修★羅★場
翔子とゴリと伊織の邂逅です。
俺は今かつてないほど緊張していた。今俺の部屋には家主である俺以外にも2人ほどいる。
1人は俺の幼馴染の後藤莉奈ことゴリ。もう1人は俺の一番最初の教え子で現同僚の小山翔子だ。
正方形の机を囲んで俺たちは座っている。
ゴリ
俺 机
翔子
の並びだ。なぜか知らないが俺が間に立たされており、ゴリと翔子は互いに向かい合って座っている。俺の立ち位置が完全に審判のポジションなんだが、何を審議するんだか・・・
そこにゴリが突然口を開いた。
「え~と、後藤莉奈です。そこのド変態の幼馴染をやっています。どうぞよろしく?なのかな?」
「俺をド変態に落とした挙句に助けを求めるんじゃないよ。てか知らんわ」
ゴリは俺に助けを求めてきた。なんだか仲良くするための挨拶でもないので、よろしくも変なような気がする。俺もよくわからんから匙を投げた。翔子はまたニコニコして
「ご丁寧にどうも。私はそこのド変態のは・じ・め・ての教え子で現同僚の小山翔子です。よろしくお願いします」
「お前ら俺を落とすことに関しては気が合いそうだからよかったよ」
まあ俺をいじることで緩衝材になるなら、まあいいか。それよりもはじめてを強調して、ゴリを挑発しないでくれよ・・・
「まあ、そんなド変態からだが両方とも変な付き合い方をしているわけじゃないぞ。ゴリは普通に幼馴染で翔子は普通の同僚だ。アーユーオーケー?」
「「・・・」」
もう嫌!こいつら全くしゃべらない!俺が空気を弛緩させてやろうと思ったのに、見事に滑り損。後、なんでそんなに目が合ってるのこの人達。普通に怖いよぉ。
そんな中で翔子が語り出す。
「単刀直入に聞きますが、莉奈さんは伊織先生が好きなんですか?」
「ブフっ!!お前なんてこと聞いてんの!!?」
「ええ~だってぇ、年頃の男女が一晩寝泊りするなんてそれしか考えられないといいますかぁ・・・」
「それはないよ。な?ゴリ?」
「・・・」
おやゴリの様子がおかしい。下を向いてうつむいてしまっている。
も、もしかして、本当にゴリが俺のことを・・・////
「ははははははは」
「「え?」」
ゴリが腹を抱えて笑っている。さっきお隣さんから苦情があったばかりなのに・・・
「いやぁ腹が痛いわあ、ごめんね(笑)こんなに面白いことを聞かされるとは思わなくて(笑)」
笑いすぎて出てきた涙をティッシュで拭う。そして、
「私が伊織を男女の関係で好きになることはないよ。普通に昔からお隣さんで仲が良かっただけ」
「それでも距離感がおかしい気がするんですよねぇ」
「まあ昔から一緒だからね。後、伊織の好きな人って私の姉貴だからね」
「え?」
「おい!!!???」
突如ばらされた俺の秘密。ここ数日で俺の秘密がぺらぺらと捲られていく。なんでばらすんだよぉという視線をゴリに送ると、
「いやさ、はっきりさせておいた方がいいじゃん。伊織が好きなのは巨乳のお姉さんだってさ。そうすれば、私みたいな・・・成長性に期待を持てる人間が守備範囲から外れるでしょ?」
「貧乳をそんな回りくどく・・・いやごめんなさい。だからその拳をしまって」
会社の求人掲載で成長性に期待を持てるっていうのは=現時点では何もありませんということと同じ意味になるので、就活生は要注意だぞ。俺はゴリの隠語を一瞬で理解して、翻訳したのだが、ゴリは沖に召さなかったようだ。
「へぇ~、お姉さんが好きなんですねぇ?」
「なんか怒ってる?」
「べっつにぃ」
なんか翔子が怒ってしまった。全く女は何が地雷になるか全くわからんなあ。すると、ゴリが人をいじる顔をして、
「で、翔子ちゃんは伊織のことを好きなの?」
めっちゃ悪い顔をしている。なんか恋愛好きおせっかいBBAみたい・・・机の下で俺の股間のところにゴリの足が置いてあった。後何気に翔子ちゃん呼びになってる。
そんなことより、翔子の様子がおかしい。もしかして、俺の事を////
「そうですねぇ~ペットとか奴隷としては大好きですねぇ。こうなんかいじりたくて仕方がなくなるというか」
「君、元先生のことをそんな風に思っていたの?流石に奴隷とペットはひどくなー」
「あっ、それ凄いわかる!なんか一家に一匹ほしいよね!」
ゴリが身を乗り出して、同意する。するんじゃねぇよ。
「ですですぅ~、だから私も恋愛対象としては1ミリも考えられないのですが、そばに置いておきたいんですよねぇ」
「分かる!!隙だらけの癖に強がるからどんどんいじりたくなるんだよねぇ。しかも反応もいいしさ」
「さりげなくお前ら俺の事をディするのはやめてくれや。そろそろ泣くぞ?」
俺は人間としてではなく、ペットや奴隷、玩具として好かれていたらしい。なんでだよ!!人権を俺に寄越せ!!基本的人権は俺にだって適用されるはずだ!
「ところがどっこい、伊織にだけは治外法権だからねぇ。裁判長は私」
「検察官と弁護士は私が担当するので、伊織先生に勝ち目はありませんねぇ♡」
「お前らナチュラルに俺の思考を読むのやめてくれない。後さっきまでの殺伐とした雰囲気はどこに言った?めちゃくちゃ仲良くなってるじゃねぇか」
5分くらい前の無言はどこにいったんだか。今じゃ俺をダシにして会話を楽しんでやがる。
「なんか莉奈さんとは仲良くなれそうですぅ」
「私も~翔子ちゃんとは気が合いそう」
なんか凸凹コンビだが丸く収まったのか?でもなんか以外だ。ゴリは直線を行くタイプだが、翔子はなんとなく蛇行するタイプにしか見えない。正反対な2人だからこそ仲良くなれるというのもあるのかねぇ~人間って難しいわ。
「そういえば!」
「どしたん?」
突然翔子が思い立ったように、鞄をまさぐっている。そして、『エロ学』を机の真ん中にドーンと出した。
「ええ~と翔子さん、何で今この場にそぐわないゲームを出したのかな?」
俺は努めて冷静に返す。大丈夫だ。動揺なんてしていない。
「伊織先生がいかにヤバい先生かっていうのを莉奈さんに知ってもらおうと思って。てへ」
「あっ可愛い・・・じゃないんよ。早くしまってー」
「へぇ~これって昨日見なかったやつじゃない。翔子ちゃんに貸してたんだ」
「いやちがー」
「そうなんですよぉ。嫌がる私に無理やり『面白いから』って渡してきたんですぅ」
「伊織・・・」
「おい、ゴリ。完全に濡れ衣だよ。俺がそんなことをすると思うか?」
俺は真剣な眼差しでゴリを見た。これに関しては本当に濡れ衣なので、信じてもらえるだろう。幼馴染ならわかってくれるはずだ!
「まあ・・・確かに。嘘は言ってなさそうね」
「ゴリ様・・・」
「すいません、嘘を付きました・・・」
翔子は申し訳なさそうに言っている。そうだな。嘘を付いたらしっかり謝る。古来より受け継がれている教えだぞ。多分古事記にも書いてあるんじゃないか?多分きっと
だが、翔子はニヤリと三日月に口を歪めると、
「実はこの『エロ学』。私が生徒時代の夏休みに買ったらしいんですよぉ」
「おい!待てー」
「ほうほう。で?」
「んーーんーー!!」
俺はゴリに羽交い締めにされて翔子の戯言、もとい、真実を隠すことができない!!そして、ゴリからは半そでや半ズボンから抜き出た肌の感触はするのだが、双丘の感触が全く感じられなくて物凄く残念だぁ、っ!!!!
「余計なことを考えたら潰すぞ・・・?」
「も・・・う、つぶされ・・てます」
「あっ翔子ちゃん続きをどうぞ」
「あっはぁい」
翔子は一瞬ゴリの暴力に驚いていたようだが、すぐに気を持ち直した。俺は完全にあれを潰されて戦闘不能。もう立ち上がることもできないZE☆
「で、このゲームの登場人物なんですけどぉ、主人公が塾講師なんですね」
「はいはい」
「で、ヒロインが生徒なんですよぉ」
「へぇ~~~」
ゴリが俺の顔を覗き込んでくる。俺は心を閉ざしたので、平気だ。全く持って問題ない。だから早くその話をおわりにしてくれ!!
「で、内容は伊織先生がぁ、生徒である私にエッチなことをして成績を上げるというものなんですね」
「待て!看過できないことが言われている気が!!!」
「ちょっと、黙ってよ伊織。いいところなんだから!」
「なぜ真剣に聞いているんだよ!!?」
ゴリは俺を羽交い締めの体勢から馬乗りの体勢になっていた。翔子の話がエンドに近付いているが、止める手段が俺には残されていなかった。
「で、問題はそのゲームをやった次の日に私が塾に行った時の反応がおかしかったんですよぉ。なんでですかねぇ。伊織先生♡」
「伊織・・・」
ゴリはあきれてものも言えないというか、普通にゴミを見る目をしていた。だが、すぐにまた、俺をいじるネタを握ったと思って、ランランと目を輝かせて、俺を馬乗りの体勢からいじってくる。
「ねぇ、伊織ぃ~、教え子でエッチな妄想しちゃってそれを本人にバレるってどういう気持ちなのぉ?ねぇねぇ教えてよぉ?」
「・・・・」
ゴリがニヨニヨとしながら聞いてきた。俺はもう耳まで真っ赤になったまま突っ伏していた。
「ちなみにですけどぉ、その日の伊織先生の視線はいつもよりも野獣のような下品な視線でしたねぇ。せ・ん・せ・い。あの時何を考えていたんですかぁ?教えてくださいよぉ?」
ゴリも翔子も俺の背後でニヤニヤしながら、俺をいじるのを楽しんでいるののが見なくてもわかる。時折俺の背中をツンツンしてくるが、そんなことにもいちいち反応してしまうくらいには俺の身体は現実と向き合うことを拒否していた。
「お願いですぅ。もう二度とそんなことしないからやめてくださいよぉ」
「「無理」」
「なんで声がハモるんだよ」
「「だって面白いから」」
「仲良すぎだろ!」
今まで1人でも大変だったのに、今は単純計算で2倍だ。俺に勝ち目などほんのわずかな目もなかった。
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そのまま20分ほど『エロ学』ネタでいじられまくった。あの時の感想を言わないと和葉さんに言うとか、どんなシチュエーションを妄想していたのかを言わないと和葉さんに言うとか・・・俺は根ほり葉ほりすべて吐かせられた。
この国には黙秘権と言う者があるらしいが、
「伊織限定で治外法権だからねぇ、残念でしたぁ」
「ちなみに条約改正は2/3以上の議席を獲得しないと無理なので、残念でしたね。せ~んせい♡」
「横暴だぁ」
俺がどれだけ声を上げようとも翔子とゴリが反対をすれば、不可能ということか・・・民主主義って穴がありすぎだろ・・・なんでこんなにひどい目に合わなきゃいかんの・・・
「莉奈さんの話も聞きたいですぅ」
翔子はゴリに対して、猫撫で声で頼むが、
「ごめんねぇ~話したいのはやまやまなんだけど、明日仕事でねぇ。もう帰らないといけないのよ」
「そうですかぁ~残念ですぅ。そういうことなら、私も帰りますかね。先生で遊ばせて・・・ゲフンゲフン楽しませてもらったので」
「なにも隠せてないんだなこれが」
翔子もゴリもようやく帰ってくれるそうだ。俺は今世紀最大に疲れているので、もうさっさと平穏を取り戻したい・・・
「またすぐに会いましょう」
ゴリがそういった。
「はい!私も莉奈さんと会いたいです」
翔子もそういった。
「もう二度とごめんだ!『ヤンデレ製造機』と『絶壁』が!!」
「「次言ったら殺すぞ」」
「はいすいませんまた俺もペット奴隷として付き合わさせてもらいます」
俺はなんとかやり返してやろうと思ったのだが、すぐに2人からの絶対零度の一言で土下座させられた。
「罰として伊織のエロゲを借りるわね」
「なんでだよ!?」
「なんでって、さっきの仕返し。これでもっと伊織をいじれるようになるわ(笑)」
「そんなこと言われてほいほい差し出すほど、「『エロ学』のことを生徒さんに言っちゃいますよ」いいぞ翔子もゴリも!好きなだけ俺のコレクションを持っていきたまえ!!!」
ちくしょう!!こいつら二人とも俺を絶対に服従させられるカードを持っているから、絶対に逆らえねぇ!!俺は自分のエロゲが物色されていくところをただただ眺めていることしかできなかった・・・
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「そんじゃあ、帰りますわ。お土産ありがとう」
「伊織先生、ありがとうございましたぁ。しっかり研究させてもらいますね♡」
「はーい、楽しんでね(棒」
俺は心を無にした。これによって心理的なダメージをすべて受け流せる。柳になるのだ俺よ!!
「伊織」「伊織先生」
「ん?」
「またね」「また今度」
玄関先で手を振ってくる。そんなあいつらに
「おう・・・またな。次合う時はお手柔らかにお願いします」
「「無理♡」」
「さいですか・・・」
ようやく嵐が過ぎ去ってくれたが、部屋に戻る。そこには食べ物やプラスチックなどの容器が散乱していた。
「とりあえず片づけますかぁ」
誰もいない空間に少しの寂しさを感じながら部屋の跡片付けをしていった。
『重要なお願い』
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感想なんか書いていただけたらさらに嬉しいです!
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