生徒会長は推理がしたい
何とか応募期限に間に合いました……!
こういった系統?は始めて書くのでかなり不安ですが、もしよろしければ……。
事件が起きないかしら……。
何とも物騒な発言を生徒会室で零すのは、生徒会長の――立花きらら……であった。
今日のような強い風が吹いていてゴミが飛んでいる外と同じように、物騒な発言を風と共に流れて欲しい。なんて思っても立花きららは止まらないことは存じているのでこう答えるしかない。
「――またきららの推理欲求が始まるのか」
2人しかいない生徒会室でいつもの会話が始まる。
給食時の様に机をくっつけた7席の上座に座り、両手を組み考え込むように細い目で虚空を睨む。
他の役員はホームルームが長引いているのかまだ来ていない。
役員の眼がない。この空間に2人だけという状況。そんな条件化になると、きららは推理を欲する名探偵気取りになるという変な癖が出てきてしまう。
「殺人事件……はちょっとよくないわよね」
よいわけがないに決まっているだろうに。
地毛の黒に近い茶髪が揺れる。いまだに細い目で虚空を睨む。やや切れ長の目をしているので、長い睫毛だけが主張を魅せる。
「……そうだ」
何か思いついたようだ、目がぱっと開かれて役員席に向けられる。
「他の役員が遅れている理由、それを推理しましょう!」
それはいい考えだ、殺人事件なんかよりも何千倍も穏やかな推理になるだろう。
「どうして遅れているのか、いや、何故自分のクラスだけが何ともなくここに来れているのか、そこが問題かな?」
役員は1組が3人、2組が2人、3・4組にそれぞれ1人となっている。
「来ていないのは1・2組の役員ね。ああ、中林さんは法事でお休みだっけね、朝にメッセージを貰ったっけ」
立花はそう零すと役員に割り当てられた学校支給のノートパソコンを開き、『授業表』を探し出す。
「えーと――5限に1・2組合同の体育があったみたいね。男子はサッカー、女子は体育館でバレー。そこで何かがあった可能性が高いかな?なにが原因?共通点でもあるのかしら?」
立花はそう自問する。
4・6限目はそれぞれ違う学科の授業で共通性がない。
午前に何かあれば昼休みに何かしら騒ぎがあるだろう。
体育終わりに事件があったとしても着替えの時間で休み時間は終わる。
妥当な線かもしれない、ただ本当に事件が起きていたらの話ではあるが……。
考えすぎでは?という言葉は飲み込む。
本人が楽しんでいるのだ、役員が来るまでの間、酔狂に興じるのも悪くはない。
「共通点といえばどちらもボールが絡んでいるな」
男子は外でサッカーボール、女子は体育館でバレーボールを使用している。
「それだ!ボールを片付けなかったから体育の先生が怒っているんだわ!」
小学生のようなお粗末な事件だな。当番が男子・女子両方とも仕事を忘れてボールがそのまま。
6限の体育の授業があった学年別の生徒の内容はボールを使うものではなかったために、「ボールが放置してある」と報告が挙がりホームルームで指導中ということか。
「――だが、それだけで遅れる理由になるか?当番の生徒を注意すればいいだけだ。それにボールが共通点といったが、サッカーだったら試合だから多くても2球あれば済むし、そこまで先生が怒り心頭になることでもないだろうに」
ため息交じりにぼやき、ふと外の景色を見に後ろを振り返る。
外は2月の冷たい風がビュウとガラスに音を立ててくる。
外にいる生徒が飛んでいる誰かの空き缶をゴミ箱に入れてくれている風景が見えた。有難い。自分のでもないのにしてくれるというものは見ていて心地が良いよな。
まてよ……。風、自分のでもない、つまり他人。
「そうよ!ボールを片付けなかったから怒られているのではなくて、それが要因で別の事件が発生したからホームルームが長引いているのよ!」
その線が強いだろうな。きららが言葉を続ける。
「片付いていなかったボールが風でどこかへ転がる。それを見つけた学生がボール遊びを始める。あとは……先生の車にあたってしまったとか、生徒指導の中村先生が見てしまったとか、そんなところかしら?」
まあ、そんなところだろうな。単純にボールが転がっているのを生徒が見つけて報告があった。報告者が1年生だったらだらしがないだのと言われるだろう。
他にもこれが1回目ではなく、もう何回も忘れていたのなら答えはもっと簡単である。小学生に対するお説教のようなものの始まりだ。
「はあ~、QED。QED」
きららは満足したような声を出す。そこは事件解決ではないのか?という突っ込みは頭の中にしまっておくことにしよう。
その時だ。ノックを丁寧に4回叩く音がして軽く動転する。
軽く喉を鳴らし、声を整える。
「どうぞ――」
私がドアに向かって呼びかけると「お疲れ様でーす」とそろりとドアが少し開いて役員が顔だけを出して眉尻を下げる。
私がにこりと口角を上げて気にしていない様子を見せると、ほっとした顔を見せて役員達が入室してくる。
「遅くなってすいませんでした」
「いいよ、何かあったんでしょ?」
私が両手を組んでほおずえをつくと、それを見てか恰好を崩して「聞いてくださいよ~」と皆不満を私にぶつける。
やはり。というか、想像通りの結果だった。
「……つまり、当番係が上手く機能していなくて、3回連続で片付け忘れ。そして、それが生徒指導の中村先生に見つかったと」
「そうなんですよー。まさに仏の顔も三度までというやつで。女子は今日が始めて忘れてしまったんですけれど……」
チラリと男子役員の顔を見て軽く睨む。
「申し訳ないです。男子が3回連続だったんです。女子は間が悪かったといいますか……」
私は軽く息を吐き「やっぱりね」と口に出す。
「やっぱり?」
私の小言に首を傾げた役員を見て「なんでもないよ」と誤魔化す。
「――それじゃあ、全員集まったところだし、そろそろ仕事に取り掛かりましょうか?」
「え?まだ1人来てないですよ……」
女子役員は隣の席を見る。私の斜め前の席だけが空席になっている。
「ああ、中林さんは今日は用事で来れないって朝方メッセージが来ていたでしょ?」
4組の中林保奈美は法事でお休みだ。女子役員は「そうでした」と笑う。
男子役員が申し訳なさそうに此方を見る。
「どうしたの?渡部君」
「いえ……、会長1人だけずっと待たせていたと思うと申し訳なくて」
「ああー、渡部君が今日の議題の資料持ってたから会長1人だけここにいてもやることないですよね」
私は薄く笑う。
「ちょっと、別に今日の議題以外にもやることはたくさんあるんですけれどね?」
周りから笑い声が漏れる。
「――それに、1人きりだから出来ることもあるからね」
「集中したい時とかそうですよね」
「私なんか家だと独り言が大きいって弟に怒られました!会長はあります?そういうことって?」
役員が上座の生徒会長席の私を見る。
私は卓上のネームプレートを上げていないことに気が付いた。ここでは席に着いたらネームプレートを上げるというルールがある。
私は『立花貴理子』と書かれたプレートを立てる。他の議員は着席と共に上げている。
そして先程の答えを口にするのだ。
私は笑顔でこう答えた「たまにね」と。
こういう落ちはどうだろうか?とも思ったのですが、イメージが湧いたのでとりあえず書いてみました。
文章力がないので、よくわからないかもですが、何とか読みほぐして頂けると幸いです。