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自由気ままに生きてみる  作者: 紅龍
旅の始まり
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走馬灯3

だがまぁ、そうした高揚も一瞬の事だった訳で。


それからは地獄の日々。残飯と呼ぶのもおこがましいゴミを食べ、睡眠時間は日に四時間あるか無いか、来る日も来る日もポーションを作り、作り、作り、作り・・・・・・。


折れない心が無ければ早々に折れているだろう心を奮い立たせ、このままでは精神より先に肉体が死ぬと魂で理解し・・・・俺は悟った。


そう、肉体が問題なのであればそれを作り変えればいいのだと。


ステータスウィンドウには錬金術師は状態を変化させたり、作り出したりする事ができると書いてあるのだから、状態を変化させてやればいいのだと。


だが、ここで一つの問題が発生する。肉体を変えるとしてリスクが少なく効果が高いものはどれだと。


安易に皮膚かとも思ったが、全体に広がっている為、これは危険。


できれば2つ以上あれば尚良し・・・・・様々に考えたすえ導き出したのは・・・・『目』だ。


目は二つあり、物を見るなど性能は同じ。もし間違いが起こっても片方の情報を上書きして戻せば最悪は避けられる。などなど色々と考えた結果俺はそうした研究に没頭した。


後で思えばこれも一種の逃避。折れない心が無理やりに導き出した逃げ道なんだろうが、前世の知識がある分後押しされて俺は突っ走った。


日々の睡眠時間を削り、壊れかけた精神をスキルに支えられ、肉体を変異させるという異常な痛みに対しても、折れない心は尚も立ち上がり、拮抗してみせた。


錬金術師には不要と思われたスキルだったが、こうしてみれば最高の相性だったと今は思う。


そんなこんなでギリギリの生活を送る事3年・・・・・。


俺の片目は『鑑定』と呼ばれるスキルと似た効果と遠視、暗視、透視の効果を持つに至った。


「長かった・・・・・」


俺が前世の俺としての人格を取り戻してからここまで。


過去の生活水準からくらべても劣悪な日々に何度命を断とうかと思った人生はここに報われた。


だが、それも遅すぎた。


「リド・・・」


虚しく向けた視線の先。藁の塊には相棒とでも呼ぶべきリトはもうそこには居らず、藁だけが乱雑に打ち捨てられていた。


「もう少し早ければなぁ・・・・・」


外の状況がどうなっているのか想像するぐらいしか出来ないが、ここの状況からして最悪。


日に日に要求されるポーションの数は増え、装備の補修までやらされる始末。


守れない者には罰則がかされ、戦える力を持つ者には死刑と同じ前線行きが命じられ・・・・。


結果として戦士のクラスを持つリドは前線へと送られた。




「おい! やったぞお前等! 賢者様がやってくださったぞ!」


何時も俺達を殴る事しか興味の無い強面の男が今日はどうした事か意気揚々と伝令の様にそう叫び、辺りを走り回っていた。


遠目に見る分には構わないが、近寄られると嫌悪感しか抱かないその姿。


悲しい事に俺の体も徐々に女性らしく丸みを帯びたせいか、此方に向けられる視線はそうしたものも含まれており、尚の事気持ちが悪い。


そもそも中身は前世のままなので、心情的には悲しくなる。


色々と愚痴をこのまま言いたくなるが、奴の様子からしてこちら側には良い結果に終わったのだろうが。


「お前等も喜べ! 賢者様によって兵器となったお前等の同僚がそれを為したのだ! これで上への覚えも変わってくるぞ! 多少はましな飯も食えるんだからな」


男は満面の笑みを浮かべそう語ると、同じ口上を他の者達へと喧伝していく。


さも自らの戦果であるかの如く語るその様は、勇者の凱旋。


俺達がどう感じるかなど知った事の無い身勝手な様に自然と俺は拳をきつく握りしめていたのだと、滴る感触が告げていた。


「・・・・・成程な、これがこの国のやりかたか」


それから暫く城内はそうした噂で喧々諤々。


亜人や魔族などと呼ばれる他種族に勝利したという本当か嘘かも知れぬ話が広まっては消え、戦争に勝利したと誰かがはやし立てれば、その逆に停戦で終わったと言う者など全体的に戦を肯定する声がそこら中で聞こえてくるようになっていった。


内心、こうした工作からして政治に舵をきったのだろうと雰囲気で察する事は出来たし、停戦というのも本当の事だろう。そして停戦となれば戦う者より準備する者を登用するのは必然。


あの男が自分の戦果とばかりに喧伝していたのもその一環であろうと推察できた。


「停戦中に次の戦いへの準備って事か。そうなるとあいつも出世とかするのかもな」


リド達のお陰で出世した事に反吐が出る思いだが、これで多少は時間が稼げるのも事実。


この世界で産まれた命ならば今の状況に頭を垂れたのだろうが、前世を覚えている俺には反逆する意思がある。当然、その権利を行使するべく俺は手に入れた力を使い、自己を変革させていく。

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