幕間 竜のいる東京
東京は、転生者が多い。
同じようにモンスターも多い。
例えば、この東京のどこかには人知れず魔王がいて、東京のどこかでは人知れず異能バトルが始まっていて。
どこかの偉い神様がセブンでおにぎりを買って、伝説の勇者一行がサイゼで駄弁ったりして。
ただ、その密度が高いのが東京なだけである。
*
ある書店にて。
「ドラゴン、ですか?」
「そうだ。それもただのドラゴンじゃない。原初——つまり全てのドラゴンの始祖の一匹だ」
「そんなヤツがなぜ東京に?まさか迷い込んだなんて、まさか——」
「その、まさかなんだよ」
*
ある穴場のバー。
「近々、戦争が起きますわね」
「ええ、姐様」
「燃え上がる竜の姿がありますわ。これは……原初の?」
「赤き竜を求めて、幾許の命が天に昇るのでしょう」
「転生者達の運命《行く末》は…どうなるのでしょうか…」
*
「ストラトス。ストラトス。ストラトス」
巨大な錨がその身を揺らしながら叫ぶ。
錨が叫ぶ事などは無いのだが、この錨は違った。
しかし、男も特に驚く様子もなく、低い声で答える。
「三度も唱えるべきではない。その口を閉じろ」
「原初の竜が、竜が。竜が!」
“原初の竜”というワードに食いつく大男。
「原初の竜——厄災の事か?」
「覚める、醒める。終わる!!」
錨だから表情は分からないものの、その声は焦りが大きく現れている。
しかし、男はただ冷静にサングラスをかけ直す。
「いやいい、アンカー。俺らは見守るだけでいいんだ」
「見る、視る。観る?」
「そうだ、俺たちは…ただ、終末《《転生者達の終わり》》を見たいだけなんだ」
「ストラトス、ストラトス。ストラトス!!」
喜びの色に染まる声。
「だから、その名を言うんじゃない……ただな」
「ただ?」
「街は破壊されたくないから、出向くかもしれん。その為の用意はするぞ」
*
東京には、転生者が多い。
東京には、モンスターもいて、神もいる。
そして、人知れずひっそりと、転生者の終わりを眺める者もいる。
どこにもそんなヤツらはいる。
ただその密度が高いだけで。
原初の竜の力を求める者、転生者の終わりを観測する者はそれなりにいる。
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