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逆誕祝い(俺も何を言っているのかわからないぜ☆)

翔子を書くのは楽しいです(笑)



「いらっしゃいませ~~2名様ですか?」

「あっ、はい」

「お席に案内いたしますね~」


俺たち(・・・)は最大の難関を超えた。


「危なかったですね~年確されなくてよかったです(ボソッ」

「なんでそんなことで俺はドキドキしなきゃならんのよ・・・」


俺は今回、ゴリとではなく小山翔子と居酒屋に来ていた。何でこうなったのかと先日のLIN●でのやり取りを思い出していた。

================================================

『い・お・り・せ・ん・せ・い♡ 今日は暇ですよね?お話しましょぉ~』

『なんで暇って断言するだよ。忙しいわ』

『そんな暇で暇で仕方がない伊織先生に私とデートする権利をあげたいと思いまーす!ドンドンパフパフ~!!』

『話聞いて、もとい、文章をちゃんと読んで』

『またまた~先生ってツンデレだから本音は逆にあるなんてことは知っているんですからね』

『そうか、小山に会いたくてしょうがないわ』

『そうですかぁ~それなら7/24に会いましょう』

『俺の本音は反対にあるって言ったの君だよね?』

『5秒前にツンデレ機能は停止しましたよ?』

『なんて都合のいい耳をしているんだよ・・・』

『そんなことより、7/24に会いましょうよぉ!!先生のためだけに彼氏とのデートをほっぽり出したんですよぉ』

『ならそっちを大事にしなさいって』

『運命の人じゃない気がしたんで、今別れました』

『彼氏ぇ~』

『で、7/24は会えるんですか?会えるんですよね?でも本当に忙しいなら断ってくれて構いません・・・( ;∀;)』

『わかったよ、7/24な』

『童貞チョロ(ボソッ)、わーい先生に会えるぅ~(≧▽≦)』

『どんなに鈍感系主人公でも文字で記録されれば見逃さないんだわ~』

『おっと失敬~それじゃあ、7/24に会いましょう!楽しみにしててくださいね!』

『はいはい』

『はいは一回!』

『胚』

『殺すぞ?(#^.^#)』

『はい!すいませんでしたぁ!』

『もうふざけたこと言わないでくださいね~では7/24に~』

『了解』

===============================================

そういえば7/24ってあの日か。ハア~、まさか本当にあの戯言を実現する気(・・・・・・・・・・)なんじゃ(・・・・)・・・いや、それはない・・・と信じたいが翔子のことだ。絶対に狙いがあるはずなんだよなぁ~。ハア、探しておくか。

今日は7/22。丁度大学ではテスト期間に入っているが、俺は毎日しっかり勉強をやっているので、そこら辺のやつらとは違って、何が来ても首席を取れるくらいには準備してある。


「さて、たまには年上らしいことをしますかね」


俺はスマホの電源を入れて調べものをする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

7/24

俺たちは池袋に集合になった。お互いテスト期間で大学に用があったので、俺たちにとって池袋は丁度よかった。埼玉よりの人間にとっては池袋はホームグラウンドだ。とは言っても池袋でも広いので大体、いけふくろ●の前に集合になるのだがな。てかあいつ遅いな・・・もう5分くらい遅れているんだが・・・ゴリだったら脅しをかけてくる時間だぞ?


「何やってんだか・・・」

「だーれだ♡」


俺は何者かに背後から視界を奪われた。


「何やってんだよ、こやm「翔子」翔子・・・」


俺は手を振り払って背後に向き直る。そこにはニコニコした翔子がいた。

今日の恰好は白い半袖のトップスで首元が大胆に逆三角形に空いているため、首元のラインが良く見えている。膝よりも若干長い青みがかかったデニムのスカートを着ていて、夏場でも通気性のよさそうな恰好をしている。

それよりも


「翔子、お前が馬鹿な事をしたせいで滅茶苦茶注目されているんだが・・・」


俺は恨めし気な視線を送るが・・・


「そうですか?彼氏ができたらいつもやってあげてますよ?」

「なるほど。だが俺は彼氏じゃないんだが?」

「ええ、なのでぇロールプレイングとして伊織先生にやってあげました。一生童貞の先生には最高の思い出ですよね?」

「おいおいミス翔子~ここはいけふくろ●の前だぜ?俺のトップシークレットが池袋にさらされちまったじゃねぇか~」


周りの人間が俺を見ている。軽蔑、同情、嫉妬、憐憫、侮蔑・・・なぜ池袋にまで来て俺はこんな視線にさらされなければならないんだよ・・・翔子がなまじ可愛すぎるせいで余計に注目されている。


「おい!翔子!!」

「ん?」


全然知らない声がいけふくろうに響く。しかもその声は俺の隣にいる翔子に向いていた。翔子の顔は「ゲッ」って感じに苦々しい表情になっていた。そして、いけふくろ●に集まっていた人達は俺たちの方をより一層注視した。


「おい!どういうことなんだよ!俺と別れようなんて!俺たちまだ3日しか付き合ってないだろ!」

「ええ~だってぇ、たくみとはもう運命を感じられなくなっちゃってぇ」

「早すぎるだろ。蝉だってもう少し長生きするぞ」


ちなみに蝉は土の中で2年間は生きると言われている。

しかし、話を聞くに、この男が7/24に遊ぶはずなのに翔子が運命(笑)を感じられなくなって無残に捨てられた男か。可哀そうすぎる・・・


「それよりぃ、なんで私の居場所が分かったの?」

「え?勘」

「もう運命の相手でいいんじゃねぇの?」


勘で翔子を見つけられるとかもう運命の相手だろ?普通に超常的な力が働いているようだし、運命以外の何物でもないだろ。


「翔子!頼む考え直してくれ!」

「ええ~無理ぃ」

「俺は諦めないぞ!翔子!俺たちの赤い糸は切れない!なぜなら俺が昨日神社で自分の髪を切ってそれを巻きつけてお祈りしてきたからな!『一生翔子といられますように』ってな!」

「「「「「「「「「「え?キモ」」」」」」」」」」


俺以外のこの場の人間のすべての声が揃った瞬間だった。こんなことでも人間って一致団結できるんだな。しかし、俺の考えは凡愚共とは全く違った。俺は総池袋スカンを食らってうなだれてしまったこの哀れな男の肩をポンポンした。


「あ、あんたは?」

「俺はそこにいる元教え子の同僚でバイトをやっているものだ」

「そういえばさっきから翔子の隣にいたな!何やつ!?」

「侍か。いや本当にただの同僚よ。それよりごめんな・・・俺の教え子がテキトーなばっかりに今日のデートがなくなっちまって・・・お詫びと言っちゃなんだが、あんたという男に敬意を表して、新しい女の連絡先を教えてやるよ」

「せ、先生・・・!」

「誰が先生だ。ほい、こいつに連絡してみ」

「このお方は美人なんですか・・・?」

「ああ」

「髪は?」

「黒髪ロングで基本的にはポニーテールだ」

「む、胸は・・・?」

「絶壁だ・・・」


俺は人生最大の賭けに出たと言ってもいい。この男が巨乳好きだった場合俺の計画は総崩れ。隣の翔子を見てみると、普通過ぎて何も参考にならない。俺は額から落ちてくる汗に気が付かないままごくりと唾をのみ込んだ。


「最高じゃないっすか・・・!先生いいんですか!?」」

「先生呼びは定着してんのかよ・・・ま、そいつには彼氏がいないようだから、頑張ってくれよ!!」

「は、はい先生!それと翔子!先生と頑張れよ!俺は新しい運命に向かって走り出すからよ!」

「う、うん」


ええ~とたくみ君だったか?彼は新しい出会いを求めて俺からもらった連絡先を抱えて一人いけふくろうの雑踏に進んでいった。


「そんじゃ行くか」

「は、はい」


俺は笑顔で翔子の方を向き直った。翔子は若干狼狽していた気がしたが、あまり気にする必要はないだろう。たくみ君がいなくなると、周りの人間も蜘蛛の子を散らしたようにまた騒がしいいつもの池袋に戻った。


「ちなみにさっきたくみにあげた連絡先って誰なんですか?本当に女性なわけがないですよね?」

「ん?いや、そこはマジ」

「先生・・・」


翔子がゴミを見るようにこっちを見てくる。やめて!なんか目覚めそう!


「ただ枕詞に警察官(・・・)が付くけどな」


あの手の変態はブタ箱に入ってもらうのが一番だ。だったらゴリに対してセクハラして捕まるのがもっとも効率的だ。


「伊織先生って、意外と鬼畜ですね・・・」

「んなわけ」


俺はハハっと笑っていたが、翔子はガチでドン引きしていた。なぜだよ・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺たちは池袋からサンシャインの方に向かっていた。何かしたいと思ったらサンシャインになんでもあるからな。

「そんで、何して遊ぶ?」

「ええ~伊織先生!なんでデートプランを考えてないんですか!?」

「なぜ逆ギレされてんだ俺・・・だってお前が誘ってきたんじゃん。てっきり何かしたいことがあると思ったんだが」

「もう~万年童貞選手権優勝者はこれだからもう・・・」

「待って、その不名誉な大会に参加したことなんてないんだが・・・」

「この地球上の40億人の男性は毎年強制参加ですぅ~~」

「クソムカつくな☆」

「で、毎年卒業できなかった人はその年の童選の記録に載せられま~す」

「ヤバいじゃんそれ」

「で、20年間毎年載っている先輩は同年代じゃトップです」

「俺以外にも絶対同士がいるはずなんだが・・・」

「そこは審査員が私なので」

「お前かよ!」


マジでくだらない話が止まらねえ。ここらでやめとかねぇと話が進まん。


「ハア、で、本当に何がしたいんだ?俺がいないとできないことなんだろ?」


俺は今日、翔子に誘われた理由はなんとなく察していたが、なるべくなら外れてほしいと思って聞いている。すると、翔子は笑顔になって。


「先生、今日は何月何日ですか?」

「7月24日です」

「私の誕生日は?」

「4月27日です」

「反対にすると?」

「7月24日です」

「つまり、今日は私の逆誕なわけです!」


ムフーとしていて可愛いが、俺は目頭を押さえた。


「・・・ちなみに逆数とは?」

「?逆さから読んだ数でしょ?やだなあもう~(笑)」


翔子は俺の背中をバンバンとたたいているが、俺の教育が失敗したと思って、親御さんに土下座をすることを決めた。


「じゃあやっぱり行きたいわけね・・・」

「はい!行きましょう!」


翔子はこれでもかと破顔一笑して、


居酒屋へ(・・・・)!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

冒頭に戻る。

俺たちは個室に案内されて、互いにおしぼりをもらい手をフキフキした。翔子はさっきから初めての居酒屋に落ち着かないようだ。

俺たちは今回、『漁民』に来ていた。年確をされないような店ってここくらいしか思いつかなかったからな。


「へぇ~居酒屋ってこんな感じなんですね。なんか気分上々↑↑って感じです!!」

「ほぉ~わかるんかい」

「雰囲気ですけどね~あーあまた私の初めてを先生に奪われちゃった」

「誤解を招く発言はやめてくれ。ほら店員さんが俺を睨んでるじゃねぇか」


完全に誤解なんだよぉ~畜生め!


「じゃあ頼みますか!こういう時って何を頼んだらいいんですか?」

「ん~わからん。俺は初めからビールだったな」

「へえ~じゃあ私も分からないし、それにしま~す」

「んじゃタブレットに入力するか・・・何か食いたいものはあるか?」

「ん~見せてください」


翔子は俺からタブレットを奪って食べ物を探す。俺もつまみを食いたいから選ばせてほしいんだがな。


「刺身の盛り合わせでしょ~、それと、からあげ、ポテトもいいですねぇ~、後はいくら丼と~」


ポチポチとガンガン注文にいれていく。こいつこんなに無鉄砲に注文に入れていくが食べられるのか?

まあいいや。最悪全部俺が食えばいいし。


「とりあえずこんなところかな~先生どうぞ」

「おう」


といっても俺が食いたいのは馬刺しだけ。年取ると普通の肉より馬刺しの方が食いたくなる現象ない?


「よし食い物は入れ終わったから、酒をいれるぞ?本当に俺と同じでいいんだな?」

「はぁ~い」


勢いよく手を上げてゴーサインを出す。俺はタブレットの注文確認ボタンを押して、酒が来るのを待った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

注文してから1分少々。

まずはビールから運ばれてきた。


「おおおーーー!!!これがビール!パパたちが飲んでいたのを私も飲めるようになるなんて・・・感慨深いですなぁ~」

「そうですか」

「むぅ~ノリが悪いですね~。先生だってこんな可愛い子が一緒に飲んであげてるんだから感謝してくださいね」

「はいはい。それじゃあ乾杯しますか」

「はぁ~い」


「「かんぱ~い」」


俺たちは乾杯をして飲み始める!やっぱりこれが一杯目には一番だ!俺はそんな風に余韻に浸っていると、目の前の翔子は


「にが~~~い」


マジで苦そうな顔をしていた。やっぱりビールを一番最初に飲むのは危険だったか。翔子は今にも吐きそうな顔をしていた。俺も初めて飲んだ時は同じような顔をしていた気がする。


「ビールは口の中じゃなくて、喉越しを楽しむもんなんだよ。だからー」

「ああーもうそういうのはいいです。伊織先生、飲んでください」


俺の方に翔子が飲んだビールが渡される。最後まで話を聞けよぉ


「もうお酒はいいかもしれません・・・」


翔子は落ち込んでいた。酒を飲めないくらいで落ち込むことがあるか?まあでも実際残念がっているようだし、俺は別のお酒を勧めた。


「なら、カシスオレンジなんかどうだ?」

「カシス?なんですかそれ?」

「カシスっていうブドウみたいな果実を用いて作られたカシスリキュールをオレンジで割ったカクテルの事」

「うん全くわかりません」

「味はオレンジジュースだから、女性には結構おススメだぞ」

「本当ですか・・・?」

「マジマジ、頼んじゃうな」


俺は翔子の意見を聞かずに注文を押す。俺はその間にビールをがぶがぶ飲む。


「よくそんなにおいしそうに飲めますね・・・」

「まあな~こればっかりは慣れだな。ゴリなんかもがっつり飲むしな」

「ゴリとは?」

「ああいってなかったな、俺の幼馴染」

「ああ~先日飲みに行った美人さんですね」

「よく覚えてるな」

「これでも記憶力はいい方なので!」

「ちなみにさっき、たくみ君にあげた連絡先の人間でもある」

「何してるんですか・・・」


あいつなんかは恐ろしいくらいに酒に強いからな。普通に勝てる気がしない・・・

俺は自分のグラスを飲み干すと、翔子のグラスに手をかける。

一瞬ちらっと翔子の方を見て逡巡した。そして、ビールをグイっといったが、翔子はその一瞬の隙を見逃さなかった。


「間接キス・・・(ボソッ」

「/////////ごふぉ!!」


俺は完全にむせてビールがこぼれてしまった。恨めし気に翔子を見つめると、ニヤリと三日月を口で描いて、


「あれぇ~どうかしたんですかぁ先生?もしかしてですけどぉ、か・ん・せ・つ・キ・スごときで動揺しちゃったんですかぁ?」

「・・・いや別に」


図星だったが認めたら年上のプライドがずたずたになる気がしたからな。


「そうですかぁ。すいませんね。私の勘違いでしたぁ(てへぺろ)。お続きをどうぞ~」


俺に飲めと催促してくるが、口を付ける箇所を変えたらいいだけの話だ。そう思ってグラスを半回転させるが、


「なんで、飲む箇所をずらしたんですか?もしかして、間接キスを意識しちゃってますぅ?キャっ先生のエッチ♡」


ちくしょうおおお。どうすればいい!何をしてもいじられるのが確定している状況は覆せそうにない。それなら俺が取れる手段は1つしかない。俺は一気に飲んで、いじる暇を与えないようにした。

すると、さっきまでと翔子の様子が違う。俺と目が合うと若干狼狽していたが、


「ガッツきすぎです///私の唇の味がそんなによかったんですね///」

「・・・何照れてんだよ」

「はぁ~照れてなんかいませんけどぉ。それより、食べ物が来たようですよ!え~とそれとカシスオレンジってやつも!」

「まあいいか、ようやく食えるなぁ、腹減った」

「お待たせしましたぁ~」


店員さんが配膳してくれるのを手伝って、俺たちは机に料理を並べた。


「それじゃあ飲んでみますね」


翔子が酒に挑戦するパート2。

グイっと一気に飲む。そして、


「おいしぃ~~~~!!!なんですかこれ!!物凄く喉がスッキリしますね!!」

「お口にあったなら何よりだよ」

「ゴクゴク~~~ぷは~~~~うんま~~~い!おかわり!」

「大丈夫か?そんなに飲み過ぎると・・・」

「大丈夫ですぅ!全く酔う気がしないので!」

「さいですか・・・」


俺は嫌な予感がしたが、止めるのもなんか悪いからなぁとテキトーに流した。さて、俺もつまみを食べますかね~俺はポテトとから揚げに手を付けた。


「んん~~ビールと合うなぁ~~たまにはジャンク品もいいもんだ」

「先生!いい飲みっぷりぃと食いっぷりぃ~!!!いえーい!!」

「いえ~い」


翔子が酔っ払ってきた。普段の俺ならヤバいと思うだろうが、なんか俺も今日は限界まで飲みたい気分になってきたので、俺はそのまま梅酒ロックと翔子のカシスオレンジを2丁追加で注文した。


久しぶりに梅酒を頼んだが、ちょっと強いな。けれど、この梅の香りを鼻で味わいながら、口の中に広がる甘味と独特な香り。これを口の中で転がして、飲み込む。そして、ひじを突いた手の指先の5本指だけでグラスの上の部分を持つ。それを揺らして、氷がカランコロンとなる音を楽しむ。


「はぁ~美味いぜ」


酔っているから普段なら黒歴史一直線の香ばしいセリフも普通に出てしまう。まあ今日くらいはいいだろう。


「うめぇ~~~お・さ・け!お・さ・け!私にも寄越せ~~~~!!!」

「うお~~~い!!」


翔子はいつの間にか俺の隣の席に来て、俺から梅酒を奪い取り、グイっと飲み込んだ。しかも、俺が口を付けた部分を色気もくそもなくべろべろに舐めながら飲みやがった。


「う~~ん、うんめ(・・・)え!!!!」

「お~い、寒すぎるぞ、おっさん」

「うるせえ、伊織の癖に!!!」

「呼び捨てかよ・・・」


もうこいつはダメだ。そろそろやめさせないと・・・


「ほら、翔子・・・もう飲むのやめろ・・・っておい?」

「んん~zzzz」


翔子は飲み疲れて寝てしまった。しかも俺の肩にしなだれて。正直いい匂いがしすぎて、なんか色々反応しそうだったが、なんとか耐える。それにしても、


「まさか、教え子と一緒に飲めるとはなぁ・・・感慨深いなぁ」


俺は左手でグラスに残った氷から溶けた水を空いている飲んだ。水と梅酒が混じっていたが、味はお粗末なものだった。水の方が圧倒的に割合が多いしな。


「全く可愛くなりやがって・・・こんにゃろうめ」


俺は右手で翔子の頭を撫でる。俺にとって初めての生徒だった。最初は全く真面目じゃなくて、よく衝突し(直接嫌いと言われたりもしたが)、それでも最後まで一緒に頑張った。結局第1志望には受からせてやれなかったがそれでも俺にとって受験(地獄)を本気で乗り越えた翔子は誇りだ。


「また・・・飲みに行こうな。今度はちゃんとした誕生日にな」


俺は翔子が寝ているのをいいことに頭を撫で続けながら、独り言を綴った。誰にも聞かれていないからたまにはな。俺はカランカランとグラスを鳴らしながらちびちびと梅酒(水99%)を飲んだ。

そのとき、耳を赤くしている大学生がこの店にはいたのだが最後まで見つかることはなかったとさ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うう頭が・・・」

「大丈夫か、ほれ水飲め・・・」

「ありがとうございま~す」


閉店近くになったので、俺は翔子を強制的に起こした。具合が悪そうなので水を飲ませる。


「にしても結構飲んだな~」

「はい、うう気持ちが悪い・・・」

「もう一杯水飲め」

「はい・・・」


翔子は本当に飲み過ぎたな。大学生あるあるだが、カシス関連の酒って飲みやすいから酔ったことに気が付かずにガンガン飲みまくるんだよなぁ。俺も初めて飲んだ時は、店の中で咆哮を上げたもんだ・・・


「ごく、ぷは~もう大丈夫です。行きましょう」

「はいよ」


俺たちは帰り支度をして会計をする。


「ありがとうございま~す。お会計は9800円になりま~す」

「カードで」

「はい」

「あっ先生、私いくらー」

「今日は奢りだ」

「えっでも」


翔子は若干の戸惑いを見せていたが、


「レシートです」

「あっありがとうございまーす」


店員さんが割り込んできてくれたおかげでこの話を打ち切れた。俺は店員さんに礼を言ってレシートを受け取る。


「お客様のおかえりでーす」

「「「ありがとうございました~」」」

「ごっそうさまです」

「ご、ごちそうさまです」


俺と翔子はそろった挨拶に対して、ごちさうさまの挨拶をして外に出た。


「ふ~美味かったな~」


夏の夜の空は空気が気持ちい。昼間に死ぬほど熱い思いをした分、気持ちのよい風をご褒美にくれているようだった。


「先生、その、本当にいいんですか?」

「ん?気にすんなよ」


翔子は遠慮がちに言ってくる。俺に対していつも遠慮がないが意外なことにお金関係にはしっかりしているらしい。けど、今日は元々俺は自分が奢る気でいた。


「で、でも」

「それに翔子の逆誕なんだろ?初酒くらいは俺に祝わせてくれや」

「せ、先生」

「それとこれはプレゼントだ」

「え?」


今日は翔子をよく驚かせることができて楽しいな。年上の貫録を見せつけられて俺も気分がいい。


「・・・これは?」

翔子の合格祝い(・・・・・・・)。遅れたけど、おめでとう。よく頑張ったな。それとも逆誕祝いって言った方がいいか?」


最後は俺がおどけて言った。元々ここまではいつかやるつもりだった。本当なら来年にな。だけど翔子のやつが突然逆誕とかいう新しい概念を作りやがったせいで、昨日急遽選んできた。


「開けてもいいですか?」

「おお、いいよ」


翔子は俺の買ってきたプレゼントをガラス細工を扱うように丁寧に開けていく。そして、中から出てきたのは、金色の万年筆だった。俺が選べるプレゼントではこれが限界だった。ネックレスとかだと何か気持ちが悪いしな。


「・・・伊織先生」

「ん?」


ひと呼吸置く。そして、今までみた中で一番魅力的な笑顔で、


「ありがとうございます。一生の宝物にしますね」


なんて言ってくれた。俺は一瞬ドキッとしたが、すぐに持ち直していつも通りの調子で返した。


「おう、大事に使ってな」

「はい!あっ、それと伊織先生!今日のレシートあります?」

「あるけど何に使うん?」

「いいから貸してください」

「はいはい」


俺は翔子に今日の居酒屋のレシートを渡す。

すると、それを大事そうに両手で畳んで、それを財布に入れる。


「何してんの?」

「これは記念です。伊織先生と私の」

「記念だなんて大げさな」


俺は苦笑する。が、翔子は満足そうなので、俺もそういうもんかねと納得した。


「んじゃ解散しますか」

「はい!」

「翔子は何線?」

「えと、北部北武線です」

「なら、同じか。行くか」

「はい!」

俺たちは電車のホームに行き、駆け込みで最後の電車に間に合った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

電車内は閑散としていたので、俺たちの乗っていた車両には俺たち以外に人がいなかった。


「改めて今日はありがとうございましたぁ・・・ふぁあ~あ」

「もう何回も聞いたよ・・・寝てな。途中で起こすよ」

「お言葉に甘えますぅ」


翔子は俺の左肩にしなだれてきて寝てしまった。俺の最寄り駅の方が遠いので、ギリギリまで寝かしておけばいいだろう。

俺はスマホで●witterを開いて、今日のニュースを見る。忘れているかもしれないが俺は勉強と株が趣味なので、今日のニュースを絶対に見るようにしている。


「今日はマザーが強かったのか・・・」


俺も自分の世界に入り込んでいった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おい~翔子?起きろぉ?」

「zzんう~」

俺は翔子の最寄り駅が近くなったので、起こすことにした。そろそろ起きないと降車できなくなるしな。だが、全く起きる気配がない。


「ほらほら起きろ~」

「んみゅ~」

「可愛いなおい」


ちょっと翔子の可愛さに悶絶しそうになったがギリギリで耐えた。頭の中に脳内和葉さんがいなかったら危なかったかもな。


「どうすっかな~」


俺の肩でぐっすり眠っている翔子をどう起こそうか考えていると、まもなく着いてしまう。


「おい翔子!まじで着くぞ~」

「ん~zzz」

「おーきーろー!!」

「うるせぇ!」

「グへっ」


俺は頭突きをされた。しかも滅茶苦茶理不尽に・・・


「いてえええ」


俺が痛がっている間に翔子の最寄り駅についてしまい、ドアが開いた。


「おい!翔子マジで不味いぞ!起きろ!!」

「ん~」


無情にもドアは閉まってしまった。おいおいどうするんだこれ・・・


「ん~あれ先生?おはようございますぅ~」

「おはよう。翔子、残念なお知らせだ」

「え?何ですか?」

「お前の最寄り駅を過ぎてしまった・・・」

「・・・マジすか?」

「マジっす」


沈黙が支配する。しかし、電車は俺たちの思惑を無視してどんどん進んでいく。しかし、翔子は意を決して重い口を開いた。


「・・・仕方がありません・・・先生」

「なんだ?」

「泊めてください」

「は?」


次回ドキドキ☆お泊り編に続くよ

『重要なお願い』

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