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自由気ままに生きてみる  作者: 紅龍
旅の始まり
10/53

出発

「さてと、身分証としてライセンスもらいに行こうか」

「冒険者用ですか?」

「そうそう。だいたい冒険者になった奴は死ぬから必要な情報も少ないんだよねあれ。だからこそ商人やらに比べると取りやすいから」

「・・・・人族の冒険者は悲惨なのですね」

などなど蘇ったエルフさんと話をしながら王国のメイン通りをあるいていく。

「そういえば服は地味なのとローブの間に合わせだけど大丈夫?」

俺の言葉に彼女は自らの衣装を眺め。

「問題ありません。元から衣装には興味がありませんから。それに普通の服ではなさそうですし」

「・・・・・助かるよ」

彼女が語ったように見た目とは反した性能をしており、一目で見抜くあたり大したものだと舌を巻く。

衣装を軽くみただけだと俺と似たような上下とローブにすっぽり顔まで隠すパターンだが、中身はそこらの鎧より優秀。ローブにしても炭素繊維を編み込んだものだし、服も似たようなもの。

弱点であろう熱にも強くなるようにそこは錬金術で補強をしており、前世だとそのコストだけで財布が空になりそうだが、元ではそこらにあるのだから錬金術さまさま。

恐らくこの世界ではそんな服を作ろうなんていう思考すら出てこないだろうし、見た目的にも普通なので警戒されないというメリットもあったりする。

何てことを考えていたら何時の間にか目の前には平屋2階建てのそこそこ大きな冒険者ギルドなる施設の姿が。

「ボロボロだね」

「汚いですね」

示し合わせたように漏れる感想。

内情をこれでもかと表した姿なのだと無知なものにでも知れてしまう悲惨さ。

優秀な人材を王家や貴族に吸い上げられた結果の有様なのだろうが、それにしても酷すぎる。

流石にこれはどうなんだろうと周囲を見回してみるが、驚いたことに人の流れは多く、俺達をしりめに数人の男達が中へと入っていった。

「・・・・・正気か?」

戦慄というのはこの事か。これ程に救いがないのかと思いつつも欲しいものは身分証である為、意を決して男達の後を金魚のふんとばかりについていく・・・・・。

「・・・・お?」

そうして中に入ってみると意外や意外。

外見とは違って中身は整っており、食事をする場所は清潔そのもの。一流とは言わないが大衆酒場の様な様相を呈しており、各々食べている物も比較的まとも。前世と比べたら流石に雲泥の差だが、この世界基準でいえば上澄み。食事の楽しみがあるとないとでは生死に関係するという話も聞いたことがあるので、もしかしたらそういう事も関係しているのかもしれない。

「死ぬ前に金を溜めといても仕方ないもんな」

それに加えて良さそうな依頼が貼られるのを待っている者や、パーティーとしての集合場所として利用する者、はたまた一見さんに武器を売り込む者など多種多様。

見ていて飽きない人間の坩堝という奴だが、俺達の目的は身分証の作成である為、足早に受付へと向かう・・・・。

すると、受付側も見た事の無い新人を見つけたと営業スマイルを浮かべていた。

「・・・・・死亡率が高いからってあからさまだな」

内心思っていたことを小声で呟く。横に居並ぶ彼女も同意であったのか、小さな溜息が相槌とばかりに放たれていた。

「新人さんですか? それとも王国のギルドが初めて?」

俺達の様子に何か感じたのだろう受付嬢がそうやってぐいぐいと話しかけてくる。

多分、少しばかり腰が引けたのを察したのだろう。何だかノルマをかされた営業社員をほうふつとさせるが、きっとその感想は的を射ている。人族の冒険者は食い詰めた者達の最後の拠り所。

優秀でもないクラスとスキルを手にした者達が集まるせいで需要は高止まり。

目の前の受付嬢も何人の男を死地に追いやったのか想像もしたくないが、そんな事を思わせぬようにべったりと営業スマイルを張り付けており、些か寒気すら覚える。

しかしながら感傷に浸っているのも無駄なので受け答えするべく弱者を装い口を開く。

「そ、その・・・・・クラスが錬金術師でして・・・・」

「・・・・・あぁ。はいはい」

落胆とともに剥がれ落ちた営業スマイル。無駄は省くスタイルか、声色も冷たいものに変化し、二人分の銅板と不衛生な針が差し出された。

「その銅板に血を垂らしな」

不遇クラスである錬金術師の相方も相応と思われたか、そもそもローブをすっぽりと被った二人組がまともかどうかも怪しいもの。この対応もまだましだろうと気持ちを切り替えると、針なんかでは傷ができる筈も無いのであらかじめ用意しておいた血液袋を手に仕込み、それを針で破いて血を銅板へと滴らせ、受け渡す。

「・・・・・ふん。錬金術師ってのは本当のようだね。それに連れの子は魔法剣士? 優秀なクラスじゃないか、錬金術師なんて捨てて優秀なパーティーを斡旋してやるよ?」

顔も見えない怪しい風貌であろうが優秀な人材は逃がすまいと受付嬢の視線は絡みつく。

あからさまなヘッドハンティングに対して俺はげんなりしてしまうが、周りが騒がないのを見るにどうやらおかしな行為では無いらしい。

現に俺の後ろでは解散を想定してか、パーティーを申し込もうとする輩が数人居並ぶ始末。

剣も魔法もそこそこ使える魔法剣士は下位であるとはいえ上級に手がかかる程には優秀であり、剣は剣士に及ばず、魔法は魔法使いに及ばずとも、その両方ともが国に召し抱えられている現状では喉から手が出る程に欲しい人材と言えるのだろうか。

「・・・・失敗したなぁ」

前衛として戦ってもらうつもりだったから魔王剣士を選んだのだが、こんなに人気があるとは想定外。それだけ人手不足であり、国の基盤が崩壊しつつある証左なのだが、それは今更か。

「わたしはこの人と契約をしておりますので、申し訳ありませんが」

「・・・・そうかい。ま、そいつが死んだら新しいパーティーを組むといいさ」

彼女のフォローに対して受付嬢は物騒な事を語るが、これも錬金術師の地位の低さ故か。

武器防具を作るならば鍛冶師、薬ならば薬師、建築ならば建築士などと専門職に比べて錬金術師の力は半分以下。力が弱いぶん他のクラスの方がまだましなクラスと称されるのが錬金術師であり、器用でもないただの貧乏クラス。精々荷物持ちがいいところで冒険者なんてものになれば死ぬのは目に見えている。当然、対応もこうなるのは自明の理。

分かってはいたけれどなんとも酷い扱いだ。

「・・・・スキルも一つしか無いね。能力も普通・・・・魔法剣士の子は魔法が二つか、これはいいね。どっちも攻撃魔法となれば引く手あまたって奴さ。まぁ、精々頑張んな」

受付嬢が見つめる石板には狙い通りの数値が表示されたのか、退屈そうに俺を見つめて銅板を差し出し、そのかわりと掌を向けてくる。

「1万ギルツ」

不愛想な声に対し、貰うものは貰った俺は懐から革袋から言われた通り小粒な金貨を掌へとのせ、ギルドを後にした。

「雰囲気悪すぎ」

「野蛮人の集まりですね」

まだ日の光が辺りを照らしていることを確認して俺達は悪態をつきつつメインストリートを王都の正門目掛けて歩み出す。

「申し訳ない。まさか魔法剣士がそんなに需要あるとは思わなくて」

「・・・・わたしもこれ程に国の基盤が危ういとは思っていませんでした。謝罪致します」

「一泊ぐらいする余裕あるかと思ったんだけど、余裕なくなっちゃったね」

「その様ですね」

そうやって軽口を叩いてみるが、背後の気配はそれを許さない。

ギルドで登録した後から湧いてでた数人の男達。あちらは気づいていないと思っているだろうが、こちらには筒抜け。微量な魔力を微細な粒にして周囲に飛ばす事で像を結ぶ独自開発魔法でもって脳裏に浮かび上がるのは武器を手にした屈強な男達の姿。恐らく契約で縛られているであろう彼女を俺から解放する為の善意の使者(独自解釈)のギルド員達。

装備の質からしても野良である訳が無く、色々と胡散臭い事この上ない。

「流石に人込みでは手を出してこないだろうけど、門を超えたら注意が必要だね」

「・・・・・振り切ると面倒では?」

「あぁ・・・・成る程ね」

此れまでの経緯からしてその手の輩には殺意を覚えているのか返答は苛烈。

しかしながら下手に撒いてしまうと能力以上である事がばれてしまう・・・・。

つまるところ見える範囲であちらに捕まえてもらうしか無いという何とも馬鹿馬鹿しい事になってしまっていた。

「なら、門を出てから森で仕掛けてもらおうか」

「わかりました」

彼女がそう答えるのに合わせて、少しばかり速足で門へと急ぐ。

門の前には門番が警備しているがもっぱら入る者達の監視であって、出ていく者達は素通り状態。とはいえ簡単なチェックはあるが、それについても先程手に入れたライセンスがあればスルーに近い。

「身分証を」

門番はそう問い掛け、俺達は勝手知ったるとばかりに銅板を掲げて見せる。

そうして待機する事数十秒、手元の石板に結果でも表示されたのか溜息と共に言葉を発した。

「・・・・検査終了だ。犯罪歴は無いな。登録は今日か・・・・死ぬのは勝手だが、入るときには金が必要な事は忘れるなよ」

こちらも不愛想だが、追手を差し向けるようなギルドよりは幾分かまし。

擬態眼鏡のおかげで平均よりちょい下ぐらいの微妙な少女の笑みでもって愛想笑いを浮かべて頭を下げ俺達は無事、脱出に成功したのだった。

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