロを変えていこう。

「・・・・そうだ。君は今日から力に溺れる者達を砕く英雄となれ」

「なれば、神々の剣は悪であったのだと?」

長く生きてきたエルフにこんな子供だましが通じる訳も無いのだが、それでも俺は宣言する。

「事実、腐敗をしていた。内部はガタガタだし、この街の冒険者ギルドとの繋がりも汚れているなんてもんじゃない筈だ」

「・・・・・・汚れたわたくしには過ぎた称号です」

王都で何があったのかは道中色々とクロから聞いたが、それも彼女のせいでは無い。欲にまみれたくだらない王族や貴族が悪いのであって彼女には何の非も無い。

「死ぬ前の君の事は俺は知らないけど、今のクロは虐げられた者の気持ちも分かる筈・・・・それに、なにより俺が生きて欲しいのが一番の理由」

「・・・・・・・・・・」

少しばかり湿っぽい会話になってしまったけれど、目に見えて覇気を取り戻したクロの様子に俺としては十分。

これからどうやってクロの英雄伝説を作っていくべきかと思考をシフトさせていくと、ギルド関連であれやこれやとレギオンが動いていたのを思い出した。

「・・・・・一つ聞きたいんだけど、もしかしてレギオンが確保した変わり身の中に金以上のライセンス持ちが居たりする?」

「・・・・・シロ様、今、その発言は減点です」

クロにそんな事を言われてしまったが、俺としても同意。

こういった場の雰囲気に慣れていないせいか逃げ出してしまう恰好になったが、悪いのは俺なので素直に謝る事とした。

「申し訳ない」

ただまぁ、彼女にしても恥ずかしさを感じていたのは同じのようで、顔を拭うと、俺の問いに対する答えが返って来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ