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ドキドキ☆お泊り編

いつも読んでくださってありがとうございます!

「泊めてください」

「は?」


終電を乗り過ごした翔子はそんなことをのたまってきやがった。

俺は翔子の言っていることの意味が全く分からなくて、一瞬フリーズ。いや字面では何を言っているかわかるんだよ。たださ、その意味が違うやん。女である翔子が男である俺の家に泊まるってさ。


「とりあえず、家の人に連絡するのは?」

「私、1人暮らしです」

「タクシー使うのは?」

「そこまで金がないです」

「お金なら俺がー」

「そこまでしてもらうわけにはいきません」

「え~・・・」


何か翔子から滅茶苦茶圧力を感じるんだが・・・こうなんといったらいいのか分からないけど、頑なに家に帰りたくないというような・・・声もいつもの猫撫で声じゃなくて本来のトーンで話しているし・・・

こうなった翔子は意地でも動かないのは去年散々味わっている。俺はため息をついた。そして、


「・・・うち汚いけど平気?」

「泊めてもらうのに贅沢は言わないですよ」

「さいですか・・・それなら来な!」

「!!はい!!」


翔子は元気いっぱいに返事をしてきた。何か楽しそうだが、ま、あまり深く追求しないようにしておくかね。あっ、そうだ。家になくなってきたものを補充しないと。


「後、コンビニ行ってくる。ちょっと待っててな」

「あ、私も行きます!あっ!!!」

「なんだよ・・・?」


俺は小走りでコンビニに行こうとするが突然翔子に呼び止められる。そんなに何か閃いたことでもあったんかなと振り返ると、三日月型に口元を歪めて、


「コンドー●を買ってくるんですよね!?」

「なわけねぇだろ!!」


翔子の阿呆な発言で俺は膝から崩れ落ちながら、夏の夜にツッコミを響かせた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

コンビニ内

「これこれ~」

「伊織先~生、何買っているんですかぁ?」

「ん?飴だよ」


俺は重度の飴中毒者だ。1日に10個くらいは普通に舐めるしな。今俺が持っているのは『炭酸飴』という飴だ。飴なのに炭酸のシュワシュワ感を味わえ、かつ、飴の細部にまでしっかりと炭酸が行き届いているため、最後まで楽しめる。俺のお気に入りだ。


「へぇ~後で先生の(飴)を舐めさせてくださいよぉ」

「・・・いいんだが、何か誤解を招く発言してない?」

「そんなことないですよぉ?だってこれから伊織先生の部屋に行くわけだしぃ?」

「待て待て待て。狙っているよな?狙ってますよね?」

「?」

「おいおい~突然カマトト振るなやぁ」


翔子は滅茶苦茶純粋そうな顔をしているが、その瞳の奥で大爆笑しているのを俺は見逃していないぞ?これ以上変な方向に話を振ると、さっきから羨ましそうに首だけをこっちに向けながら、品出ししている店員君に殺されちまいそうだ。


「翔子は何を買うんだ?」

「ん~私ですかぁ?甘いものでも買おうと思ったんですけど、先生の家でもらえるとのことなので、買わなくてもいいかなってなりました」

「だから、さっきからわざとだよねぇ!?」


ヤバい。品出し店員が血涙を流している。『神はなんで俺に対してこんな試練を!』なんて慟哭している。可哀そうすぎる・・・

俺はこれ以上店員君に迷惑を掛けたらあかんと思って、レジに並ぶことにした。それにつられてひょこひょことペンギンのように俺の後ろにぴったりと翔子はついてきた。


「次の方、どうぞ~」


俺は翔子と声をかけてきた店員さんの元に向かった。これまたさっきの店員君と同じくらいの年で、営業スマイルをしているが、隣の翔子を見た途端に俺に対する視線が「リア充死ねや」と語っていた。


「袋はどうされますか?」

「あ、大丈夫でー「伊織先生!」・・・なんだよ」


翔子が俺の半そでをクイクイと引っ張ってくる。いちいち仕草が可愛いな。だが、その瞳がいたずら心に満たされていた。ニヤリと笑って、


「ゴムは買わなくいいんですかぁ?」

「おいおいおいおいいいぃ!!?」


店員君、被ってしまうから店員君2としておこうか。店員君2は動揺していたが、流石の笑顔の能面でこの難局を乗り切った。だが、彼の瞳は嫉妬と羨望で満たされていて、よく見てみると、拳に力が入りすぎて、血が流れている。だが営業魂が彼を使命へと駆り立てた。


「ゴムなら右から数えて2番目の棚に置いてありますよ」

「そうなんですねぇ~ありがとうございま~す。先生、私が取ってきますね~」

「いやいやいらんやろ?!!!」

「いいんです。私がシたいだけですから。キャっ♡」


とか宣って、商品を取りに行きやがった。まさか本当に俺と///


「おい、クソ客。こんなところでいちゃつきやがって当てつけですかこの野郎?」

「いくらなんでも口悪すぎじゃね?」


さっきまでの営業スマイルはどこに行ったのか、完全に嫉妬に燃える怒りのz戦士だった。そして、どこから聞きつけてきたのか店員君がレジに来ていた。


「兄者!!そいつさっきもあの可愛い子に息子を舐めさせるって言ってたぞ!!」

「言ってない、言ってない。てか兄弟かよ・・・」

「「いやノリ」」

「仲いいな」


普通に楽しそうな職場だ。だけど、客に殺意マシマシなのは良くないぞ。2人とも身体中に力が入りすぎて、血が出まくっている。そこに、


「先生~!先生ってサイズいくつですかぁ」

「何を言っているんだ君ぃ!!?」


俺が会計の時に出したTSUTAY●のポイントカードを手に持った店員君2と手とうの構えを取った店員君に首を押さえられた。ここで下手な返しをしたら殺すぞと言われている気分だった。


「とりあえず、通常のサイズにしておきますね♡」

「お、おう」


俺は全身の血管という血管から血を拭き出している人間を見たことがなかった。嫉妬する人間ってこんなになるのかとマジで心の底からビビっている。


「兄者、とりあえずこいつの指を詰めるべきじゃないか?」

「ヤクザかよ・・・」

「いや、弟よ。そんな生ぬるいのじゃだめだ!コンクリートに詰めて東京湾だ!」

「天才か!兄者!」

「よし!車を出せ!」

「おう!兄者!」

「おいおい、本人の首元で殺人方法について話し合うんじゃないよ」


首元で行われる殺害方法の話し合いに俺は冷静にツッコミをいれる。とりあえず、早く翔子に戻ってきてもらって、誤解を解いてもらわないと俺の命が危ない。どうせゴムだって、冗談だろうからな。


「先生~お待たせしましたぁ~ゴムでぇ~す」

「俺に何の恨みがあるっていうんだよぉ~」


俺は死を覚悟して翔子の方を見た。すると、確かにゴムを持っていた。輪ゴム(・・・)をな。


「え?」

「先生、どうかしましたぁ?」

「いや、輪ゴムか輪ゴムだよなあ!!」


ワハハと俺は笑った。何か俺は凄く恥ずかしい勘違いをしていた。物凄く恥ずかしいのを笑いで誤魔化した。しかも店員君1.2は翔子が現れると同時に退散して元居た持ち場に戻っていた。


「では、お会計しますね」


こ、こいつ。さっきまで俺に対して鬼神のごとくヤバい顔をしていたっていうのに、誤解だと分かると天女のような優しい視線を俺に向けてくる。おそらく俺が翔子にからかわれているだけの哀れな存在だと思ってくれているようだった。さっきまで殺意を向けられていた相手にこんな風にみられるとは・・・

しかし、ここで終わらないのが翔子クオリティだ。


「それじゃあ外で待ってますね~。ああ~先生の家楽しみ~」


ウイーン

自動ドアが閉まる。

そして、店員君2と目が合う。彼は中指を俺にたてて、


「お会計は500円と幸せ税率1億バーセントになりま~す。払えない場合は東京湾で~す」

「どっちもごめんだわ!」


俺は500円をレジに置いて、迫りくる店員コンビから猛ダッシュでコンビニから出た。もう2度とこねえよこのコンビニ・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺の家は駅から歩いて5分のところにある。ワンルームだがロフトがあるので、通常よりも圧倒的に広く感じるだろう。それでいて家賃は3万ほどなのだから破格の値段だろう。いい部屋を見つけたものだ。

もっとも今日は翔子を連れているので若干緊張しているがな。


「着いたぞ~」

「へぇ~ここですか~」

「まぁな、何もないがテキトーに寛いでくれ」

「お邪魔しま~す」


俺は部屋の鍵を開けて、翔子を家に招く。自分の家に他人がいるなんてすごい新鮮だ。


「ここが・・・」


翔子は何か感じ入っているようだった。


「どうだ?何もないだろ?」

「はい、もっとイカ臭いと思ったのですが・・・」

「俺の家に来て一番最初の確認事項がそれかよ・・・まあいいや、俺はロフトで寝るから、翔子はそこのソファーで寝てくれ」

「ええ~一緒に寝ましょうよ~」

「馬鹿言うな。風呂はそこだ。先にシャワーでも浴びてきな」

「先生、おそらく『先にシャワーでも浴びてきな』はテンプレなので1度言っておきたかったんだと思いますが、普通にカッコつけすぎて気持ちが悪いです」

「う、うるせぇよぉ」


なんなんだよこの元教え子・・・なんで俺の考えをいちいち先読みできるんだよぉ・・・


「そりゃ一番最初の教え子だからじゃないですかぁ?」

「だから俺の考えを読むなや・・・ほらタオルと・・・着替えはテキトーに見繕っておく」

「はぁ~い」


翔子はそのままバスルームに入った。俺も翔子に会いそうな寝巻を探したが、若干大きいのがほとんどだ。メンズなのだから仕方がない。とはいえ、裸で出てきてもらっても困るので、俺は手元にある一番小さくて来やすそうな寝巻を持っていくことにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「入るぞ~」

「キャー先生のエッチ~(棒」

「はいはい、着替え持ってきたからなぁ」

「あ、ありがとうございま~す」

「あいよ」


なんか変な気分だ。扉1枚を隔てた向こう側に裸の翔子がいるんだから・・・そう思ったら、妙な興奮と高鳴りを感じて動きが止まってしまった。が、頭をぶんぶん振って雑念を振り払う。


「あっ先生!下着とか盗まないでくださいねぇ!!」

「っ//////盗まねえよ!」


ったくあいつは本当に俺の内心を当てるのがうまい。まあおかげで変な気分も薄れた。俺は気を紛らわすために、パソコンを開いてテスト勉強と今日のニュースを見た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お先ありがとうございま~す」

「おー、うっ!!?」


風呂上がりの翔子に驚いた。風呂上がりで身体から湯気が出ていて、髪がしっとりと濡れている。端的にエロい。が、そんなことよりも大きな問題がある。それは翔子の恰好がいわゆる彼シャツ(・・・・)ってやつだった。サイズの合わないワイシャツが腿の半分くらいのところまで覆い、ズボンは俺が貸したグレーの半ズボンを履いていたのを見るに・・・


「・・・なぜ俺のワイシャツを着ているんだ?」

「ええ~置いてあったので、私に着てくれってことかとぉ」

「嘘つくなっての・・・」

「ムフフぅ~まあそうですね~で、どうですか?私の彼シャツ姿?」


翔子はくるっと回って俺に見せつけてくる。正直破壊力は抜群だ。自分が来ているものを異性に着てもらう。俺はそれのどこが良いのかわからなかったが、ようやっとわかったよ。これは体験しないとわからない萌えだな。


「ほれほれ~どうなんですかぁ?」

「////っ~似合ってるよ!似合ってます!これでいいかこん畜生め!」

「照れてる先生可愛い~(笑)」

「もう知らん!さっさとこれ着ておけ!」

「ブっ、ちょっ酷いですよぉ!」


俺はにやにや笑っている翔子に向かって、用意しておいた上の寝巻を顔面に投げつけてさっさと浴室に入った。これ以上あいつと会話していたら本当に変な気分になりそうだった。俺は今日あった出来事を忘れようと湯船の中に入ったが、そういやあいつが入った風呂じゃんと考えて、息子が反応した。


「ああ~~もう煩悩退散!!!」


壁に頭をガンガン叩きつけて俺は賢者になった。そういえば、万物はすべて母なる海から生まれた。つまり、すべての水がすべての人類、あるいは動植物、すべての生き物とつながっているということだ。ということは和葉さんとも同じ時間に水に浸かれば、同じものを共有したことになるのでは!俺って天才じゃん!

・・・・馬鹿なことを考えて俺は完全に冷静になった。そのまま身体を洗って俺は浴室を出た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いいお湯だったぁ~」


俺は風呂から出たが、何も反応がない。もう寝たのか?そのまま浴室から部屋に戻ろうとしたのだが、翔子が熱心に何かを見ていた。


「お~い、何・・を・?」


見てるんだという言葉は続かなかった。なぜなら翔子は俺のパソコンで『義姉のススメ』をプレイしていたからだ。俺は全身から血の気が引いた。そして、振り返らずに


「先生って、こういう巨乳のお姉さん(・・・・・・・)が好きなんですね」

「いや違うよ。それは弟のパソコンで全く俺とは関係ないんだ全くあいつったらこんな巨乳が好きだなんてないや笑っちゃうぜ今度あったらしっかり返しておかないとなだからそれはおれのパソコンじゃないんだだから翔子も見るのはやめておけよあとはいくらやばい性癖であったことがないやつとはいえまわりにばらされてからあとで知り合いからその話を聞くと結構傷がつくからなさぁそのエロゲを消して早く俺にかえしたまえかえしてください」


俺はこのゲームの持ち主が架空の弟の持ち主であることにしてなんとかこの窮地を脱しようかと思った。そのときに動揺しすぎて、話し方が滅茶苦茶早口になった気がするがバレてはいないだろう。


「へぇ~それじゃあこのゲームの主人公の名前が『伊織』になっているのはなぜなんですかね?」

「それはゲームの主人公の名前がたまたま『伊織』で俺と同じだったんだよ。偶然って怖いなあ」

「なるほど、ところで先~生」

「な、なんだ」

「どうして、このゲームの主人公の名前が『伊織』だってことを知っているんですかぁ」

「そ、それは」


やられた・・・完全に罠にハマってしまった。だが、まだだ!まだ終わらんぞ!


「それはたまたまそのゲームの広告を見てな」

「そうですか~ところでこのお姉さんたち、おっぱい大きくて可愛いですね」

「ああ!そうなんだよ、特にこの・・・」

「語るに落ちるってやつですね~」


ああ~やっちまった。これは確定だ。もしプレイしていなかったとしても、このお姉さんたちに俺が惚れているとバレてしまった時点で終わりだ。


「っっぐ、だ、誰にも言わないでください!!!」


俺は土下座した。なんでゴリといい翔子といい俺は自分の性癖がバレてしまう星の下にでも生まれてきたのか。もう嫌だ~なぜかわからないが、これだけでは済まない気がしてならない・・・


「・・・それじゃあ他にも持っているエッチなゲームを出してください」

「・・・なぜ?」

「あ~それならぁ塾長にでもー」

「よっしゃ待ってろすべて持ってくるわ!」


畜生~なんで俺は元教え子の同僚に俺のエロゲ(宝物)を公開しなきゃならんのよ!これなんて露出プレイだよ・・・俺はwhite chocolate先生原作のゲームをすべて翔子の前に置いた。


「義姉、姉、年上、人妻、ママ、同級生、亜人・・・へぇ~ほぉ~」


俺の持ってきたゲームをすべて1つ吟味していく。そして、そのたびに意味ありげな声を漏らすのを俺は黙って正座で見ているしかなかった。悠久にも感じられた時間、ついに翔子が口を開いた。


「先生って年上が大好きなんですねぇ」

「・・・悪いか?」

「別っつにぃ」

「何か怒ってる・・・?」


翔子の声音が若干下がっている。これは何か機嫌が悪い時に起こることだ。もしかしたら、俺の性癖が気持ち悪すぎて、萎えてしまったのでは?いやだとしてもそれは俺は何も悪くないやろ・・・


「怒ってないですよぉだ!それよりこれで全部ですか(・・・・・・・・)?」


翔子が滅茶苦茶俺の目を見てくる。俺はその真っすぐな視線に対して真っ向から打ち合うことを決めた。


「当たり前だろ?俺の目を見てくれ!」


どうだ。この曇りのない眼を!ウユニ塩湖くらい綺麗な瞳をしているはずだ。後で鏡を見てこよう。


「そうですかぁ、じゃあロフトを確認させていただきますね」

「なんでぇ!!?」


翔子は俺の静止も振り切ってロフトに無理やり上がってしまった。頼む、あの箱だけは見つからないでくれ!他はまだいいがあれだけはダメだ!神様仏様ご先祖様~どうか我に力を!


「ん~『Fat● stay night』、『CLANNA●』これって何ですか?」

「それもエロゲだよ・・・」

「へぇ~」

「ほらそれくらいしかないだろ?もう俺が年上好きのド変態でいいからさ」

「それは確定なんですがね・・・」

「それは確定なんですかい・・・」

「だけど、何か女の勘が働くんですよね~」

「今回に関しては外れたな、早く戻ってきな」

「う~ん、ん?この段ボールは?」

「!!それは俺の大学の資料が入っているだけだぞ・・・」


俺は声が最後震えてしまった。嘘は言っていない。大学のレジュメとかを一気にまとめていれてあるのだ。しかし、問題はそのレジュメと一緒に入っているブツだ。


「本当ですねぇ~先生って真面目ですねぇ~大学生なのに」

「大学生だからこそ自分の望んだ勉強ができるからな。真面目というより趣味の延長戦だよ」

「そうですかぁ」


翔子の足音がロフトの階段に近付いてきていた。俺は心の底から安堵した。声のトーンからして中のブツは見つからなかったようだ。そして、翔子が手に何も持っていないことに安堵した。


「だから何もなかったろ?」

「ええ、ただこんな気になるもの(・・・・・・)を見つけてしまって(・・・・・・・・・)

「え?あ・・・」


翔子は自分の服の中に隠していた、ブツを見つけてしまった。パッケージに『エロ学』というタイトルの。


「何々~、内容の方が、『数々の落ちこぼれ生徒を難関校に合格させてきたエリート塾講師が女子限定で勉強を教えることになったのだが、その手法がエッチな手ほどきをして、能力を引き出すというようなものだった』とあるのですが、これはどういうことですかぁ?(笑)」

「もう、殺してください・・・」


よりにもよって元教え子の翔子にバレるとは・・・


「先~生~、今どんな気分ですかぁ~()教え子に自分の性癖がバレた気分はぁ?ねえねえ、教えてぇ教えてぇ?」

「もうやめてぇ~、てか俺はストーリーで買ったのではなくwhite chocolate先生が原画をやっているからこのゲームを買ったのであって、他に他意はないんだよ」

「へぇ~このゲーム発売が去年の夏ですねぇ」

「お、おう」

「と・い・う・こ・と・はぁ~、伊織先生は私が本気で勉強に取り組んでいる最中にぃ、こういう妄想をしちゃってたんでしょう?」

「///////」


翔子は最高の玩具を見つけたっていう顔をしていやがる。はい。翔子の言う通りです。でも、本当に最初は他意はなかったんだよぉ。white chocolate先生が原画の新作が出るって聞いたから、なんの前情報を見ないで買ったんだよ。そしたら、珍しく年下の教え子がヒロインという設定だった。しかも思ったよりも良いクオリティで最高でした。だが、現実世界では丁度夏期講習だった。翔子は本気で頑張っていたのだが、そのね?、ちょくちょくそのシチュエーションが頭に思い浮かんじゃったりしてね?はい、気持が悪いですね。ごめんなさい。だから俺は今塾では男以外の生徒を取らないようにしている。


「へ・ん・た・い・せ・ん・せ・い(ボソっ」

「~~~~~~////////」


ウィスパーボイスで俺の耳に声がかけられる。俺は全身がむずがゆくなった。


「ま、今日のところはこれで終わりにしておきますよぉ」

「そうしてくれると助かります・・・」

「また明日から覚悟してくださいね♡」

「はいはい・・・」


翔子はこれ以上はいじる気はないらしい。ただなぜだろう。最初にエロゲを物色していたときに比べて、元気が良さそうというか明るいというか嬉しそうというか・・・やめておこう。何か藪蛇のような気がする・・・


「それじゃあ寝ますか、今日は死ぬほど疲れた・・・」

「ですねぇ私も疲れました♪」

「なんていい笑顔だよ・・・」

「だってこれで先生をいじるネタ・・・ゴホゴホ、先生と楽しく飲めましたしね!」

「前半に本音が漏れているぞぉ~」

「ハハハ、なんのことですかねぇ~」


明日からのことを考えると死ぬほど萎える・・・ゴリだけだったらまだよかったが(良くはないが)、翔子にバレたのは痛すぎる。


「ハア~とりあえず俺の布団を貸してやるから寝な、明日は俺もテストだから早いんだよ」


まあ俺の場合は勉強しなくても全然余裕だけどな。恐ろしいのは寝不足によるパフォーマンスの低下だけだ。


「あっ」

「ん?」

「テスト勉強忘れてました・・・」

「はっ?」


俺と翔子は完全に寝る態勢になっていたのに、時が止まった。そして、翔子が口を開く。


「・・・伊織先生、先生って経済学専攻でしたよね・・・?」

「そうだが・・・」

「勉強教えてください」


時計は午前2時を指す。俺たちは半年ぶりに教師と生徒の関係に戻って、朝まで勉強をすることになり、そのまま朝まで一睡もすることがなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「疲れ・・・た」

「すいません・・・本当に助かりました」


翔子は俺に対して本当に申し訳なさそうにお礼を言ってくる。まあ反省しているならいいか。


「次からは気を付けろよ?毎日勉強していればこんなことにはならないんだからな」

「・・・超前向きに脳内会議で検討に検討を重ねた結果お伝えしたいと思います」

検討使(遣唐使)か(笑)どこぞの総理大臣みたいなことは言うなっての(笑)」


ま、俺みたいに勉強しているのが例外だからな。基本的に大学生なんて、酒と異性と金のことしか考えてないからな。


「それよりどうですか?」

「ん?何が?」

「またまたぁ~あのゲームみたいな妄想がはかどったんじゃないですかぁ?」

「・・・・・」

「ちょっ!無言で拳を上げないでください!調子に乗りましたぁごめんなさい!」


翔子が若干半泣きになりながら土下座をする。全く、流石に悪ふざけがすぎる。そんな妄想をしないわけがなかったわ。畜生!はかどっちまったよぉ

翔子は俺の思惑などわかっているんだろう。土下座するときに顔が笑っていたからな。


「そんじゃあ着替えていくか~」

「はぁ~い。覗かないでくださいね?」

「・・・・」

「無視は酷いですぅ!」


俺は寝てないし、疲れたで翔子の相手をする体力が全くなくなかったので、粛々と着替えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「忘れ物はないか?」

「はぁ~い」

「・・・で、それ(・・)本当に持っていくの?」

「はい!!先生の性癖を理解するために重要です!」

「だああ!!声が大きい!!俺がご近所で変態だと思われてしまうじゃねぇか!」

「先生の方が声が大きいですよ・・・」

「確かに・・・」


翔子は言うに事を欠いてか例のブツを持って帰るとか言ってきやがった。もちろん俺に拒否権などあるわけがないので、素直に渡した。もうこれ以上この話をすると後でひどい目に合いそうなので、話題を変えることにした。


「とりあえず、飯を食いに行くか」

「はぁい!」

「といっても、朝早いから牛丼くらいしかないけど大丈夫か?」

「いいですよぉ。行きましょう!」


俺たちは勉強で疲れた頭と身体を持たせるために、朝からがっつり食った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふう~これでばっちりですね」

「だな~うっかりミスをしないようにな」

「はい!」


俺たちは飯を食った足でそのまま電車に乗り池袋の向かった。ここまでは俺たちの最寄り駅だ。否が応でもここまでは一緒だ。翔子も若干目の下に隈があるが、まぁ大丈夫だろう。こいつはやるとなったら最後までやる女だ。結局今日の勉強ももっと早く終わったのに100点を取りに行く!とか言って手を抜かさせてもらえなかったもんな。流石俺の一番最初の教え子だよ」


「伊織先生、漏れてます///その、恥ずかしいです///」

「あっ悪い悪い」


俺の独り言は途中から口に出ていたようだ。これが俺の黒歴史とかだったら、まじもんの大災害(カタストロフィ)だ。独り言を押さえる方法とかあるのかね。


「コホンっ、それじゃあ伊織先生、ここでお別れですね」

「だな」

「昨日は本当にありがとうございました」

「気にすんな。出世払いで頼むよ」

「余計な事いわなければ、かっこ・・・」

「なんだよ、しっかり最後まで言ってくれよぉ・・・」


クスクスと翔子は笑う。俺もそれにつられて笑う。


「それでは伊織先生!またバイトで!」

「おう!またな!」


俺たちは互いに違うホームに向かって歩き出した。


『重要なお願い』

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