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都市圏のファンタジア  作者: 恥目司
都市圏〜開闢〜
28/41

不夜都市 歌舞伎町 2

 エル・シーズンを先頭に固まって歌舞伎町の中を歩く3人。


「何だか……嫌にキラキラしてるよな」

 ケントが呟くと、身体からドラコが飛び出す。


「せやな。それがカブキチョウなんやろ……どういうトコか分からんけどな」

 深夜というのもあってか、歓楽街“歌舞伎町”はなおさら妖しく光を放っている。

コホー…


 何やら不思議な音が聞こえてくる。

「……何か、聞こえないか?」

「空耳やろ」

 今度は音を逃さないように息を殺して、耳を澄ます。

すると向こうから雑音混じりに、

コホー……コホー……

という、不気味な音が聞こえてきた。


「エル、まずい。何かが来る」

 ケントは咄嗟に前のエルを肩を叩き、引き止める。


が——

「え?誰ですか、あなた」


《《別人》》だった。

エルに似てすらいない白髪の中年男性がいた。

(え……?エルは?アンリは?)


ケントは周囲を見る。

歩行者の大群に囲まれて、エルとアンリの姿を見る事が出来ない。


「ドラコ、まずい……迷ったかも」

「はぁっ!?」


コホー……コホー……

 徐々に不気味な音が大きくなっている。

 気づいているのはケントとドラコだけ。


 周りの人々はただ歩いている。

 何も見ていない。ただ前を見て彷徨う様に足を動かしている。

 通行人の表情は、既に生気を失っていた。


「まさか……!」

「おい、ケント!!」

 先に“それ”に気づいたのはドラコだった。


 目の前に2メートルほどの巨大なからだが雑踏を掻き分けて現れる。


 ……古びた白いタンクトップと破けたジーパン、そしてガスマスクというあまりにも、奇怪な姿。


 青色をした筋骨隆々の筋肉がタンクトップからはみ出ている。


 手に持っている錆びた鉈包丁が、更に凶悪感を一層増していた。


 ガスマスクの中からは、コホー……コホー……と荒々しい息が漏れている。


 そのタンクトップのシャツの上。

 "Scrapper "と血の様に赤いペンキで書かれてある。


 スクラッパー。———潰す者。

 その文字を認めた時、ケントは咄嗟に戦闘態勢に入っていた。


「ドラコっ!」

「分かった!!」

 ケントの合図に合わせて、ドラコがケントの身体に入り同時に一気に拳を振り下ろした。


「うらぁぁぁあああ!!」


 ケントの渾身の一撃は、雄叫びと共に見事に腹に決まる。

 ズゥン!!

 重く、確実な一撃だった。


 しかし、スクラッパーはビクリとも動かない。


った……)

 怯んだドラコにスクラッパーは勢いよく、鉈を振り下ろす。

ドラコは咄嗟に、腕を交差して錆びた鉈を受ける。


 刀身が錆びているために腕が断ち切られる事はないのだが、それでも圧倒的なパワーでドラコの足元が地面にめり込む。


 ドラコは鉈の一撃を弾き、右脇腹に入り込む。そして一気にスクラッパーの頭を回し蹴ろうと体を翻す。

 だが、その直後、足をスクラッパーに掴まれてしまう。

(コイツっ……!!)


 スクラッパーはそのままドラコを振り上げ、さっきの錆鉈のように勢いよくドラコを床に叩き落とした。


 舗装された地面が割れ、アスファルトが捲れる。

「ごはっ!」

 強く打ち付けられた背中全体にヒビが入る音がする。


 スクラッパーが見下ろしている。

シュコー……


「なんや、本気で殺しにかかっとるみたいやな」


 ケントはクレーターの中で、ゆっくり立ち上がる。

 ボロボロになった身体で、やっと起き上がる。


「クソッ……負けたくねぇなぁ」

 ふらつきつつも、その目は未だスクラッパーを強く睨んでいた。


 その時、

 ザザ……ザ……


 突然ドラコの頭の中にノイズが入る。

 そしてスクラッパーの姿がぐわりと歪む。


「な、何や?」


 やがて目の前の光景がテレビの砂嵐の様になり、一切が見えなくなる。


 そして、ケントは立っていられないほどの頭痛に襲われる。

 頭を抱えて、呻き悶える。

「っっっづあああああああアアア!!!!!」

その痛みに思わず絶叫する。咆哮する。


喉が張り裂けるくらいに叫ぶその悲鳴は、

真夜中の歓楽街に大きく響いた。


そしてドクンと身体全体が跳ね上がる。

目の前が真っ白になる。

そして彼の頭の中に、流れる川の様にモノクロの映像が溢れ出す。



 ケントは見ていた。

 剣や弓を持つ人々の姿。

 そしてそれを焼き払う焔。

 煉獄に囲まれ、逃げようにも逃げられない哀れな人々。

 建物は燃え盛り、周りは火の海と化していた。

 阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる。

(なん……だ、コレ……)

 ケントは見ていた。

 黒い焔。怨讐の焔。

 ゆらゆらと燃え広がっていく焔を。

(熱い…息が、出来ない…)


《壊セ》

 黒い炎が唸る。

 そこでケントの視界は暗転する。



「あっ……がはっ……はぁ、はぁ……」

 ドラコが、スクラッパーを睨んでいる。

 いつのまにかケントの人格が身体から抜けている。


 ドラコは、何も変わっていなかった。


 ただ、その右半身から《《異常なほどの黒炎》》が噴き出ていた。


《壊セ》

「がっ、ぐっ…グオオオオオオォッッ!!!」


 ネオンに照らされる路に、強烈な咆哮が響き渡る。

 ガスマスクスクラッパーは、鉈包丁を振り上げ、ドラコに襲いかかる。


 刹那——スクラッパーの、鉈包丁を持っていた、その太い右腕が黒炎によって抉り取られる。

《壊セ》

 その右腕は瞬く間に灰となり、鉈包丁は紅く輝いていた。


《壊セ》

「ゴォアアアアアア!!」

 右半身の焔がさらに噴き出す。

 それは、獄炎ヘルファイア

 形を作り、巨大な焔の腕が顕現する。

 捻り出した黒い炎の巨腕は、スクラッパーの巨大な胴体を貫通する。


 その炎腕から噴き出る黒炎がスクラッパーを包み、その巨軀を焼き尽くす。


 断末魔を上げさせる暇を与えないままスクラッパーを消した。


 あまりにも、無様な消え方となってしまった。



 ギラギラとした照明がエルを照らす。

 ふと、エルは後ろを振り返る。

「……いない?」

 雑踏に紛れてしまい、ケントを見失ってしまった様だった。


「まずいな…大気中の魔力の消費が激しい…魔力に干渉して暴走していないと良いが…」


 彼の身を案じながらも、ひたすらに歩き続ける。


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