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自由気ままに生きてみる  作者: 紅龍
旅の始まり
18/53

黙秘

「こんな物どうしたの?」

先行していたクロが戻ってくるなり手渡してきたのは金色のインゴッド。

それは微かにではあるが不可思議に光を放つ良くわからない金属であり、何処かで見た事がある様なない様な? 何だったかと顎に手を当てて思考に耽っていると。

「宝箱から出てきました」

などとクロが出所を明らかにした為、俺の見間違いである事が判明した。

確かにここはダンジョンであるし、不思議な物が出てくるのは当たり前。

手にしたインゴッドにしてもちゃんと成型された物では無いらしく、何処か武骨。

手で何かを強引に折り曲げたと言われた方が納得できる程に粗雑であり、確かにこんな乱雑な素材には見覚えが無いのも事実。

しかしながら、素材としては優秀なのか鑑定で調べてみるとミスリルという魔法金属である事が分かった。

「剣を作るのも良いけど、ナイフを数本作るのも良いかもな」

クロが先行してから俺自身も色々とダンジョンを捜索していた。

結果、判明したのはモンスターの肉は消える前なら切り取れるという事。

これは牛の角からしてもぼんやりと分かっていたが、つまるところ・・・・・。

「肉が食いたい・・・・」

俺がそう言うのと同時に腹の虫が鳴り始める。

「この街で飯でも食べようと思ってたのに強制的に連れて来られるとか酷すぎる。おまけに出てくる化け物が牛とか豚とか腹が減るにきまってる。流石に人を喰った奴は食べたくないけど、壁から出てきて直ぐなら多分喰える。その為にもナイフは必須。絶対に焼肉にしてやる」

そう決意するとやる気も出てくるというもの。手にしたインゴッドを設計図通りに3分割。

一本は当然、包丁にして残りの二本は解体用ナイフと大振りな狩猟用ナイフ。

狩猟用ナイフの方は前世で見たマチェーテみたいな物を参考に武骨に仕上げておく。

「・・・・・まぁ、こんなもんか」

切れれば何でもいいのでこだわりは無い。続いて解体用だが、これについては鋭さ優先。

頑丈さも勿論最低限必要だが、戦う訳では無いので切断力を追求・・・・結果柳葉包丁に似たような刃物が出来上がったが、まあこれも良し。

「包丁は万能包丁でいいか」

料理人という訳でも無いので素材が切れてそこそこ頑丈ならばいう事無し。

鑑定によるとこの魔法金属は錆に強いらしいので、包丁には最適。

「クロ、良い素材ありがとうね」

「滅相も御座いません」

クロはそう言って感謝の言葉を返すけれど、多分本来の用途とは著しく乖離している。

だが、武器には現状興味が無いので知った事かと包丁完成。

「良いね」

完成した包丁と解体用ナイフを道中拾った亡き冒険者の物と思われるなめし革で持ち手と刃の部分を巻いて一応の鞘としておく。

「さてさて、こっちは準備万端。後は出てくるのを待つばかりだね」

「シロ様、それに関しては問題御座いません」

「・・・・・そうなの?」

意味が分からないので疑問を浮かべていると。

「あちらをご覧ください」

そうやって指し示された方角からはどこから集めたのか狭い通路を掻きわける数十匹の牛と豚・・・・時折混じるのはコカトリスと呼ばれるであろう鶏の姿。

「・・・・食べ放題で御座います」

そんな事を言っている場合か・・・・と、思ったが敵の強さが変わらなければそんなものか。

「色違いが美味しいみたいだから、奥のやつ以外は潰していいよ。鶏っぽいのは石化ガスを使うらしいけど避ければ大丈夫だから」

「畏まりました」

言い終わるや否や、クロは奥に居並ぶ巨体に躊躇すること無く飛び上がり距離を詰める。

『・・・・ッブボ』

視界を埋め尽くしていた豚の化け物が驚きの声を上げた頃には振り上げた踵に胸部の魔石を砕かれ、化け物の肉体は煙のように消え去る。

『ッゴォオオ』

獲物だと甘く見ていた化け物共も瞬時に悟ったのか、臨戦態勢。

各々、手近な石などを握り筋力任せに投擲を敢行。

運が悪いことに力任せの一撃に耐えきれなかったのか、石は破断し、細かい粒となって此方を襲う。当然、そんなものは回避のしようがない・・・・が、しかし。

「はっ」

クロが、右拳を弓なりに引き絞り剛腕一閃。

突如として舞い上がる大気の渦が飛翔体を地に叩き落とす。

当然、これで迎撃は完了かと思っていたが・・・・。

「三匹ですね。力任せではこの程度ですか」

何が三匹なのかと拳の先を眺めてみれば、化け物の残滓か煙の跡。

迎撃と攻撃を同時に行った技の冴えに舌を巻く。

「来い、肉」

最早、敵としてではなく食材として認識しているのか、化け物の行列に対して冷ややか。

化け物側も新たな手として石化ガスを仲間の被害覚悟でまき散らすが・・・。

「木偶が」

そう冷たく言い放つと、先程と同じく右手を弓なりに引き絞り、今度は拳をつくらず手のひらでもって空気をかき乱す。

『グッギャ───』

『ヒッヒュ──』

化け物の口から漏れたのは断末魔。

コカトリスが吐き出した石化ガスを受けて、耐性を持たぬ者達が石に変えられていく。

「本来であれば狭い通路において必勝でしょうが、利用されるという事を想定していませんね。慌てて戦力を集めたのでしょうが、強ければ良いというものでも無いでしょうに」

まるで何者かの意思が介在しているような口ぶりだが・・・。

「もしかして、ダンジョンって生き物?」

降って湧いた疑問に対して答えは明らか。脅威であろうクロに対して敵対する様子は生物的。

人間の体が病原菌に対抗すべく白血球などが攻撃を仕掛ける様に似ていなくもない。

ダンジョンから得る事の出来る宝なども食事を得る為の餌であり、それに目がくらんだ者達は喜び勇んでダンジョンへ潜る・・・と。

「でも、考えようによっては生物なら俺の能力で何とかなるか」

手に触れられる範囲なら改変する事が出来る能力の範囲である事に安心感は増す。

最悪、出口ぐらいは作れるだろうし、問題は無いか。

なんてことを思って視線を上げてみると、何時の間にやら勝負は決していたか、大半は煙となって消え去り、色違いの数匹は虫の息。器用な事に無手の手刀でもってざっくりと美味そうな部分だけを切り分けていくと、止めとばかりに首を刎ね、魔石を抉り出す。

「肉、肉、美味しい肉になれ」

ザクザクと手刀が振るわれる度に吹き出す血潮と相まって猟奇的。

常に微笑を浮かべている為、猟奇度が上がっているが、クロにとってはどうでも良いのか淡々とした表情で作業的。見る見る間に積み上げられていくのは見慣れた精肉後の肉の塊。

牛や、豚・・・鶏肉までそろいぶみのこの世界ではあり得ぬ食材の豊富さに呆れるばかりだが、ダンジョンとはそういう場か。

「・・・・血抜きと熟成ぐらいはこっちでやるかな」

そう、手が触れれば問題ないんだぜと、豪語していた能力を悲しいながら美味しい肉をつくる為に行使するべく積み上げられた肉へ手をかざす。

「おぉ・・・・なかなか良い肉だな。余分な血を抜いて低温熟成の真似事をしてやればそこそこ美味い肉って奴だな。あぁ腹減った」

二人でも食べきれない程の肉を食肉へと加工しつつ、もう片方の手は地面に当てられており、思い描いた通りの簡易的な焼き場が出来上がっていた。

「鉄板は・・・・使ってない大剣があったからあれでいいか」

俺はこれで幾多のうんぬん・・・? 守ったとか何だとか言ってたような気もするが、牛脂を塗りたくれば美味しい肉が焼けそうではある。

「・・・・普通に丁度いいなこの剣。後で鉄板にしとこうかな」

今は別にこのままでいいかと焼き場に魔法使いの木の杖を真っ二つに折ったものを放り込み、それらに対して人差し指を向けて・・・・。

「燃えろ」

そう宣言すると、燃えにくいはずの木片は燃えることが正常な事だとばかりに轟々と燃え始めた。

「指に魔法を仕込んどいたけど便利だねぇ。呪文もいらないし、単純な単語だけで魔法が発動するし便利便利」

「・・・・・素晴らしい発想です。シロ様」

「っおぉお!?」

燃え上がる炎を見て落ち着いていた所に不意に湧いた気配。

あんた暗殺者かい!? 心の中で突っ込みを入れそうになるが、多分クロなら暗殺者以上に暗殺できそうだと思ってしまう。そしてそれが正解なのだろうが、困りごと。

「もしや指ごとに違う魔法が使えるのですか?」

その困りごとが顔をこちらに覗き込ませてくるが、どう答えたものか・・・・。

「一応、十本の指ごとに違うよ。今使ってるのは火の魔法で、後は風とか水とか色々だね」

「・・・・ふむふむ。指を合わせたりする事で複合属性みたいな真似もできたりするのでしょうか?」

「う、うん。ま、まぁ・・・・そうだね」

「ほぉほぉ・・・・」

見るだけで経験則からこちらを丸裸にするのは止めて頂きたい。

俺にも色々と秘密にしておきたい情報はあるのだが、この通り無駄骨。

早々に裏切るとは思ってはいないが、裏切られた際の被害はなるべく少ない方が良いので、こうやって暴かれるのは本当に困ってしまう。どうしたものかと目下、頭を悩ませているのだが、口に出すのは恐ろしい。結果、このようになってしまうのが問題なのだ。

「人差し指が炎であれば、中指は相性のいい風でしょうか?」

「・・・・・黙秘します」

このままでは流石に不味いと思い、熱した鉄の剣に牛脂を塗りたくりステーキ状に切った肉を並べて焼いていく。

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