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自由気ままに生きてみる  作者: 紅龍
旅の始まり
21/53

シチュー

何とも予想外の決着に対応できず、思考は固まったまま。

当初の予定では負傷させる事ができれば交渉のテーブルにつくだろうと考えていた程度。

戦いが始まり、どのタイミングで割って入るかとそわそわとしている間に決着がついてしまい、俺にできたのは茫然と眺める事しかできはしなかった。

予想外の決着とその勝者のクロが此方へ何やら目配せしてくるが、どう反応するべきかと悩んでいると、クロも体力の限界か重力に引かれて徐々に傾いでいく。

「おっとと」

クロが使った魔拳なる魔力操作技術を参考に肉体を加速し、何とか倒れる前に体を支える。

「・・・・・一応、決闘の場には入ってた訳なんだし、完敗しないと契約が消えないのなら俺が相手になるけど、どうする?」

俺としては遠慮したいところだが、鑑定で見えるのは契約に縛られているという事だけ。

経験則でも契約とやらは厄介なもので、俺にしても死んだことにして逃げるのが精一杯。

クロにしても同じく死によって逃れただけに過ぎず、何かしら死に近い状態まで追い詰めなければ回避できないだろうとは思っていたのだが・・・・。

「地龍を倒せばダンジョンクリアですな。それにこれ以上戦うのは何と言うか気持ち悪いですなぁ」

如何やら高潔と呼ばれる感情をもっているのか、リスみたいな生物の癖に生意気だ。

見てくれは呑気な小動物だが、やはりというか中身は外見とは違い理性的。

充分に手を組むだけのメリットがありそうだと手を握りあう。

「・・・・仕方ないですな、美味を寄越すのですなぁ?」

相互理解というものはこうやって決裂するのだろうか。

まったくもって一時でも高潔だと思った感情を返して欲しいものだ。



リス野郎・・・もとい背中の紅葉柄から安直に紅葉となずけたダンジョンの主、紅葉との同盟を結んでからは忙しさに文字通り忙殺されていた。

まず手始めに街とダンジョンを繋ぐ次元回廊の切断及び、魔力リソースの効率化。

回廊を閉じた事で防衛の必要性が無くなり、防衛に使っていたゴブリンやオーク、ミノタウロスを純粋な労働力として活用する事が可能となった。

これまでは人を誘い込み魔力に変換していたが、俺が作ったマナを純粋魔力に変換する変換炉があれば維持するならば問題無し。ダンジョンが生きていく為に人を誘う必要も無いので紅葉が飢える筈は無いのだが・・・・。

「おい、紅葉。魔力問題は無くなったんだから俺の要望を叶えろよ」

「わ、わかっているのですなぁ。衣食住の食事と住居の提供など造作もないのですな!」

「偉そうに言ってるが、食事は俺が作るんだが?」

「・・・・材料は僕が提供するのですな! なら、食を提供するのはやはり僕なのですなぁ」

変なところで知恵をつけたなと関心してしまうが、話がそれてしまった。

方向転換するべく言葉を重ねる。

「分かった分かった。食に関してはそれでいいよ。んで、食事担当様に具申したいのですがー肉とか野菜を保存する冷蔵庫を設置したい。確か休憩エリアだっけ、あれみたいな広場を2つ作ってね」

「ふむふむ、その冷蔵庫とやらは美味に関係あるのですな?」

「まぁ、そうだな。美味しい肉やら野菜が食えるぞ」

「それは最優先で作らねばですな!」

想像通り食に対するこだわりは相当。しかしながら俺としても有効な交渉材料なので文句は無い。

「一応設置する冷蔵庫に関しては魔石を少し使わせてもらうぞ、追加で魔力が必要だから変換炉も追加させてもらうぞ」

魔石を使うことにいぶかし気な表情を浮かべていたが、渋々納得したようだ。

「・・・・今更悩むのが馬鹿らしいですなぁ。なので、考えるのを諦めるのですな!」

「お、成長したな」

「・・・・面倒になっただけですな」

折り合いをつけて付き合うというのも大人になった証拠だよ。何て事を言うつもりはないが、邪魔をされない事は素晴らしい。

了解を得られたのならばと、俺も早々に動き出す。

本来であれば侵入者をおびき寄せる罠として差し出していた武器防具、鉱物や金貨など諸々を好き勝手錬金の材料にぶち込み、魔石でもって無理やり出来ましたるは冷蔵庫並びに魔力変換炉。瞬間的に出来たものとしては巨大で重厚。

さすがに重すぎるのでどうしたものかと考えるが、そこはダンジョン。

紅葉の腹の中みたいなものなので、物さえ作っておけば紅葉が勝手に設置してくれるので大助かり。まったくもって楽だなと後は任せておく。


「お野菜とって参りました」

労働の汗を流していると聞こえてきたのはクロの声。

ここ数週間で傷も癒えたのか戦いの痕跡は綺麗さっぱり消えうせており、歩く度に揺れる物体に目が吸い寄せられる・・・・が、流石は俺、すんでの所で耐えつつ手を振り返す。

「おぉ。ニンジンにタマネギ、ナスも出来たか。やっぱり凄いなダンジョンは」

「・・・・はい。どれも見た事がありませんが、美味しそうな野菜です」

クロが語ったようにどれもこれもこの世界では存在しない野菜ばかり。

本来であれば似たような野菜で代用しようかと思ったのだが、紅葉との会話でこの方法を思いついた。そもそも人が欲しい物をダンジョンが用意している事が疑問だったのだ。

だが、問いただしてみれば理由は簡単。

人の亡骸を吸収する際に、文化や技術など諸々の情報も同時に得ているらしく、それ故に人が欲する物が何なのか理解しているらしい。

初めに聞いたときは何のことかと思ったが、人から情報を得れるならばこちらから書き込む事も出来るのでは? なんてことを考え試した結果がこれ。

予想よりも上手くいってしまい何か問題が発生するのではないかと身構えていたが、ダンジョン内である為、害虫が侵入する事はなく安全安心。仮に侵入したとしてもここは紅葉の腹の中、残らず魔力に変換可能。日光も水も完全にコントロール下という好条件でいう事無し。

マナでは無く純粋に魔力という栄養を豊富に含んだ土壌は生育環境としては満点だったのか、二週間程で出荷できる程に出来上がり、出来栄えも申し分なし。住居として完璧なのでは無いかと自画自賛してしまう。


「そこそこなパンは紅葉が出せるからシチューでも作るか」

クロが持ってきた材料を眺めつつそう言ってみると、何処から聞きつけたのかリス野郎が人畜無害そうな瞳で近寄ってくる。

「シチューって美味しいですなぁ?」

「不味い飯を作った事が無いだろ?」

「・・・・確かにそうですな」

紅葉はそう言うとキッチン近くのテーブルを占拠し、飯を催促し始めた。

「もう美味の口になったのですなぁ、食べないと働かないですな!」

「変な知恵だけつけやがって・・・・分かった分かった。んじゃ、パンと小麦粉、牛乳を出してくれ。コンソメの元は俺が作った奴があるから。肉は・・・・コカトリスの肉でいいか」

「・・・・・了解ですな!」

「さてと、準備に取り掛かるか・・・・」

本格的な作り方だと色々と大変なんだろうが、そこは錬金術の出番。

紅葉に情報を伝える過程でどうやって物を作り出しているのかを観察したところ、自分自身でも似たような事が可能となった。流石の俺もこれには驚いたが、そうとなれば作るのは決まっている。

そう、簡単な調味料の作成だ。料理を作るとなったら必要なものは兎にも角にも調味料。

味の決め手は塩や胡椒など必要な物は多種多様。どうにか作り出そうと魔石片手に考えていたところ魔石を代償に簡単な調味料なら作れるようになっていた。

錬金術の使い方としては残念な使い方なのかもしれないが、俺にとっては最高。

紅葉が貯蓄していた魔石をあれやこれやと野菜の種やら苗に変えつつ調味料を作り出し、今ではシチューまで作れるようになっていた。

「コンソメなんか普通に作ったら大変すぎるからなぁ・・・・」

一度試しに錬金術無しで作ろうとしたが、あまりの大変さに折れない筈の心が折れるのでは無いかと萎える程。色々と試行錯誤した結果魔石でショートカットが出来ると判明し、今に至る。

「魔石使うぞ~」

「構わんですな」

俺はそうやって許可を貰うと、目を閉じ、万能物質である魔石を手に持ち前世で馴染み深いコンソメの塊を思い浮かべ・・・・変化しろと命令を下す。

「・・・・・いつ見ても不思議だな」

目を開くと手にしていた魔石は消え去り、代わりに出現したのは顆粒コンソメの塊。

パッケージまで再現されており、些か便利すぎるなと思ってしまうが、分からないことを考えるのは時間の無駄なので諦める。ただ魔石を使用した際はこの様に不可思議な錬金術も可能なのだと理解しておけば問題は無い。

とはいえファンタジーの世界には似合わないと思いつつも簡単に料理が出来るのはありがたい。

そもそも、俺は料理人でも無いし、作れるのは家庭料理かその延長ぐらいなもの。

つまるところ調味料やレトルト及び外食産業の方々に頼っていたのだからこの手の裏技もやむなし。

美食を食わせねば何時裏切るとも知れぬ紅葉を手懐ける為にも出来る様になって良かったと錬金術の進化に内心大喜び。今となっては最早自然に使える辺り、無くてはならないのだろう。


「諸々の下処理はすんでおります」

「ありがとう、助かるよ」

クロもこの手の作業には慣れてきたのか、言わずとも用意した鍋を見て完成図を予想したのか、持ってきた野菜と鶏肉を適当に切り分け処理済み。後の作業といえば油で野菜を焼いてやる事ぐらいなもの。手際よく肉と野菜を炒めていく・・・・。


「これぐらいでいいか」

野菜と鶏肉を油で炒めて十分程。追加で水と牛乳コンソメの元を入れて加えて20分煮込んでやる。

「後は塩と胡椒で適当に味付けをして・・・」

充分煮詰めたところで火を止めると良い匂いが周囲に漂う。

「出来たのだなぁ?」

居てもたってもいられなくなったか、紅葉が皿を持ちながら駆け寄ってきた。

「へいへい、完成ですよ」

紅葉から受け取った皿にシチューにつぎ足し完成。

お玉で軽く味見をしたが、前世の味と遜色が無いと言うよりも逆に美味しいぐらい。

恐らくその原因は肉と野菜にあるんだろうが、ダンジョンさまさまだと改めて実感してしまう。

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