いやっほう!!!
いつになっても男は馬鹿なのです。年上の綺麗な人に話しかけられたらちょろいんです。許してください。
「で、伊織先生、さっきの画像はなんですかぁ?」
俺は現在、バイト先の塾に来ており、さっきのLIN●でのやり取りについて追及されていた。目の前で腕と足を組んでニコニコしながら椅子に座っている翔子と、それに対して、床に正座で座っている俺の図があった。
おかしい・・・半年前までは俺が先生だったのに、これでは俺が完全に立場が下になっている。ここはガツンと言ってやろう。
「翔子、いい加減にー」
「しろって言える立場ですかぁ先生ぃ?私にあんなセクハラ画像を送ってきておいて、満足しましたかぁ?」
「違うんです!あれは事故なんです!」
「じゃあ、なんですかぁ?もしかして、元教え子にセクハラ画像を送って、反撃される今の状況を楽しんでたりするんですかぁ?」
「そ、そんなことないぞ!」
なんか動揺した感じになっているが、普通に活舌が悪くなっただけだ!だが、そんなことは知っていますよとばかりに翔子が
「はぁ~、伊織先生ったら、本当にくそ雑魚ド変態ですねぇ」
「ち、違う」
「これは本当に調教しないといけませんねぇ~」
「ちょ、調教だと・・・!」
俺はなぜか反応してしまった。目の前の世界で1番可愛い元教え子の口から『調教』という言葉が出てきただと!!俺は可愛いと恐怖のギャップで狼狽してしまった。
「なに反応しているんですか、存在がセクハラカス野郎?」
「くっ殺せ!」
立場が完全に逆転してしまい、気が強い異性に言わせた言葉ナンバーワンの『くっ殺』を俺が言う羽目になってしまっていた。しかもごく自然に・・・
「この状況を楽しむなんて・・・本当に先生ってどうしようもないですね♡」
なんだろう翔子も楽しんでない?不思議と息遣いが荒くなってきたし、この子もしかしてそっち系なんじゃ・・・
「まっ、今日はこれくらいにしてあげますよ」
「まだ続くのかよ・・・」
「?」
「馬鹿なんですかっていう瞳で俺に無言で威圧してくるのをどうかやめてください」
「ははっ、流石先生です。それじゃあ働きましょうか。お給料をもらっている分はしっかりと働かないとですねぇ」
「はい・・・」
俺はまた1つ元教え子に弱みを握られたのだった。
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「先生、丸つけお願いします」
俺は生徒が解いた問題を○付けをして、何ができていないのかを把握する。
「ここがわかっているんだから、多分その次の問題はできる。今チェックしたところだけやり直してみ」
「分かりました」
「先生、ここが分からないんですけど」
「それなら、テキストのP23に書いてあるから、見直しておけ。おそらくその周辺も抜けているから復習しておけよ」
「はい」
俺は生徒を10人ほど受け持っている。ちなみに専門は国語と社会と英語だ。
授業はなしで俺が用意した教材を各自解かせて、○付けるというやり方だ。万人に合う教材なんてないからな。俺が一人一人にオーダーメイドで作ってやった方が成績は確実に伸びる。ちなみに翔子にもこのやり方でやらせていた。
だが、俺に今頭を悩ませる問題がある。それは
「おい、染谷・・・そろそろ問題を解いてくれ・・・」
「うるせぇな」
そう。問題児を抱えていた。染谷一成。こいつは一か月前に無理やり親に塾に入れられた口で、全く勉強をしない。俺の話も全く聞かないし、どうすりゃええねんって感じで一か月を過ごしていた。俺はどうしたもんかと、ずっと考えていた。すると、
「伊織先生~、ちょっといいですかぁ?」
声がした方を見ると翔子がこっちに来いと手招きしていた。
「ん?どした?」
「ちょっと、ここの問題で分からないところがあって・・・、あっ染谷君ごめんねぇ勉強してたのに・・・」
「うす・・・」
「何言ってんだ?染谷が勉強するなんて・・・あれ?」
翔子に言われて染谷の方を見ると、テキストを開いて勉強していた。しかも、若干耳が赤くなっていた。もしかして、こいつ・・・
「翔子、その問題に答えたら、ちょっと頼みを聞いてくれ」
「は?伊織先生は私に頼み事ができる立場にあると思っているんですか?」
「いやいやあるでしょ」
「へぇ~、エロゲ(ボソっ」
「ごめんなさい、許してください」
俺は耳元で翔子にエロゲをかけられた。てか近いし、耳に息が吹きかかっているんよ・・・
「ちっ」
舌打ちされた方向を見ると、染谷がこっちを見ながらイライラと勉強していた。あいつの精神衛生上、今の状況はよくないだろう。
「翔子、マジで重要な頼み事だから、ちょっとこっちに来い」
「は、はい」
翔子が俺の態度がマジだと分かると、俺についてきた。
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「単刀直入に聞くけど、俺がいないときの染谷ってどう勉強してんの?」
「え?普通に真面目に私が作った問題を解いてくれてますよ」
「そうなのかぁ・・・」
なんとなく俺が考えていたことが当たっていたらしい。要は染谷にとっての思春期ってことだな。だとしてら滅茶苦茶だるい・・・嘘、もう確信しているレベルだからバリだるい。
「ハア~」
「私の前でため息を吐くと、幸せが逃げていきますよ?」
「もう全匹飛び立っていったわ」
「エロゲ(ボソっ」
「お、幸せが帰ってきたぞ!」
幸せはまだあるかもだが、恥と外聞は逃げたくてもすべて翔子とゴリに捕らえられているからな。そっちを逃がしてほしい・・・
「まぁいいや。なんとなく原因が分かったから、翔子に色々頼むけど、それでもいいか?」
「仕方ないですねぇ、一杯奢ってくださいよ」
「はいはい」
俺たちは具体的な染谷対策を翔子と検討した。
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「染谷、ちょっと話をこっちに来い」
「・・・んだよ」
早速俺は染谷に話しかける。これで外れたら、滅茶苦茶恥ずかしいなぁ。俺は生徒指導室に連れていって、防音の中で話し合いをすることにした。
「回りくどいのはめんどくさいので・・・染谷、お前、小山のことが好きだろ?」
「////!!!」
ビンゴかぁ、できれば外れてほしかったが、まあそれなら計画通りに進めるか。
「安心しろよ。ここは防音室だし、秘密は絶対に守るよ」
「絶対だな」
「ああ、絶対だ。だから、お前に提案がある」
「・・・なんだよ」
「俺のテキストを○付けしてもらう時は小山に頼め」
染谷は驚いた顔をしていた。まさかそんな棚から牡丹餅みたいなことが起きるとは思っていなかったんだろう。
「いいのかよ・・・?」
「もちろんお前が嫌ならやめるが・・・」
「いやそれがいい・・・」
うれしいんだろうな。ただ表にそれを出せない。なんか初々しくてええのぉ
「でもよ・・・」
「安心しな。小山にはそれとなく話は通してある。ただし、成績を上げなかったら、強制的に俺と勉強することになるけどな」
一瞬迷ったようだが
「わかった・・・」
「んじゃ契約は成立ってことで、勉強頑張れよ」
「ああ・・・」
俺と染谷は生徒指導室なる場所から出た。そして、定位置に戻ると、染谷はしっかりと勉強を始めた。
そして、足早にテキストを終わらせていた。
全くテキトーにやって、すぐに小山に会いにいくとか、これじゃあー
「凄いじゃん!満点だよ!」
「ありがとうございます////」
うそん?まさかあいつ普通に勉強できる系なん?俺のテキストはオーダーメイドで60%くらいを平均で取れるようになっているはずだ。だから満点なんて取れるはずがないんだが・・・愛ってやつは限界を超えるのかね~
「先生、○付け早く」
「あいよ」
俺は染谷にとってはいい選択だったのかもしれないな。このまま成績が伸びていくことを切に願っているよ。
俺は今いる生徒たちの対応に当たった。
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2時間前、翔子を呼び出したとき
「染谷は俺の勉強のやり方が気に食わなくて言うことを聞いてくれないんだと思う」
俺はそう推察した。
「そうですかねぇ~」
「だってそうだろう?先生を変えるだけど勉強するかしないかが決まるんだとしたら、それくらいしか考えられない」
翔子は黙って俺の方を見ていた。
「要は俺が未熟ってことだな、能力がないってことを判断されているんだとしたら、先生を変えるべきだと思う」
「いいんですかぁ?生徒さんが少なくなると、給料が減りますけど・・・」
うちの塾は対応している生徒の数に比例して、給料が上がるシステムになっている。だから、染谷を翔子に預けるというのは、つまり、そういうことだ。が、
「成績を伸ばせるなら、そっちの方がいいだろ?それに身分不相応な給料なんて願い下げだよ」
俺はおちゃらけていったが本心だ。もらえるならしっかり成果を残してからもらいたい。失敗したならゼロにしてもらう。なんてったって、生徒の未来がかかってるんだからな。
「全く、こういう時はカッコいいんだから(ボソっ」
「ん、なんか言った?」
「いえ、エロゲの趣味は最悪ですねと思っただけですぅ」
「その話は今必要ないよなぁ?」
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授業終わり付近
「うんよくできてるね!」
「・・・ありがとうございます」
私は染谷君の○付けをする。普通に勉強できるじゃん。褒めてあげると顔を真っ赤にして横に逸らす。初々しくていいねぇ。
「これだけできるなら、伊織先生に頼んだ方が良いと思うけどねぇ。あの人の教え方って神みたいだからねぇ・・・」
「そうですか・・・」
「ああ、ごめんね。くだらない話を聞かせて。それより、伊織先生より私の方が教え方がうまいなんて言ってくれて嬉しいよ。ようやく超えられるのかなぁ」
私の方が教え方がうまくなったら伊織先生をどうこき使おうかなぁ~それを考えるだけでワクワクしちゃうよぉ
「あの、小山先生って、西川・・・先生と仲がいいんですか?その名前で呼んでいるので・・・」
探るように聞いてくる。ああ、なるほど。そういうことか。あの人はいらぬおせっかいを焼いたようねぇ。
私はこの手の視線には敏感だ。なんてったって毎日のようにそう見られているのだ。染谷君が私の元に来たのも結局はそういうことか・・・
「まあねぇ、私は伊織先生の一番最初の生徒だからね。特別扱いしてもらってるよぉ。もちろん生徒と教師としてね」
「・・・そうですか」
「あの人ったら、本当にしつこいんだよぉ?私は勉強したくないのに、あの手この手で勉強させようとしてくるんだよぉ?酷くない?」
「は、はい」
「でさぁ、いつか言っちゃったわけ、貴方のことが嫌いですって。正面からね」
「それはー」
いくらなんでも酷すぎとは思う。ここまで直接的にモノを人に言ったのは初だったと思う。基本的に私はモテて好かれてだから、私が嫌がることなんて誰にもされない人生だったけど、伊織先生は私にひどいことを普通にしてくる初めての先生だったんだよねぇ
「その後は、どうしたんですか・・・?」
「ん?大喧嘩。一方的に伊織先生を罵った。まぁ最後に1つ約束して、その日は収まったけどね。今思い出しても酷いな私」
くすくすと笑い声が出る。酷い思い出だと思う人が大半だろうが、私にとっては最高の思い出だ。
「それだけ喧嘩したのに、なぜ今仲良くしているのですか・・・?」
「なんでだろうねぇ忘れちゃった。ただ、あの人が私に対していつも本気でいてくれたから、大嫌いな勉強も頑張れた。結局落ちちゃったけどね」
私は過去の思い出話を断片的に伝えた。全部を伝える必要はないだろう。そして、
「まぁ、そんなわけなんで、私は女の尻を追いかけて、嫌いな男に助けてもらっている負け犬なんかには絶対になびかないけどねぇ」
「っ!!!!!」
私は酷いことを言う。あーあ、このまま、普通にやっていれば給料が上がったのになぁ。全くこんな風に熱くさせられたあの人にはいつか責任を取ってもらわないとねぇ
「君も男なら戦えよ?」
私は最後に一言そういって教室の掃除に行った。後は染谷君次第だ。あと伊織先生にはご厚意を台無しにしたので、今度酒をもってうちに行ってあげないと
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翔子に染谷を預けてから初の日、俺は来月の給料が減ってエロゲを買えなくなることを恐れていた。毎月毎月の楽しみがぁ~~~~
まぁ仕方がない・・・染谷のためにならんやろ。あのままじゃ。やったことに後悔はないが金が消えるのは・・・
「ハア~」
「あの・・・西川先生・・・」
「ん?染谷か。どうだ?小山先生とうまくやれているか?」
「いえ、その・・・」
何か歯切れが悪い。どうしたんだ?
「生意気な態度をとってすいませんでした!!また、勉強を教えてください」
「え?」
なんと染谷が頭を下げてきたのだ。俺は普通に驚いた。まさか染谷が頭を下げてくるとは・・・と思って後ろを見てみると、翔子が様子を見ていた。
そういうことね・・・
俺は染谷に視線を向ける。
「ったく、チャンスを棒に振ることになるけどいいのか?」
「はい・・・西川先生の元で、勉強を頑張ります。そしてー」
染谷が顔を上げて、
「西川先生を絶対に超えます!!」
なんのことか全く分からんが、やる気が出たのはいいこっちゃ。
「んじゃ、覚悟しておけよ?」
「はい!」
問題児の生徒は誰かさんのおかげでいなくなった。今度誰かさんにお礼をしないとな。飲みでも連れてってやるかな
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バイト終わり
俺たちは駅のホームにいた。帰り道は同じだしな。
「ん~今日も疲れましたねぇ~」
「だなぁ、あっ、それと翔子」
「何ですかぁ?」
こちらに身体ごと向けてくる。相変わらず愛いやつだよ。
「ありがとな」
翔子はニヤリと笑って、
「何のことですかねぇ~」
前を向いてしまった。その表情は見えなかったが、満足していそうな声音だった。疲れたが、なんとか形になってきた。とりあえず、翔子にはお礼をしないとな
「なんか奢るけど、どう?」
「おや珍しいですねぇ~先生が自分から奢ってくれるなんてぇ~それじゃあ何にしようかなぁ。めっちゃ高いお肉とかがいいですねぇ」
「俺の財布に恨みでもあるのか?」
「ちっちっちっ、今の政権のスローガンは貯蓄から投資へですよぉ。伊織先生の財布ももっと私にオープンにするべきでぇす」
「経済学をやっているやつがその言葉を使っちゃいかんだろぉ」
経済学では貯蓄と投資は同じ意味だからな。正直意味が分からんのよ。
「それじゃあ今度何かプレゼントしてくださいよ。おごりはいいので」
「へいへい、世界で一番可愛い教え子のために、一肌脱ぎますかねぇ」
「ふ、不意うちは卑怯です」
翔子がなぜか狼狽して明後日の方向を見て、そして、俺の腕に飛びついてきた。
「なぜ腕を絡めるんだい?」
「そこに伊織先生の腕があったからなのです」
ムフーとしている。可愛い奴め。
ブー
「ん?」
マナーモードにしていたスマホがぶるぶると震えた。そして、画面を開くと、そこには1通のメッセージが。俺はその差出人を見て驚いた。そして、固まった。
「ん、先生どうかしましたぁ?もしかして私に腕を組まれて興奮ー」
「やったあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
俺は歓喜に打ち震えた。こんなことがあっていいのだろうか!!?
「ど、どうしたんですか?」
翔子が狼狽しながら聞いてくる。俺はテンションマックスで翔子にスマホの画面を見せた。
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和葉
『伊織君~久しぶり、今度飲み行こうよ~』
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「ええ~と誰ですか・・・?」
「ええ~この人を知らないのかよぉ、翔子ちゃぁん~~」
「そのノリとしゃべり方をやめないとスマホをぶっ壊しますよ☆」
「はい、すいませんでした!!」
俺は調子に乗っていた頭に翔子のドスの利いた声という冷や水を浴びせられて土下座した。
「それで、誰なんですかぁ」
再度翔子がが聞いてくる。俺は笑顔になって
「ゴリのお姉さん!うほほ~い」
「ああ~あの、確か先生の片思いの・・・」
「やったぁぁ!明日死ぬんじゃねえの!最高だぜぇ~~」
年甲斐もなく死ぬほどテンションを上げてしまったので、駅構内では俺のけたたましい声が鳴り響いていた。
「伊織先生」
「なんだよいいところなのに!」
翔子が笑顔で俺を見据える。そして、
「こんのエロゲ馬鹿鈍感クズ野郎!!!!!!!!!!」
「ブホっ!!!!!!!!!」
翔子が自分の持っている鞄を全力でスイングして俺の顔面にぶつけてきた。
「もう知りません!!!」
翔子は俺と本来乗るはずだった電車に一人で乗っていってしまった。俺は茫然としていると、駅員が俺の元に来た。
そして、
「リア充乙(笑)」
駅員は俺の心配するふりをして煽りに来ただけだった。
まあ、そんなことはどうでもいい!!明日からバラ色の毎日だぜぇ~
俺は和葉さんとのデート(俺の脳内ではそうなっている)を死ぬほど楽しみにしているのであった。
『重要なお願い』
面白い!先が気になる!筆者頑張れ!と思った方はブックマークの追加と広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただけると嬉しいです!
感想なんか書いていただけたらさらに嬉しいです!
執筆のモチベーションになるので、どうぞよろしくお願いいたします!




